トップに聞く!〜ファーウェイのSIMフリースマホが絶好調の理由〜

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格安SIMの普及に伴い、着実の販売台数が伸びているSIMフリースマホ。国内外の多くのメーカーがSIMフリー市場に参入しているが、最も勢いがあるのがファーウェイだ。

6月に発売したHUAWEI P10シリーズは、発売から2週間の販売台数で、前モデルP9シリーズの約1.6倍の売れ行きを記録。HUAWEI Mateシリーズやnovaシリーズなど他のモデルも含めた今年上半期の販売台数が昨年比300%に達したという調査データも報じられた。

好調の理由はどこにあるのか? ファーウェイ・ジャパン デバイス・プレジデントの呉波(Wu Bo)氏に話を聞いた。

▲呉波(Wu Bo)氏。2011年からファーウェイ・ジャパン デバイス・プレジデントとして、日本での端末ビジネスを統括。以前は、ファーウェイのデバイス事業で、モバイル・ブロードバンドのソリューション統括本部のトップとして、グローバルビジネスに従事していた

 

■SIMフリー市場は昨年比3〜4倍に拡大

ーー今年2月に発売した「HUAWEI nova」シリーズ、6月に発売した「HUAWEI P」シリーズのどちらも好調な売れ行きのようですが、ヒットの要因をどのように分析されていますか?

呉波氏(以下、敬称略):最大の要因は、日本のSIMフリー市場の成長にありますね。では、なぜ、SIMフリー市場が成長したか。それには3つの理由があります。

〜輒馨覆法▲ャリアが販売するスマホの価格に制限を課すなどといったSIMフリー市場を促進する動きがあったこと。

SIMフリー端末を買える店が増えたこと。オフラインの店舗が増え、量販店における売り場も広くなり、ロケーションもよくなりました。たとえばヨドバシカメラに行くと、キャリアのスマホよりもSIMフリースマホが目立つように陳列されている店もあります。

SIMフリースマホのスペックが高くなり、キャリアのスマホに匹敵するようになったことが挙げられます。以前はSIMフリースマホといえば、1〜2万台のローエンドが主流でしたが、いまはスペックでも価格面でもキャリアのスマホと同じように比較できるようになりました。そのうえで、利用料の安いSIMフリーを選ぶ人が増えています。

ーー日本のSIMフリー市場は、まだまだ拡大すると思いますか?

呉波:今年のSIMフリー市場は、昨年に比べて3〜4倍になると予測しています。実際、民間の調査会社による今年上半期の調査データなどを見ても、そのような結果になっています。

ーー数多くのメーカーがSIMフリー市場に参入しています。苦戦しているメーカーもある中、ファーウェイの成長が著しい理由は?

呉波:インターネットの掲示板に、男性が持つスマホのイメージとして、こんなことが書かれていたそうです。「iPhone=薄っぺらい、Xperia=お金持ち、ASUS=オタク、HUAWEI=ステキ」と(笑)。もちろん、ユーモアを交えて書いているのでしょうが、弊社のブランドが、日本の消費者に受け入れられつつあるように感じます。

ーーファーウェイは大手キャリアとも関係が深い企業ですが、キャリアからではなくSIMフリーでスマホを発売する理由を教えてください。

呉波:弊社は2005年に日本法人を設立し、2007年に初めて日本の端末市場に参入しました。今年がちょうど10年目になります。過去10年間、そして現在も、一番のビジネスは3大キャリアとのものです。過去に、大手キャリアからスマホを発売したこともあります。2012年にはドコモから、2013年にはソフトバンクから発売しました。残念ながら、アップル社や他の日本のメーカーのように、毎年継続してリリースするという形にはなりませんでしたが、昨年はKDDI傘下のUQモバイルから「HUAWEI P9 lite PREMIUM」を発売しました。キャリアからスマホを出さないというわけではなく、弊社としては今後も、大手キャリアとのスマホビジネスに向けた、取り組みを続けたいと考えています。

ーーSIMフリーでスマホを発売するメリットは、どこにありますか?

呉波:日本の従来の端末市場は、キャリアを介して製品を販売する<B to B to C>なので、メーカーが消費者の声を真っ先に知ることはできません。されど、SIMフリー市場では<B to C>が成り立ち、メーカーが直接端末を販売できます。これは、弊社のような海外メーカーにとっては、非常にメリットがあります。<B to C>のビジネスを展開することによって、どんな人がファーウェイの端末を使っていて、どんなものを欲しているのかを直接かつ迅速に知ることができます。弊社は2014年に日本のSIMフリー市場に参入しました。以来、ユーザーがインターネットに投稿する情報なども含め、消費者の声を収集して、良いものはさらに精進して高めて、悪いものは改善していくということを続けてきました。その結果、いまお客様に求められる製品をお届けできているのではないかと思います。

 

■売れ筋価格は3万円前後

ーーファーウェイのラインナップの中で最も売れているのは「HUAWEI nova lite」「HUAWEI P10 lite」など、「lite」と付く低価格モデルだと認識しています。「lite」が売れる理由を、どのように分析されていますか?

