先日掲載の「北朝鮮のミサイル、全米が射程圏内に。真夏に聞こえてきた軍靴の音」で、北朝鮮のミサイルの脅威がもはや韓国や日本に留まらずアメリカのものともなり、トランプ大統領が本気で焦り始めていることをお伝えしました。今回の無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』では著者の北野幸伯さんが、「第2次朝鮮戦争」に傾きつつあるトランプ大統領のアメリカ国内での立場と今後予測される動きについてわかりやすく解説しています。

アメリカ国民とトランプは、「朝鮮戦争やむなし!」に傾いている

皆さんご存知のように、北朝鮮は7月28日、2度目のICBM発射実験を行いました。

北朝鮮、「ICBM発射実験成功 米本土全域が射程に」

AFP=時事 7/29(土)10:10配信

 

【AFP=時事】北朝鮮国営の朝鮮中央通信(KCNA)は29日、同国の大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射実験が成功し、金正恩(キム・ジョンウン、Kim Jong-Un)朝鮮労働党委員長が米本土全域を射程に収めたと述べたと伝えた。

「米本土全域を射程に収めた」

これ「ハッタリ」かと思いきや、アメリカの専門家たちも「どうやら本当らしい」と言っています。

アナリストらは、今回のミサイルは射程約1万キロで、米本土もその範囲に入るとみている。米科学者団体「憂慮する科学者同盟(Union of Concerned Scientists)」の兵器専門家、デービッド・ライト(David Wright)氏は自身のブログで「現時点の情報によれば、今日の北朝鮮によるミサイル実験は米西海岸、そして多くの米主要都市に容易に届いていた可能性がある」との見方を示した。

(同上)

ライト氏によるとロサンゼルス(Los Angeles)、デンバー(Denver)、シカゴ(Chicago)は十分射程に入るとみられ、ボストン(Boston)やニューヨーク(New York)にも届くかもしれないという。

(同上)

ニューヨークをはじめとする主要都市が、射程に入っている。これは、本当に深刻な脅威です。それで私は、RPE7月31日号「北朝鮮のミサイル、全米が射程圏内に。真夏に聞こえてきた軍靴の音」で、こんなことを書きました。

あなたが、ドラルド・トランプだったとしましょう。彼から見ると、金正恩は、「クレイジーな独裁者で、アメリカにケンカを売っている」ように見えるでしょう。つい最近まで、「ICBM実験が、レッドライン」と見られていた。しかし、金は7月4日、「ICBM実験」を実施した。これは、「ハワイ、アラスカに届く」といわれた。専門家は、「5年もするとアメリカ本土全体を攻撃できる能力を獲得するかもしれません」などといっていた。ところが、「ニューヨークに届く可能性のあるICBM」の実験が行われたのは、5年後どころか、なんと25日後だった。

 

トランプは考えるでしょう。「このペースだと、1年後はどうなるんだ?」「5年後はどうなるんだ?」と。「北は、米全土を核攻撃できるICBMを、数十発もつことは確実だよな」と考える。つまり、「先延ばしすればするほど、事態は悪くなると。

 

今戦争をはじめればどうでしょうか? 「日本や韓国は、攻撃されるだろう。特に、韓国人は『最低100万人死ぬ』といわれている。今ならアメリカは、無傷だろう。しかし、2〜3年後なら、アメリカも無傷ではすまない。やるなら今が最後のチャンスだ…」。こんな風に考えるかもしれません。

どうもトランプさん、そっちの方に考えが傾いているようです。

トランプ、「北朝鮮と戦争になる!」と語る

共和党のグラハム議員は、最近トランプと会った件で、こんなことを語っています。

「トランプ氏、北朝鮮との戦争も辞さず」 面会の米議員が明かす

8/2(水)10:47配信

 

【AFP=時事】ドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領が、北朝鮮によ核弾頭が搭載可能な長距離弾道ミサイルの開発を容認するくらいなら、同国を破壊するための戦争も辞さないと語っていたことが分かった。トランプ氏と面会した共和党のリンゼー・グラム(Lindsey Graham)上院議員が1日、明かにした。

グラハム氏は、外交努力、特に北朝鮮の隣国である中国による圧力で北朝鮮の計画を中止させられなければ、米国は破壊的な軍事行動を起こすしか選択肢がなくなると強調。トランプ氏と話し合った内容として「20年も対応を先延ばしにしてきた。北朝鮮がICBMで米本土を狙い続けようとするなら、北朝鮮と戦争になる」「彼(トランプ氏)は私にそう言った。彼を信じている」と語った。

