乗る人に自信を与える「ポルシェ」新型パナメーラ・ターボ

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8年前にポルシェが初代パナメーラを出したとき、それは激しい批難の嵐だった。

後部はぼったりと、ポルシェらしからぬプロポーション。初めて投入された4ドアセダンは、まるで茄子とカボチャの間に生まれた不運な子供のようだったからだ。中身は高級なパフォーマンスカーとして良く仕上がっていただけに、 他のライバル車種の引き立て役になってしまったのが残念だった。
 
しかし、ポルシェはその苦い試練を乗り越え、アヒルの子をシャープでプロポーションの美しい、ポルシェらしい高性能サルーンに生まれ変わらせた。

とにかく新パナメーラは格好良くなった! しかもスペース・シャトル以上のテクノロジーを搭載しており、俳優に例えるなら筋肉マッチョのヴィン・ディーゼルが、紳士的でプロポーションの整ったヒュー・ジャックマンに変身したかのようだ。事実、同社のデザイナーたちが、フラッグシップである高級モデルに初代から引き継いだのはたった3点。コンセプトと名前、ポルシェのエムブレムだけだ。
 
新型パナメーラこそ、ポルシェが最初に送り出すべきセダンだった。海外にはV6仕様、ハイブリッド仕様のバージョンも用意されているが、僕が乗ってみたのは、日本仕様のV8仕様のパナメーラ・ターボだ。旧型よりわずかに小さめのボディはアルミと鉄の合金で、剛性が高い。刷新されたパナメーラはVWグループで初めて新MSBシャシーを採用。そう、ポルシェはVW傘下に入ったからね。
 
コックピットは、ボーイング社がデザインしたかのよう。ポルシェの伝統的な要素と新しいニュアンスを上手い具合に融合させたインパネはすっきりとスタイリッシュで、ボタン類が少なく、12.3インチのスクリーンを採用。ルーフラインは低くなっているものの、後部席のヘッドルームは初代とほとんど変わらず、しかも後部にも2つの10インチのスクリーンとUSB接続口が用意されている。

そして何といっても特筆すべきは、インパネから後部席まで流れるセンターコンソールがよりコンパクトになったため、旧型と比べて閉塞感をほとんど感じないことだ。
 
新しいターボ・モデルが搭載するのは、ツインターボ、4.0L V8エンジンで、もちろん初代ターボSよりも速い。強力な542馬力の四輪駆動はなんと、00kmから100km/hまでの加速は3.6秒。306km/hという最高速度を試すことは滅多にないだろうから、80km/hから120km/hへの加速がわずか2.4秒で達するというほうが、現実的な数字だろう。これならどんな高速道路でも合流に充分だ。

V8エンジンは、どの回転域でも溢れるほどのパワーを発揮し、1960回転からトルクはかなり太い。そして、すでに評判となっているポルシェ独自の8速PDKトランスミッションのギアチェンジは絹のようになめらかで素早く、ターボならではの限界なしのパワーを楽しむことができる。
 
ただひとつ、ノイズだけは気になった。外で聞こえるのはスポーツセダンらしい音で、とくに高回転時には高らかに響く。それが室内では、このエギゾースト・ノートがぼやけてしまうのは高級車だからなのか。この快感のサウンドは消さないで欲しいものだ。
 
四輪駆動システムは、路面に食いつくようで、アンダーステアもオーバーステアも完璧に制御してくれるのでドライビングの楽しさを損なうことはない。ポルシェのどのモデルにも共通することだが、充分過ぎるパフォーマンスとブレーキング性能を備えている。コーナリング性能はこのジャンルで一番高いので、性能を70〜80%ほど発揮した時点で体にかかるあまりの引力に耐えかねて、乗員は「もう勘弁して〜」と言うことだろう。

ターボに標準装備のアダプティブ・エアサスペンションは3つの重要な特徴を産む。つまり、どっしり感と素晴らしい乗り心地、そして他のどの高級4ドアセダンよりも優秀なハンドリングだ。
 
日本では、パナメーラ・ターボの価格は標準車で2370万円だが、このポルシェのドライブを最大に楽しむなら、10ピストン付きカーボン・コンポジット・ブレーキとスポーツ・クロノ・パック&エギゾースト、アダプティブ・スポーツシート、リア・アクスル・ステアリングをオプションで装備することをお薦めしたい。

これで2700万円となるが、10ピストン・ブレーキとより速いギア比のステアリングなら、コーナーでのターンインがシャープになり、各段のフィーリングを堪能できる。運転性能がフルに発揮され、この大きなポルシェを操るドライバーにおおいに自信を感じさせてくれること請け合いだ。