じわじわと人気が確実に浸透している、クラフトビール。

そのほとんどが小さな醸造所で造られているので、製造量も少量。スーパーやコンビニではあまり売っていないし、ふつうの居酒屋ではお目にかかれません。ですから、たまたま入ったお店で、たまたま評判のクラフトビールに出会えたとしたら、それはかなりラッキー!な話です。
「よなよなエール」大人の醸造所見学に行ってみた

前回は軽井沢に近い、その名も軽井沢ブルワリーの工場見学の様子をお伝えしましたが、この周辺にはもう一軒、とても有名なクラフトビールの醸造所があります。ビール好きでなくとも、コンビニで「よなよなエール」「水曜日のネコ」とちょっと変わったネーミングの缶ビールを目にしたことがありませんか?これらがクラフトビール界の老舗、ヤッホーブルーイングのクラフトビールです。こちらの醸造所見学にも行ってみました。

ビール醸造所でしか飲めない甘〜い麦汁

東京からヤッホーブルーイングへは、JR北陸新幹線とタクシーに乗って行きます。見学後は必ずテイスティング(試飲会)がありますから、クルマで行ってはなりませぬ。最寄り駅は軽井沢の、もうひとつ先の佐久平駅。そこからさらにタクシーに乗ること15分と、そこそこ不便なロケーションにあります。が、ある日曜日の午後3時。醸造所の前に人だかりが……見学に訪れた方たちです。

わざわざここまで来るぐらいですから、みなさん、当然ビールがお好きです。受け付けでウエルカムビールを受け取ると、ワクワク感がいやおうにも高まり、醸造所に入る前からワイワイガヤガヤ。20代、30代のカップルも多くて、熱いです。

「よなよなエール」醸造所入り口。高まる期待。

ビールの原料や製造法についてザッとレクチャーを受けてから、いざ醸造所へ。はじめに仕込み室にお邪魔します。ビールの主原料である「麦芽」を砕いたものをお湯にまぜて「麦汁」をつくるお部屋です。麦汁は「むぎじる」じゃなくて「バクジュウ」と読みます。ここで、冷えた麦汁をひとくち飲ませてもらいました。できたての麦汁なんて、醸造所でしか味わえません。甘くフレッシュな麦の香り。これがあの、苦み走ったビールになるなんて!この麦汁に、ビールの味と香りを大きく左右する「ホップ」を加えたら、麦汁の完成です。

次に、発酵室に移動し、麦汁に「酵母」を加えて発酵させます。発酵させたら、タンクに入れて貯蔵します。貯蔵室の温度は1〜3℃と超ク〜ル!熱気をはらんだ見学者たちも思わず寒がりますが、佐久までわざわざ醸造所見学に来るみなさんですから、まだまだ熱い、大丈夫です。

発酵中のビールがどんな風にアワアワしているのか、このタンクの窓から見られます。

醸造所ならではの発酵シーンが見られます。

この日は日曜日なので、缶充填のラインは動いていませんでした。

缶充填ラインはお休みですが、案内してくれた「みーしー」さんがカメラ目線をくれました。

「みーしー」さんの本名は清水さんですが、ヤッホーブルーイングでは全員、ニックネームで仕事しているそうです。ヘンな会社ですね!

本格的なテイスティングにトライ

缶充填ラインを見学したら、ままま待ちに待ったテイスティングです! 

1つずつ、グラスに注いでテイスティングします。まず、光にかざして色を見ます。

「ビールの色は照明の光ではなく自然光にかざして見ましょう」。

これが正しいビールの飲み方です。(もっとも筆者には、濃いか薄いかぐらいしかわかりませんけれど)

次に香りをかぎます。ワインのようにグラスの中に鼻を突っ込みます。ビールにもティスティング用語がいろいろありますが、「華やかなホップの香り」とか「草原の香り」とか「キャラメルのような」とか「バナナみたいな」とかとか、なんだっていいんです、自分で感じた香りを言葉にしてみると楽しくなります。

それから飲みます。これもワインのようにひとくち。そして味わいます。ゴクゴク飲まない。すると味わいがふわーっと口の中に広がり、鼻に抜けます。

はじめの1杯は、ベルジャンホワイトというスタイルの「水曜日のネコ」というビールでした。小麦麦芽を原料にしたエールタイプで、甘くやさしい味わい、フルーティな香りがほんのり。女性に人気の高いエールです。そもそもこの変わったネーミングは、週の中日でお疲れの働く女性にネコのようにくつろげる一杯を、という想いから生まれたそうです。

コンビニでも会えます「水曜日のネコ」。

次はヤッホーブルーイングの代表ブランド「よなよなエール」、その次は新種のホップを使った軽井沢限定エール、夏期限定エール、ブラックエール……と続きます。時期によりますが、5種類ほどのエールビールがテイスティングできるそうです。

「エール」と書いているのは、ヤッホーブルーイングは「エール」というタイプのビール専門の醸造所だからです。日本の大手メーカーの造る金色に輝くビールのほとんどは「ピルスナー」というタイプで、エールとは発酵に使う酵母が違います。ごくごく簡単に言うと、エールは上面発酵酵母、ピルスナーは下面発酵酵母で造られます。その違いからエールは華やかな香りと深いコクのあるビールになります。ピルスナータイプとは、味も喉ごしもアフターもちょっと違います。醸造所見学後のテイスティングほど、その違いをハッキリ感じる機会はないでしょう。

5種類以上の、できたてのクラフトビールが飲み比べができて、大満足。

ビール醸造所で飲むビールがなぜおいしいのかと言えば、気分ももちろんあると思いますが、やはり新鮮だからでしょう。貯蔵タンクから直にきている正真正銘の産地直送ビールです。何種類ものビールが味わえるのも、クラフトビールならでは、と言えます。そして醸造所を案内してくれたブルワリーのみなさんの、ビールにかける熱い思いもグラスに溶け込み、ひと味違ったものにしてくれたような気がします。

夕方17時ごろ、無事テイスティング終了。小さなグラスでちびちび飲んでいたのに、一杯一杯の個性が強いせいか、すっかりいい気分。かなりほろ酔い。ちなみに参加費用は1000円。すっごくお得だと思います。

クラフトビールの醸造所では季節によって違う種類のビールを仕込んでいることが多いので、次はまた時期を変えて訪れたいと思います。みなさんもこの夏、クラフトビールの醸造所見学、いかがですか?ヤッホーブルーイングの醸造所見学は7月〜10月です。夏場は特に混むので、早めに予約したほうがいいですよ! 

売店にはオリジナルの「よなよなエールTシャツ」も。写真は見学ツアー限定色のライトブルー。

◆ヤッホーブルーイング「よなよなエール 大人の醸造所見学ツアー」
住所:長野県佐久市小田井1119-1 
電話:0120-28-4747
●全予約制。申し込みはインターネットから。見学料金1000円
●8月の開催日:毎週土曜、日曜、および11日、14〜16日 9月の開催日:毎週土曜、日曜、および18日 10月の開催日:1日、14〜15日
アクセス:JR佐久平駅からクルマで20分。しなの鉄道 御代田駅からクルマで10分