前半 後半

20年ぶりのMステでサプライズ発表されたオザケンのフジロック!

2017年2月24日、“オザケン”こと小沢健二が生放送の音楽番組『ミュージックステーション』に20年ぶりに出演。彼は司会のタモリとトークをしている最中、さらりと「今年、フジロックフェスティバルに出ます」と宣言しました。共演者たちが驚きの表情をみせるなか、彼は「まだ発表されていないですけど」と言い、続けて「去年のツアーのアンコールみたいなものをやろうと思って。(今夜は)ブギーバックとかやりますんで、ぜひ」と視聴者に呼びかけました。なんて自由な人なんだ……!

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彼によるこの発言は何ともドキドキするスペシャルなサプライズで、多くの人の心を興奮させました。オザケンがこのとき言った「去年のツアー」とは、2016年5月から6月にかけて全国のライブハウスで開催された『小沢健二 魔法的 Gターr ベasス Dラms キーeyズ』(以下:魔法的)と、同年6月に金沢21世紀美術館、大分県立美術館で開催された『言葉は都市を変えてゆく 小沢健二 美術館セット×2』のこと。これらの公演に参加した人もしていない人も、たくさんの人々が彼が出演する7月29日のフジロックを心から楽しみにしていたことでしょう。それは同イベントの“1日券”が同日のみソールドアウトしていたことからもうかがえます。

ホワイトステージの1曲目はあの3人が登場……

フジロックのオザケンのライブは20時10分からのホワイトステージと、23時30分からのピラミッドガーデンの2公演。1日の間に彼のステージが2度も観られるなんて、何という幸せ! ここでは、写真撮影が行えなかった両公演の模様を無理やりイラストでご紹介しながら(!?)、たっぷりとレポートいたします。

ホワイトステージは19時前からただならぬ混雑具合。お隣のグリーンステージでは、言わずもがなオザケンが所属していたバンド、フリッパーズ・ギターのメンバーである小山田圭吾のソロユニット・コーネリアスのライブが18時50分から開始されました。時間が近かったため、両方のステージが観られないもどかしさを抱えた人も多いでしょう……。そんななか、昼間から降り続けていた雨は強さを増し、緊張感に包まれたホワイトステージではオザケンが「みんなの力で10!」とカウントを始めます。オーディエンスは突然のかけ声に混乱するまま「9、8、7」とカウントダウンに導かれると、0のタイミングで『今夜はブギーバック』のイントロが! 「“フジ”って言ったら“ロック”って言ってくれ!」との煽りが聞こえたかと思えば、その声の主はなんとスチャダラパー! こんなに粋でテンションのアガるサプライズがあるでしょうか。オザケン、スチャダラパー、バンドメンバーが登場したステージは華やかな光に包まれ、1曲目からものすごい一体感。一斉にフロアの前方に人々が押し寄せます。誇張抜きでその場にいたオーディエンスがひとり残らず完璧に歌もラップも熱唱していて、同曲が文句なしのアンセムであることが証明されていました。なお、ホワイトステージには人が集まりすぎて入場制限がかかっていた模様……。

1曲目からハイテンションに持って行ってくれた小沢健二とスチャダラパー!(イメージ)

今回のバンドはボーカル&ギターをオザケン、ベースを中村キタロー、キーボードを森俊之、ドラムを白根桂尚、パーカッションを及川浩志、“アナログ機材”をHALCA(HALCALI)が担当。このメンバーは前述の『魔法的』ツアーにも参加しており、同ツアーではギターを木暮晋也が担当していましたが今回は彼の登場はなく、全編オザケンがギターを担当していました。さらに、コーラスに一十三十一、東京スカパラダイスオーケストラ(以下:スカパラ)からサックスにGAMO、トロンボーンに北原雅彦、トランペットにNARGO、オルガンに沖祐市といった錚々たるメンバーが登場。個性豊かな彼らが全身全霊でハッピーにオザケンの楽曲を奏でました。

ステージ全体図のイメージ。下段左から白根桂尚(ドラム)、中村キタロー(ベース)、及川浩志(パーカッション)、一十三十一(コーラス)、小沢健二(ボーカル、ギター)、沖祐市(オルガン)、森俊之(キーボード)、上段左からNARGO(トランペット)、北原雅彦(トロンボーン)、GAMO(サックス)、HALCA(アナログ機材)

