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才能・やる気・勤勉さなどを全て兼ね備え、1人で会社を1つ上のレベルにまで引き上げるような人は確かに存在し、近年行われた調査ではトップ・パフォーマーは平均的な従業員の20〜30倍もの生産性を発揮するとも言われているとのこと。しかし、このようなハイ・パフォーマーを雇うことは実は非常にリスキーであるとして、行動科学者であるフランチェスカ・ジーノ氏が語っています。

Robin Hood Under the Hood: Wealth-Based Discrimination in Illicit Customer Help | Organization Science

http://pubsonline.informs.org/doi/abs/10.1287/orsc.1090.0498

Hot shots and cool reception? An expanded view of social consequences for high performers.

http://psycnet.apa.org/record/2017-06323-001

The Problem with Being a Top Performer - Scientific American

https://www.scientificamerican.com/article/the-problem-with-being-a-top-performer/

ハリウッドの例で言うと、映画「フィラデルフィア」と「フォレスト・ガンプ/一期一会」でアカデミー賞の主演男優賞を受賞したトム・ハンクスがトップ・パフォーマーにあたります。多くの批評家たちは、その後にトム・ハンクスが主演した「アポロ13」「プライベート・ライアン」「キャスト・アウェイ」でも彼の演技を賞賛しましたが、これらの映画において、トム・ハンクスは同業の俳優たちから十分な投票を集めることができず、アカデミー賞受賞に至りませんでした。このことについて、批評家の中には、「トム・ハンクスは受賞にふさわしかったが、3度目のオスカーを受賞することに対して嫉妬した俳優たちが故意に投票を行わなかった」と見ている人も存在します。

トム・ハンクスに関する仮説が事実であるか否かは確かめようがありませんが、トップ・パフォーマーたちの成績を落とそうとする同僚は、珍しいものではありません。工場労働者の中に「仕事が早すぎる」人がいると、その人の存在によって仕事全体のパフォーマンスが上がるため、マネージャーたちが高い成果を予測するようになり、他の労働者たちがうとましく思うことはよくあります。生産性の高いハイ・パフォーマーは、その他の人にとって脅威に見えるのです。

これは「人は自分を評価する際に他人と比較の比較を行う」とする社会的比較理論の問題であるとして、オーリン・ビジネススクールのラーマー・ピース氏とハーバード・ビジネススクールのジーノ氏の2人は、車の所有車の裕福度合いが、車の排気ガス点検の検査人のチェックの目にどれほど影響するのかをデータから調べました。このときの2人の予測は「本来テストをパスできない車でも、車の持ち主が平均的な収入である場合、検査人が所有者を助ける意味で車を通過させる」というものでした。

調査の結果、2人の予測通り、検査人と同じぐらいの収入を得ているカスタマーを対象とした時の不正レベルは、高額収入を得ている人を対象とした時の不正レベルよりも高かったとのこと。さらに、ラボで被験者を検査人に見立てて実験したところ、検査人役の人々は高級車を運転している人より、普通の車を運転している人に対して不正を働きやすいという結果が出たそうです。このことは、人は相手が自分よりも優れているのか否かで、決定や相手への振る舞い方を変えるということを示しています。



by City Spidey

また、ミネソタ大学のエリザベス・キャンベル助教授らは台湾にあるサロンで働く350人のスタイリストを調査。このサロンでは、スタイリストたちはグループになって働き、個人およびグループ両方での活動において成功することが求められます。調査の結果わかったのは、パフォーマンスが高いスタイリストたちは、パフォーマンスの低いスタイリストたちに比べて中傷を受けやすく、評判を落とされやすいということ。しかも、協力的なチームであるほど、ハイ・パフォーマーをひどく扱うということがわかりました。

さらに、研究チームはビジネスを専攻する生徒284人を対象に対照実験を実施しました。これはバーチャルな実験で、被験者をランダムに「協力的なグループ」と「競争心の強いグループ」に割り当て、批判的思考や分析思考のテストをしてもらうというもの。なお、それぞれのグループのうち1人は、被験者のチームメイトと同等かそれ以上の働きをするハイ・パフォーマーが混ざっていました。

この実験の結果わかったのは、ハイ・パフォーマーに対するリアクションは、チームのリソースが限られているか否かによって変わってくるということ。リソースが限られていると、チームのメンバーはハイ・パフォーマーを脅威と受け取り、競争心を抱きますが、リソースがチーム内で共有される環境では、ハイ・パフォーマーの成果によってメンバーが利益を得るため、チームメイトはハイパフォーマーに協力的になるとのことです。



by Andrew Neel

つまり、一連の調査でわかったのは、私たちは自分を他人と比べて「相手のような成績を出せない」と判断したとき、「協力したい」という積極的な関心がない限り、ハイ・パフォーマーを戦略的に落としいれようとするということ。

経営者にとって素晴らしい働きをする人は見つけるのが難しく、自分の会社に引き付けるのも難しいもの。しかし、ビジネスの世界では往々にして「競争」が起こるため、ハイ・パフォーマーはチームの中に入ったときに孤独になりがちです。ハイ・パフォーマーの働きをいかすためにも、同僚たちに「ハイ・パフォーマーに協力的になることで、自分たちが利益を得ることができる」ということをはっきり示す必要があるとのことです。