乳がん 都市と東日本で死亡率が高い理由

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乳がん罹患を公表し、自身のブログで病状などを公開していた故・小林麻央さん。小林さんを巡る報道をきっかけに乳がんに関する関心度は高まったが、偏見や誤解は多い。そこで、乳がんサバイバーであるFPの黒田尚子さんに「乳がんとお金」について全3回にわたりリポートしてもらった(第1回目)。

■乳がん 若い世代で罹患する割合が増加

加がん研究振興財団の「がんの統計'16」によると、今や女性の11人に1人が乳がんにかかる可能性がある。統計によると、一生のうちで、中高年、とくに40歳代後半〜60歳代前半で罹患する可能性が高いのだが、30年以上前と比べると、明らかに若い世代で罹患する割合が増加している(図表1参照)。

筆者自身も乳がん告知と手術を受けた。40歳のとき、初めて受けたマンモグラフィー検査で乳がんを指摘された。まさかまさか、私が。大きなショックだった。私が告知されて以降も若い世代で増えている乳がんだが、「罹患率」と「死亡率」は異なる。ここを混同する女性が少なくないので、冷静に対処してほしい。

▼乳がんはかかりやすいが、治りやすい

女性のがんの罹患者数別に見ると、乳がんは1位で、2位大腸がん、3位胃がん、4位肺がん、5位子宮がんが続く(出典・国立がん研究センター がん情報サービス「がんの統計」)。それに対して、女性がかかるがんのうち最も死亡者数が多いのは大腸がんで、乳がんは5位となっている(2位肺がん、3位胃がん、4位膵臓(すいぞう)がん)。死亡する確率でいえば、68人に1人という計算になり、冒頭の11人に1人よりもぐっと低くなる。

要するに、一般的に、乳がんはかかりやすいが、治りやすいがんとも言える。

■乳がんは大都市圏と東日本で死亡率が高い

ちなみに、国立がん研究センターでは、都道府県ごとのがんの罹患率や死亡率などをまとめている。地域によってどのがんになるか差があるというわけだ。たとえば、女性でも罹患率・死亡率が高い胃がんは、東北地方の日本海側で死亡率が高い。これは、地域の塩分摂取量と関係していることが検証されており、胃がんの原因ともいわれるピロリ菌は、胃の塩分濃度が高いと生き延びやすいという。

そして、乳がんはといえば、大都市圏および東日本で死亡率が高い(図表2参照)。

一般的に、出産や授乳の経験がない女性は、乳がんになるリスクが高まると言われている。たしかに、東京などの都市圏は、地方に比べると女性の初婚年齢が高く、出生率も低い。わが家も子どもは、娘ひとり。田舎に帰省すると、近所のご家庭のお子さんは、ほぼ3人以上が当たり前。乳がんに罹患していなければ、もうひとりくらい産めたかも、と妄想を膨らませる筆者にしてみれば、なんともうらやましい限りである。要するに、住んでいる地域のライフスタイルや生活環境もがんのリスクと関係があるということだ。※1:公益財団法人がん研究振興財団「がんの統計'16」 ※2:国立がん研究センター がん情報サービス「がんの統計」

▼注目!乳がんの「10年相対生存率」が発表された

乳がんがかかりやすく、治りやすいがんであることは、生存率にもよく表れている。昨年2016年1月、国立がん研究センターでは「10年相対生存率」を発表した。「相対生存率」というのは、実測生存率を調整し、対象となる病気(この場合はがん)以外で死亡したケースを除外したもの。

あるがんと診断された人のうち5年後に生存している人の割合が、日本人全体で5年後に生存している人の割合に比べて、どのくらい低いかで表す。100%に近いほど、いわば、がん治療で生命が救える可能性が高いがんとなる。

これまで「5年相対生存率」は公表されていたが、同様の規模で10年バージョンが公表されたのは初めて。筆者も含め、その結果に多くのがん患者が注目したことだろう。

■5年相対生存率は93.6%、10年相対生存率は81.7%

今年発表された最新データによると、がん患者全体の5年相対生存率は69.4%、10年相対生存率は58.5%となっている。ということは、がんと診断されても、5年後なら約7割、10年後でも約6割の人が生きているということである。

乳がんについては、全平均で5年相対生存率は93.6%、10年相対生存率は81.7%という結果だった。全体と比べると、高い生存率であることがわかる(図表3参照)。

▼生存率の向上でがん治療費の長期化・高額化

おそらく、今後もがん医療の進歩によって、生存率は向上していくだろう。ただ、がん患者としては、生存率が伸びたことを単純に喜べない状況もある。なぜなら、がんと共に生きる期間が長引くことによって、「がん治療費の長期化・高額化」と、「仕事と治療の両立」の2大問題が顕在化しているからだ。

▼第2回目はこちら
http://president.jp/articles/-/22767

(CFP、一級FP技能士、消費生活専門相談員 黒田 尚子)