心筋梗塞や脳梗塞に代表される血栓症は、血管が収縮しがちな冬に患う印象が強いが、汗をたくさんかき、体から水分が抜ける夏も要注意だ。

 血栓症には大きく分けて二つがある。一つは「肺血栓症」という病で、肺の動脈を固まり(血栓)が塞いでしまうもの。血栓ができる場所は下肢静脈の中が大半(90%以上)で、エコノミークラス症候群とも呼ばれる。
 そして二つ目が、筋膜の内側の静脈にできる血栓症(深部血栓症)だ。
 「日本人は、深部血栓症にはあまり罹らないとされていましたが、厚労省の人口動態統計の肺血栓症死亡率を見ると、年々増加している。そのスピードは最近10年間で2倍ほどです。この状態が続けば、近い将来、血栓症が多いとされる欧米と同じくらいの発症率となる可能性があります」
 こう警鐘を鳴らすのは、東京都多摩総合医療センター心臓血管外科担当医だ。

 人間の体は約60%が水分でできており、血管はこれらの水分の流れをほぼ全身にわたりコントロールする。血管は、大きく分けて静脈、動脈、毛細血管などがあり、体液の管理にはさらにリンパ管も一部関係してくる。そのため、血管が傷つき血流が阻害されれば、様々な病気が発生しやすくなる。
 「動脈系のトラブルでは、その症状の変化は激烈で、閉塞した場所の内臓が傷ついてしまい、心筋梗塞や脳梗塞が発症の代表格とも言えます。動脈の病気には大動脈瘤、脳動脈瘤などもありますが、『NPO法人日本血栓症協会』では、当面の間は今、増え続けている静脈血栓症を優先的に予防・治療活動を続け、近い将来、血栓性疾患全体に取り組むとしているようです」

 この夏も連日にわたり30℃以上の猛暑に見舞われ、熱中症患者が多発している。そのためか、ほとんどの人が倦怠感やめまい、頭痛、ふらつきなどを感じると熱中症と思い込んでしまい、血栓症を疑う人は少ない。
 国立循環器病研究センター(大阪府)によると、2008〜'13年の6年間の脳梗塞患者の件数は3〜5月の961件、9〜11月の917件、12〜2月の966件に対し、6〜8月は1004件と多い。
 また、特に65歳以上の脳梗塞の患者2万1000人以上を調べた台湾での研究では、平均気温が32℃を超えた場合、27〜29℃のときと比べ脳梗塞による死亡率が1.66倍に跳ね上がるという報告もあるという。

 同センター関係者はこう説明する。
 「これらを参考にすると、血栓症は寒い季節より30℃を超えるような暑い日に発症することがはっきり表れていることが分かります。そもそも血栓は、どうやって作られるのか考えてみましょう。正常な血管は、血管内では血液が固まりません。ケガをして血管から血液が出て初めて固まります。ところが、血栓ができやすい血管では、主に血管壁の状態が悪い、血液の流れが悪い(うっ血)、血液の成分が変わるといった、主に三つの状態に陥りやすくなるのです」