『LIFE』の楽曲を中心に新旧入り混じった贅沢な構成

会場を一瞬で熱狂させた『今夜はブギーバック』に続き、『流動体について』のイントロと複雑なリズムのクラップが鳴ります。オーディエンスがほぼ反射的にクラップを叩くと、魔法のように音楽が切り替わり、サプライズ的に始まったのは『ぼくらが旅に出る理由』。極上のポップスに合唱が巻き起こり、アウトロからそのまま新曲『飛行する君と僕のために』に繋がります。クリアで重厚なベース&オシャレなオルガンが効果的に鳴り響くファンキーな同曲でほろ苦いオトナなオザケンワールドを堪能したのち、1990年代を代表する胸キュンソング『ラブリー』に突入。その後も、アーバンで洗練されたホーンセクションが印象的な新曲『シナモン(都市と家庭)』、さらに『東京恋愛専科・または恋は言ってみりゃボディー・ブロ-』と、名曲たちが出し惜しみなく次々に披露されます。このライブは名盤の呼び声も高い彼のアルバム『LIFE』(1994年)の楽曲と、彼が『魔法的』ツアーで発表した新曲が交互に演奏される構成で、純度の高いポップスとメロウなサウンドが味わえる贅沢なセットでした。

オザケンは癖のある声とともに、ストラトキャスターをメインで使用しながら、自身の楽曲を表現するに相応しい味のあるギタープレイを聴かせます。それに呼応するように、息の合ったリズム隊とそれぞれの個性を放ちながらもまとまりのあるホーン隊、美しい女性陣のコーラス、優しく包み込むようなキーボードと遊び心のあるオルガンが彩ります。そんな演奏と同じくらい感動的だったのはメンバー全員の楽しそうな満面の笑顔でした。

バンドメンバーは黒と白の太めのボーダーのTシャツに、カラフルな羽や蝶々があしらわれたヘッドドレスや帽子を身に着けていました。オザケンは白い襟付きのシャツをひじの辺りまでまくり、フジロック限定で販売されていた自身のTシャツを重ね着。ボトムは細身のブルーデニムです。顔には白いヒゲのようなペイントを施していました

ステージに設置されたスクリーンにはメンバーの演奏中の様子は映らず、楽曲のタイトルと歌詞が映し出されます。歌詞をじっくり眺めると、独特なバランスで紡がれた言葉がなおさらダイレクトに心に入り込みます。特に、何気ない日常の幸せを俯瞰で見ているような切ない歌詞の楽曲『さよならなんて云えないよ』をまっすぐに、一点の曇りもなく歌う彼の姿はとっても印象的でした。続けて、思わず口ずさみたくなるポップなメロディにやっぱり会場が大合唱となった『強い気持ち・強い愛』、新たなオザケンの一面を見ることができた『流動体について』で畳み掛けるようにライブはクライマックスへ向かいます。

ここでオザケンはほぼ初めてステージでMCをし、「愛してるぜ、ロック好きな人!」とひと言。さらに、ニューシングル『フクロウの声が聞こえる』が9月6日にリリースされることを発表し「今までの僕のいろんなことと、これからの僕のこともいっぱい詰まっていてすごく最高の録音になったと思います。もう何10万回でも聴いてください」と自信たっぷりに語りました。

続いて披露されたのは、「通り雨」どころじゃない大雨の会場に温かく染みわたる『愛し愛されて生きるのさ』。曲中に登場するお馴染みのセリフでは、大きな歓声があがりました。そして、オザケンが「みんなとわかち合えるのが嬉しい」と語ったドープなおとぎ話のような新曲『フクロウの声が聞こえる』をラストに演奏。彼の物語がこれからも続いていくことを示唆しているかのような、嬉しいエンディングでした。すべての曲を演奏し終えたオザケンは「フェスに出るの初めてだったんだけど、こんなに温かく迎えてくれて、フジロック本当にありがとう」と丁寧にお礼を言いつつ「このあともう1セットあるので、全然別のセットがあるので、全員来てください!」と笑顔で告げ、約1時間のステージは終了しました。

【小沢健二 ホワイトステージ セットリスト】

1.『今夜はブギーバック』(スチャダラパーがゲスト出演)
2.『ぼくらが旅に出る理由』
3.『飛行する君と僕のために』
4.『ラブリー』
5.『シナモン(都市と家庭)』
6.『東京恋愛専科・または恋は言ってみりゃボディー・ブロ-』
7.『さよならなんて云えないよ』
8.『強い気持ち・強い愛』
9.『流動体について』
(MC)
10.『愛し愛されて生きるのさ』
11.『フクロウの声が聞こえる』

前半 後半 [榊ピアノ]