佐藤琢磨【写真:編集部】

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今年のインディ500で初優勝「20年以上夢見てきたので、続けてきて良かった」

「信じ続けば夢は叶う」

 言うは易く行うは難しの典型だが、実際に体現した者の言葉となれば重みが増す。レーシングドライバーの佐藤琢磨は、そんな“選ばれし者”の1人と言えるだろう。

 高校から始めた自転車競技で才能を発揮するも、F1レーサーの夢を諦めきれず、鈴鹿サーキットレーシングスクールに入門。その後、イギリスF3に挑戦して頂点を極め、モータースポーツに転身してからわずか5年で、史上7人目の日本人フルタイムF1ドライバーとなった。

 2002年から08年までF1、2010年からは米国最高峰のフォーミュラカーレース「インディカー・シリーズ」に参戦。そして、2017年5月、世界三大レースのひとつである「インディ500」で日本人初、アジア人としても初の優勝を果たしている。

 100年以上の歴史があり、決勝日には40万以上の人々が集まるレースで勝利した瞬間、言葉にならなかったという。

「自分の小さい頃からの夢が叶った瞬間でした。これまでもレースで勝ったことはありますが、あれだけ歴史があるレースで勝つことは20年以上夢見てきたので、ずっと続けてきて良かったと心から思いました。間違いなく自分の人生で忘れなられない出来事です」

目標を立て、一つ一つ前に進んだ先に夢がある「挑戦し続ける力はすごく大事」

 佐藤はインディ500優勝を通して、スポーツの素晴らしさと、継続することの大切さを改めて学ぶとともに、夢を叶えるための“定義”を再認識したという。

「夢を見るのは自由で簡単ですけど、それに対して目標を立てて、一つ一つ前に進んだ先に夢がある。挑戦し続ける力はすごく大事だし、自分の夢を信じ続ければいつか本当に叶うんです。(僕は)20年間レースをやってきて、40歳でも夢を叶えられたんですから」

 8月3日、一時帰国していた佐藤は参加型スポーツイベント「MARUNOUCHI SPORTS FES 2017」のオープニングセレモニーのゲストとして登場。その後、12日に開催されるカート体験コーナーに先駆けて、デモンストレーション走行で会場を沸かした。

 佐藤は2011年の東日本大震災直後、東北復興応援プロジェクト「With you Japan」を立ち上げた。インディカー・シリーズに参戦しながら、「なんとか日本を応援したい」と考え抜いた末の行動だった。2011年から13年までは、現地の小学校に赴いて講演を行ったり、子供たちと一緒に遊んだりしていたが、復興が進むにつれて、モータースポーツをして楽しみながら支援をしようと、カート体験スクール&タイムトライアルの「TAKUMAキッズカートチャレンジ」へと形は変わった。

「モータースポーツをやったことがない、できないかもしれないと思っている人でも、やってみたら面白い。そういう挑戦する楽しさ、夢を持つことの大切さを子供たちに伝えていきたいと思ったのがきっかけです。今は復興支援に向けて、全国でキッズカートチャレンジを行っています」

モータースポーツの魅力を伝え、子供たちに夢を与えるために――

 将来プロのレーサーを目指す子供たちを支援したいとの想いから、シーズンオフを迎える秋には「キッズカートアカデミー」として、一泊二日のスパルタ特訓で直接指導を行う計画も進んでいるという。

 イベント翌日、佐藤はインディ500制覇などこれまでの功績が称えられ、首相官邸に招かれて「内閣総理大臣顕彰」を授与された。これからもモータースポーツの魅力を伝えるため、そして子供たちに夢を与えるため、走り続けることを誓っている。

「選手ですからいつでも優勝したいです。すべてが揃っても勝てない大きな大会(インディ500)で結果を出すことができたので、逆にさらにモチベーション高く、次の目標に向かって頑張っていきたいなと。まだチャンピオンの可能性は残されているので、アメリカに戻って、全力で最終戦まで戦いたい。モータースポーツは、ある意味でスポーツの中でも少し特殊ですが、みんなにレースの楽しさを伝えられたらと思います」

 佐藤が自身に課した「挑戦」は、まだまだ始まったばかりだ。