コレステロールとまさかの自殺が関係か

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コレステロールの血中濃度が高いというと、血中の脂質が多いことを意味する。特に悪玉コレステロールとも言われる「LDLコレステロール値」が高く、善玉である「HDLコレステロール値」が低い状態は「脂質異常症」とされ、動脈硬化や脳卒中などのリスクを高めることは知っている人も少なくないだろう。

しかし、高コレステロールによって病気だけでなく自殺リスクも高くなっているとする調査結果が、国立がん研究センターによって2017年5月26日に発表されているのだ。

女性のみに見られる傾向

調査は、国立がん研究センターは全国10か所に住む40〜69歳の男女約8万人を90年代から追跡調査し続け、生活習慣と、がんや脳卒中、心筋梗塞などの病気との関係を分析する「多目的コホート研究(JPHC研究)」に基づいている。

同研究はこれまでにも、食の欧米化で死亡リスクが低下しているといったユニークな調査結果を発表してきた。

今回の発表は、JPHC研究が始まった1990年から1995年にかけて一部の参加者から提供してもらった「血清総コレステロール値」を利用し、男女約4万5000人を平均19.6年追跡調査した際の自殺リスクとの関係を分析している。

血清総コレステロール値はLDL・HDLコレステロール値を合計した数値のことだ。日本動脈硬化性疾患予防ガイドラインでは基準値が「1デシリットル中140〜199ミリグラム」で、220以上は「高コレステロール血症」だ。

そこで、測定した血清総コレステロール値によって「低い(180ミリグラム/デシリットル未満)」「中間(180〜220)」「高い(220以上)」の3つのグループに分類。「中間」を基準とした場合の自殺リスクを比較したという。

その結果、女性では血清総コレステロールが中間のグループに比べ高いグループで、自殺のリスクが1.9倍高くなっていることがわかったのだ。

さらにLDLやHDLコレステロールの高値も自殺リスク上昇と関連があることが明らかになったという。一方、男性では、血清総コレステロールと自殺との間に有意な関連性は認められていない。

驚きの結果だが、コレステロールと自殺の関係はまったく突拍子もない話というわけではない。海外でも2000年ごろから総コレステロール高値、低値によって自殺リスクや自殺率が変化することを指摘する論文が発表されており、日本だけ特異な状況というわけではないのだ。

コレステロールと自殺の関係は?

今回の結果はなぜ起きたと考えられるか。がん研は発表の中で、

「高コレステロールが脳血管性うつ症状を誘発することが報告されており、そのことが自殺リスクの上昇に影響を及ぼした可能性が考えられます」

と指摘している。2011年に米国で発表された研究でも、コレステロールは脳の神経伝達に関係しており、極端な高値低値は気分や行動に影響すると指摘されている。

がん研は過去に行った研究で、低コレステロールな食事パターンが自殺リスクを下げることを確認しているとしており、食事を通してのコレステロール摂取量の違いが自殺リスクの上昇と関連している可能性もあるとしていた。

ただし、今回の調査ではベースとなった総コレステロール値が調査開始時のもので、追跡中に値がかわっている可能性は考慮できていない。また、抗コレステロール薬である「スタチン」がうつ症状と関連があるとの報告もあるがその影響も考慮しておらず、正確な影響を分析するためにはより詳細な調査が必要であるという。