Photo by Robbie Vize(写真はイメージです)

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 痛いから仕方ない? 魚介類に寄生し、人間が口にすれば胃腸に噛みついて激痛を引き起こす「アニサキス」の話題が、今年に入って急拡散している。そのきっかけを作ったのが、品川庄司の庄司智春(41)や南海キャンディーズの山里亮太(40)、渡辺直美(29)らのお笑い芸人だ。寄生虫アニサキスで苦しんだエピソードを語り、世間の“鮮魚回避”の流れを生み出した彼らに各業界の恨み節が止まらない。

■渡辺直美、南キャン山里ら芸人のトークが風評被害を拡大か

 近年増加するアニサキスの食中毒被害。厚生労働省によると、アニサキスの食中毒被害は2015年に100件を越えた。同省は公式ホームページでアニサキスによる食中毒へ注意喚起しており、「一般的な料理で使う食酢での処理、塩漬け、醤油やわさびを付けても、アニサキス幼虫は死滅しません」と予防を訴えている。芸能人も次々と被害を報告している。南キャン・山里は今年1月に、渡辺は3月に鮮魚を食べてアニサキス食中毒に見舞われた。

 聞くだけでも胃がすくむエピソードを語ったのが庄司だ。『ノンストップ!』(フジテレビ系)で5月10日、昨年夏の地方ロケで鮭イクラ丼を食べてアニサキスに襲われたことを告白。1匹に噛まれるだけでも痛いこの寄生虫を、胃の中から10時間かけて8匹取り出したという。当時の病状について、三人とも共通して「死ぬほど痛い」などとコメント。各種メディアを通じて、世間であまり知られていなかったアニサキスの脅威を広めるきっかけになった。

 アニサキスに似た事例として、病原性大腸菌「O157」のケースがある。90年代に存在が知られ、世間を騒がせた。しかし75度以上の高温でじっくり熱すれば死滅するという情報が広まり、世間の肉の購買意欲に強くは影響しなかった。

 しかし寿司など鮮魚食品に入ったアニサキスは、消費者のとれる対策が少ない。売り手の対応を信用するしかない。ならば『食べないのが一番の対処法』という結論になりがちだ。

 大手チェーンの寿司屋など一部でこそ、アニサキスの寄生しにくい養殖魚を用い、さらに内蔵の即時除去、長時間の冷凍保存など対策をバッチリ行っていることをアピールしている。だがそれもスーパーや飲食店など全てをカバーにするには至っていない。都内スーパーでは刺身など鮮魚の売れ残りが目立つ。一部メディアでも、各業界の鮮魚関連商品の売上が微減しているという報道が散見される。

「こうした売上被害を拡大したのに一役買ったのは間違いなくかの芸人たち。彼らの無責任なトークによって当分この流れは止まらないだろう。メディアやSNSを通じて、水産物を扱う業界関係者が『風評被害』だと恨み節を口にするのも無理はない」(報道関係者)

 消費者目線の対処法が見えぬアニサキス問題に、火をつけてしまった芸人たち。謝罪の意を込め、スーパーや市場をめぐって鮮魚の安全をアピールするしかないか。

文・海保真一(かいほ・しんいち)※1967年秋田県生まれ。大学卒業後、週刊誌記者を経てフリーライターに。週刊誌で執筆し、芸能界のタブーから子供貧困など社会問題にも取り組む。主な著書に『格差社会の真実』(宙出版)ほか多数。