(同上)

「中国による圧力で北朝鮮の計画を中止させられなければ」戦争になるそうです。ところが、RPEで何度も書いているように、中国は北朝鮮を止めるつもりがない。なぜかというと、中国にとって北朝鮮は、「アメリカの侵略を防いでくれる緩衝国家」だからです。

アメリカは新世紀に入ってから、アフガニスタン、イラク、リビア、ISなどと戦ってきました。シリア内戦、ウクライナ内戦にも介入してきた。しかし、これらの国々は、「アメリカ本土の脅威」ではありませんでした。北朝鮮は、まさしく「アメリカの脅威」です。ですからトランプが、「戦争やむなし」と考えるのも、当然と言えるでしょう。

アメリカ世論は、「朝鮮戦争やむなし!」に傾いてきている

夕刊フジ8月1日に、非常に興味深い情報が載っています。FOXニュースが7月16日〜18日、世論調査を実施した。その結果…。

北朝鮮が核兵器開発を続けるのを止めるため、米国が軍事行動を取ることに賛成か反対かを聞いた質問に対しては、51%が賛成と回答した。共和党員に限ると、73%が賛成だった。

なんと「朝鮮戦争賛成」は、51%! 共和党員だと、73%(!)が賛成!

注目してください。世論調査が行われたのは7月16日〜18日。「ニューヨークを射程に収める」ICBM実験が実施されたのは、7月28日。調査には、この実験結果が反映されていない。つまり、次の世論調査では、「朝鮮戦争支持者数」は、もっと増えると予想される。おそらく、アメリカ全体で6割を超え、共和党員では8割を超えてくるのではないでしょうか?

「世論の後押し」は、トランプに「決断する勇気」を与えることでしょう(私は、もちろん戦争反対です)。

朝鮮戦争は、「ロシア・ゲート」を吹き飛ばす?

トランプは、今追いつめられています。「ロシア・ゲート」でボロボロになっている。「ロシア・ゲート」とは、

ロシアがアメリカ大統領選に介入した?トランプ陣営は、ロシアと共謀していた?トランプは、捜査妨害、司法妨害した?

のこと。これで、トランプの支持率は、低迷しています。弾劾の可能性もある。トランプは、「朝鮮戦争を起こすことで、支持率を上げることができる」と考えるかもしれません。

アメリカでは、「戦争を始めると支持率が上がる」という現象があります。ブッシュパパが湾岸戦争を始めたときも、ブッシュ子がアフガン戦争、イラク戦争を始めたときも。逆に「戦争をやめたら支持率が下がる」こともあります。オバマは2013年9月、「シリア戦争」をドタキャンした。それで、「史上最弱大統領」と呼ばれた。

トランプが、「戦争で支持率は上がる。ロシア・ゲートも大目に見てもらえるかもしれない」と考えても不思議ではありません。

必要な「リメンバー」

しかし、戦争開始には、大きな問題が残っています。そう、「韓国」です。朝鮮戦争が始まれば、「韓国人は100万人死ぬ」といわれている。これは、本当にトンデモナイこと。

アメリカ歴代大統領は、

韓国人100万人の命を守るために、北朝鮮の核開発を事実上容認するか?韓国人100万人の犠牲を覚悟して、北朝鮮を攻撃するか?

二者択一を迫られた。これまでの大統領たちは、もちろん「100万人を犠牲にして北朝鮮を攻めることなどできない」という立場だった。理解できます。

しかし、今まで北朝鮮にICBMはなく、アメリカ本土は危険にさらされていなかった。現在は、状況が違います。北朝鮮は、「ニューヨークを核攻撃できる」と言われている。まだハッタリかもしれませんが、5年後には、確実にそうなるでしょう。状況が変わったので、「韓国の皆さん、申し訳ない」となる可能性がある。

しかし、戦争を始めて韓国人が100万人亡くなれば、トランプが責められます。ですから、日本との戦争、ベトナムとの戦争、アフガンとの戦争を開始したように、「開戦の口実」が必要になってくるでしょう。

「リメンバー・パールハーバー!」

「リメンバー・トンキン湾!」

「リメンバー9.11!」

今度は、どんなリメンバーが出てくるのでしょうか? どうも、ゆっくりですが、着実に「第2次朝鮮戦争」に向かっているようです。日本も「覚悟」が必要になってきています。

image by: lev radin / Shutterstock.com

出典元:まぐまぐニュース!