呉波:初めて「lite」を出したのは、2015年6月に発売した「HUAWEI P8 lite」になります。そのモデルを投入した時点で、一番売れることは想定していました。P8 liteは2万8600円(税抜)だったのですが、それはキャリアのフラッグシップモデルでの端末購入補助適用後の価格とほぼ同じです。たとえば、iPhoneの本体価格は8万円くらいですが、いろいろな補助・割引によって、実質価格は3〜4万円になります。SIMフリー市場で最も売れる価格帯も3万円台です。キャリアとSIMフリーのスマホが同じ価格帯の場合、次は料金プランを比較しますよね。キャリアでは月に7000円程度かかるところ、格安SIMでは2000円程度で使えるということから、3万円前後のSIMフリースマホと格安SIMを選ぶ人が多いようです。

▲今年2月に発売されたHUAWEI nova liteは、多くのMVNOが2万円前後で販売

ーー6月に発売した「HUAWEI P10 lite」は2万9980円(税抜)ですが、まさに戦略的な価格設定なんですね。

呉波:P10 liteの発売後は、昨年発売したP9 liteの売れ行きが鈍ると予測していたのですが、実際にはP10 liteは好調な売れ行きを記録し、一方のP9 liteもよく売れています。P9 liteは昨年6月の発売以来、ロングセラーを続けていますが、P10 liteの発売後はさらに販売台数が伸びました。日本のSIMフリー市場がどんどん大きくなっているからだと思います。

▲昨年大ヒットしたHUAWEI P9 liteを上回る出足のHUAWEI P10 lite

 

■キャリアの新プランは逆風ではなく追い風に

ーーNTTドコモの「docomo with」や、auの「auピタットプラン」など、大手キャリアもMVNOに対抗するプランを出しましたが、その影響は?

呉波:SIMフリー市場にとって良い影響となると思います。プランを安くすることにより、キャリアは端末の購入補助を出せなくなります。その結果、スマホを本来の価格で販売することになります。本来の価格で比較した場合、SIMフリースマホのほうがスペックが勝る場合が多いですしね。

ーー端末のシリーズによって、購入層は異なりますか?

呉波:Pシリーズ、novaシリーズともに、一番売れているのは「lite」ですが、P9 lite、P10 liteは30〜50代の男性に人気が高いですね。novaシリーズは若いユーザー向けに出している製品ですが、実際にnova liteも20代以下に支持されているようです。

ーーフラッグシップのP10/P10 Plusの購入層は?

呉波:P10/P10 Plusは、ライカのレンズを3つも搭載していますし、価格も高めに設定しています。なので、やはり収入に余裕のある方やギーク層に売れています。また、カメラの愛好家にも購入いただいています。

▲左がHUAWEI P10 Plus、右がHUAWEI P10。どちらも背面にライカ製のWレンズを搭載し、インカメラのレンズもライカ製。ただし、WレンズはP10 Plusのほうが高性能

 

ーー日本では、他国に比べるとフラッグップの比率は高いのでしょうか? それとも低いのでしょうか?

呉波:日本では、フラッグシップの割合はまだまだ低いですね。なぜなら、SIMフリー市場で販売しているので、端末の購入補助などの割引がありません。ヨーロッパでは、弊社のフラッグシップは各国のキャリアから発売されています。そして、日本のキャリアと同じような購入補助ありきの販売方法になっています。

ーー国・地域によって、発売する端末が異なるんですよね?

呉波:はい。「HUAWEI」ブランドの製品は出しておらず、「honor」ブランドの製品だけを販売している国もあります。HUAWEI Pシリーズだけで、上位モデルのHUAWEI Mateシリーズは出していない国もありますし、その逆の国もあります。

ーー「HUAWEI」と「honor」の違いは?

呉波:「honor」はオンライン販売のみという位置付けです。流通にかかるコストを削減でき、量販店へのマージンなどもないので、「HUAWEI」ブランドの製品よりもコスパが高いことが特長です。日本ではhonorシリーズを発売して3年目になりますが、売れ行きは好調なので、今後も継続的にリリースしていく予定です。

ーーということは、グローバルでは発表済みの「honor 9」の日本発売も近いのでしょうか?

呉波:まだ具体的な発売時期は決まっていません。決まり次第、お知らせします。

ーー海外の展示会で「honor 9」を見ましたが、非常に完成度の高い端末ですね。

呉波:honor 9は、背面パネルにもガラスを用いていますが、日本の消費者の好みに合ったデザインといえるかもしれませんね。

▲日本未発売のhonor 9。背面にも曲面ガラスを採用し、質感の高い仕上がり

 

■PC市場も大きな変化を迎える予兆が……

ーー7月には「HUAWEI MateBook X」「HUAWEI MateBook E」という2台のパソコンを日本で発売しました。世界的には伸び悩んでるともいわれるPC市場に力を入れる理由は?

