1960年代、紙で作った「ペーパードレス」が流行し、アンディ・ウォーホルを始めとする多くのアーティストやデザイナーが多様なデザインのペーパードレスを発表しました。この流行の発端になったのが、ナプキンやペーパータオルなどを製造・販売するスコット・ペーパー。最初ノベルティとして作られていたペーパードレスがどのようにしてファッションの一時代を作ったのか、Collectors Weeklyがそのストーリーを写真と共に振り返っています。

From Hospital Gowns to Paper Couture: The Unlikely Origins of ’60s Disposable Dresses | Collectors Weekly

http://www.collectorsweekly.com/articles/from-hospital-gowns-to-paper-couture/

1922年創業のスコット・ペーパーは、1966年の春にカラフルな新しい商品ラインをスタートしたのですが、これらの商品を購入するとクーポンがもらえ、そのクーポンを使って値引き価格で購入できるのが紙でできたペーパードレスでした。当時のペーパードレスは送料込みで1.25ドル。赤と白のペイズリー柄のドレスや、白と黒のオプ・アートなど、ポップなデザインがありました。



それまでの時代において、紙のドレスは一部の愛好者によって作られることはあっても、メインストリームになることはありませんでした。しかし、スコット・ペーパーのペーパードレスは、その年の終わりには50万もの受注を受けるほどの大ヒットを記録。スコット・ペーパー以外の会社もペーパードレスの製造を行うようになります。



ペーパードレスが空前のヒットを飛ばす前、植物繊維でできた衣服は「安く再利用しやすい」という理由から、病院や工場などで用いられていました。強化されたセルロース自体は1950年代後半に開発されており、スコット・ペーパーはセルロースの繊維でできた2つの層の間にレーヨンの布を挟む「Duraweave」というものを素材として使用していました。一方、競合相手であるKimberly-Stevensはセルロースとナイロンを組み合わせた「Kaycel」を開発。しかし、いずれの製造・販売側も「紙」という言葉を使うことで強度が弱い印象を持たれると考えており、病院や工場での用途ならまだしも、ファッションの世界で受け入れられるとは考えていなかったそうです。

1965年、スコット・ペーパーのエンジニアが妻にDuraweaveを使ったAラインのドレスのデザインをして欲しいと頼んだことから、サンプルが作られました。なお、当時のドレスはペーパータオルなどよりはずっと耐久性があり、洗濯もできたとのことですが、数度着用したら処分されることを想定に入れていました。洗濯を繰り返すことによって衣服のコーティングがはがれ、耐久性がなくなっていくためです。

1966年のキャンペーンが大きな反響を得るまで、小売店側は誰もペーパードレスが人々の興味を集めるとは思っていませんでした。しかし、その後ペーパードレスの大きな成功を見た企業が、こぞってペーパードレスを売り出そうとし始めます。Kimberly-Stevensとパートナー関係にあったMars of Ashevilleもその1つで、ギフト包装の会社に印刷してもらった派手な柄の強化セルロース製の衣服を売り出します。また、ブルックリンのデパートではペーパードレスと水彩絵の具をセットで販売し、自分で好きな柄のドレスを作れるようにしました。この時のイベントで、アンディ・ウォーホルはモデルの着用するドレスにその場でシルクスクリーンを施したとのこと。

そして、このパフォーマンスを見たハートフォードの美術館Wadsworth Atheneumは、1967年にパーティーを主催し、著名なファッションデザイナーにペーパードレスを作ってもらうという試みを行いました。ペーパードレスの中でも有名なキャンベルスープ柄のドレスやグリーンジャイアント柄のドレスは、この時に作られたもの。



キャンベルスープの「スーパードレス」を着用するとこんな感じ。



当時、「商業主義」「大量消費」の時代にあるアメリカにあって、ペーパードレスは格好の広告媒体になりました。ケネディ大統領の弟にあたるロバート・ケネディ氏がペーパードレスの柄になるなど、政治的に利用されることもあったそうです。デザインTシャツがまだ人気になる前の時代、ペーパードレスはデザインTシャツのさきがけとなる存在だったわけです。



以下のように金色に輝くドレスや、インドの伝統的衣装サリーがペーパードレスとして作られることも。



金色のドレスはファーストクラスの客室乗務員の制服としてデザインされました。



ペーパードレスは製造元が多くの利益を得られないほどに安価でしたが、価格という大きなアドバンテージをもってしても、流行が長く続くことはありませんでした。ドレスは風が吹けば大きく広がり、イスに座ればすそが膨らみ、パーティーに出れば男性によってわざと飲み物をかけられることもあったとのこと。それでなくても、常に「破れはしないか?」と心配することになり、控えめに言っても着心地がいいものではなかったそうです。

ザ・60年代という雰囲気のビビッドカラー、幾何学模様、Aラインの以下のワンピースのペーパードレス。



さまざまな写真がプリントされ……



チョコレートバーの「ベビー・ルース」、キャンディーバー「バターフィンガー」など商品のロゴが印刷されたペーパードレスも。



人々が月を目指し、「プラスチック」という新素材がもてはやされた1960年だからこそ、ペーパードレスの目新しさが人々の心をつかんだのだと見られています。2017年現在ではペーパードレスがメインストリームになることはないものの、ホテルで使い捨ての男性用水着として入浴時に用いられるなどの使い方をしているそうです。