パキスタン・パンジャブ州のサルゴダで、手術の痕を見せる、自分の腎臓を売った男性(2017年2月2日撮影)。(c)AFP=時事/AFPBB News

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【AFP=時事】パキスタンは長い間、腎臓の違法取引において国際的な中心地とされているが、医療および地元当局は、効果のない政策の実施方針と取り締まろうとする政治的意志の欠如に阻まれ、こうした違法行為に対抗できないでいると訴えている。

 臓器提供は、自発的で強迫や金銭の取り交わしがない限り合法だ。イスラム教徒が国民の大半を占めるパキスタンの聖職者はそうした臓器提供はイスラム教に沿ったものと判断しているが、認識不足や、イスラム教徒にとってタブーとする考えが浸透していることから、臓器を自発的に提供する人々は不足している。

 臓器供給が限られているために、パキスタンでは富裕層が、臓器取引にかかわる犯罪組織の手を借りて何百万人もの貧困層の人々を日常的に食い物にしていると言われている。また腎臓が安く買えるため、主に湾岸諸国やアフリカ、英国など海外からの買い手も少なくない。多くの国ではこうした臓器の売買は闇取引に限られるが、パキスタンでは平然と行われている。

 AFP記者が首都イスラマバード(Islamabad)にある高所得者向けの総合病院の受付ロビーに入るやいなや、職員が見つけてくれたいわゆる「エージェント」が、ドナーの紹介と腎臓移植のための政府許可の取得で、計2万3000ドル(約250万円)でどうかと持ちかけてきた。

 政府の人体臓器移植当局「HOTA」は、そうした臓器取引に対して無力だという。ドナーが同意したと主張すれば、自分たちにできることは何もないとHOTAの監視局員の医師は述べた。

 専門家は、横行する臓器をめぐる闇産業の根本原因に対処する必要があると指摘している。

 ラワルピンディ(Rawalpindi)にある国立ベナジル・ブット病院(Benazir Bhutto Hospital)の腎臓科長ムムターズ・アフメド(Mumtaz Ahmed)医師は、「この違法取引はこの国の金持ちとエリート層に利益を与えている」と語る。腎臓取引に関する政府の調査委員会の委員でもあるアフメド氏はまた、そのために議員らは罰則の執行に乗り気でないと、主張している。一方で、パキスタン連邦捜査局(FIA)は、臓器の違法取引をなくすために差別はしないと誓っている。

■市場を創り出す腎臓への高い需要と貧困

 カラチ(Karachi)に本部を置く腎臓移植の地域指導者的な存在であるシンド泌尿器・移植研究所(SIUT)によると、パキスタンでは毎年、約2万5000人が腎不全になっているが、透析を受ける患者はそのうち10%で、移植を受けられるのはわずか2.3%だという。アフメド医師は「多くの人々が国立病院に来ます。腎臓を提供するという家族のドナーを連れて」「その後突然、民間の病院で腎臓が買えると知ると、そっちに移るんです」と話した。

 腎臓への高い需要が、パキスタンの広大な地方に暮らす人々が貧困から脱する好機と見る市場をつくり出している。工場や田畑、れんがの窯元で雇われている人々は、医療費や養育費として雇用者から金を借りるが、借金を返済できなくなるばかりか、奴隷労働の連鎖に陥っていく。その結果、労働者たちは臓器を売って得た金でその状況から抜け出したいと願うようになる。

 数年前に腎臓を売った時の手術の痛みが残っているブシュラ・ビビ(Bushra Bibi)さんもそうしたうちの一人だ。静かに涙を流しながらビビさんは、父親の医療費と借金返済のため、12年前に自分の臓器を11万ルピー(約11万5000円)で売ったことについて語った。彼女の義父も同じ境遇だったために、彼女の夫も同様に自身の臓器を売った。だがこの必死の行動は二人に慢性的な痛みを残し、仕事や5人の子どもたちの育児にも支障をきたし、結果的に以前よりさらに多くの借金を抱えることになった。

 ビビさん家族はパンジャブ(Punjab)州サルゴダ(Sargodha)に暮らしている。この地域は国内最良のオレンジの産地だが、同時に多くの家族が腎臓取引に巻き込まれており、住民のマリク・ザファール・イクバル(Malik Zafar Iqbal)氏はドナーの権利擁護のための団体を結成した。AFPの取材に対して数百人の氏名が記載されたリストを見せながら、イクバル氏は当局者と面会してはいるが、何ら良い結果を得るまでには至っていないと話し、さらに「わたしは自分の腎臓を10万4000ルピー(約11万円)で売りました。十分ではありませんでした」と語った。
【翻訳編集】AFPBB News