呉波:弊社は、人・車・家・オフィス、それそれのシーンに合わせた端末を出しています。端末ランナップを拡張していく中で、日本のPC市場は非常に重要と認識しています。なぜなら、過去10数年間、日本のPC市場は革新性に乏しく、変化も少なかったように感じています。使用感もそれほど優れているわけでもなく、そこにチャンスがあると思いました。かつて、フィーチャーフォン(ガラケー)からスマホに移行したように、PC業界においても大きな変化が起こると予測しています。

▲13インチのディスプレイを搭載し、ファンレスによる静音、ドルビーアトモスサウンドシステム搭載、指紋センサー搭載といった特長を備えたHAUWEI MateBook X

 

ーー実際には、どのような変化が起きるのでしょうか?

呉波:PCは、長きに渡り、“Windows & Intel” というアライアンスで固まっていますよね。一方、スマホでは、AndroidとiOSがあり、チップセットも、クアルコム製が多いとはいえファーウェイも作ってますし、他のメーカーのものもあります。PCも今後は、スマホと同じ道を辿っていくのではないでしょうか。

ーーそのための布石として、いまPCに注力している?

呉波:はい、そのとおりです。PC市場に進出して、低価格のモデルをリリースし、既存メーカーとパイの奪い合いがしたいわけではありません。製品がローエンド化して、UX(ユーザーエクスペリエンス)が悪くなるという、負のスパイラルに巻き込まれないようにしなければと考えています。

ーー将来的には、自社でPC用のUIやCPUを作る可能性も?

呉波:それはわからないです。なので、お答えできません。

 

■写真撮影に、もはやデジカメは不要!?

ーー呉波さんご自身は、現在、どのファーウェイ製品をお使いですか?

呉波:スマホはHUAWEI P10 PlusとHUAWEI Mate 9の2台を持ち歩いています。P10 Plusには、ライカの「SUMMILUX」レンズが搭載されているので、デジカメのように使っています。運動するときは、TalkBandを腕に巻いていますよ。

▲呉波氏が実際に使っている2台。左のHUAWEI Mate 9は、日本未発売のポルシェデザインモデル

 

ーー「HUAWEI WATCH」は使ってないのですが?

呉波:日本では発売していないのですが、HUAWEI WATCHにはルビーのバーションがあります。それを妻にプレゼントしたら、とても喜んでくれて、愛用しているようです。人民元で6000元(日本円で約10万円)くらいでした。私は、お手頃のTalkBandを愛用しています(笑)。

ーースマホのカメラが高画質になり、デジカメを使う機会が減っている人が多いようですが、呉さんはいかがですか?

呉波:デジカメは2012年以来使っていません。いつもスマホで撮影しています。数年前、円安が進んだ時期に、友人から大手カメラメーカーの一眼レフカメラがお買い得だよと勧められたんですが、結局買わなかったので…。ここ数年の中では、再びデジカメを使う唯一の機会だったのですが、どういった場面で使うかを検討した結果、あまり使う機会はないなぁと。私は、日本では普段、スマホと財布しか持ち歩きません。中国では、モバイル決済が普及しているので、財布も持ち歩かなくなりました。スマホと会社のIDカードだけですね。

 

■ファーウェイの強みは“安心”

ーー日本では、まだファーウェイを知らない人もいます。そんな人に、ファーウェイという会社を説明するとしたら、どのように伝えますか?

呉波:その人が一般の消費者だとすると、「ファーウェイはグローバルで第3位のスマホメーカーで、年間売り上げが8兆円台。そして、非常にイノベーションを重視した先進的な会社である」と話すでしょう。やはり、数字を用いて紹介したほうが、相手がわかりやすいのではないかと思います。

ーー最後に、日本市場において、どんな会社でありたいと思いますか?

呉波:日本の消費者のみなさんに、安心して使ってもらえるスマホブランドでありたいですね。「安心」の2文字の後ろにはいろいろな意味が含まれます。品質、アフターサービスはもちろん、販売体系、ブランド知名度など、それら全部をひっくるめて、消費者に「安心」を実感していただきたいです。

▲常に “お客様第一” でありたいという呉波氏。東京と大阪にカスタマーサービスセンターを開設するなど、他のSIMフリー端末メーカーをリードする取り組みも行っている

 

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(取材・文/村元正剛)

むらもとまさかた/ITライター

iモードが始まった1999年からモバイル業界を取材し、さまざまな雑誌やWebメディアに記事を寄稿。2005年に編集プロダクション「ゴーズ」を設立。スマホ関連の書籍・ムックの編集にも携わっている。