テスラCEOが「ジョブズ化している」と見る理由

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米電気自動車(EV)メーカー、テスラのイーロン・マスクCEOは、アップルの共同創業者故スティーブ・ジョブズと同様に「現実歪曲フィールド」における支配的立場を確立しているのだろうか。

歴史に残るようなさまざまな話を掲載するウェブサイト「フォークロア(folklore.org)」によると、「現実歪曲フィールド」はアップルのエンジニアだったバド・トリブルが1981年、ジョブズについて語る中で用いた言葉だ。もともとは映画「スタートレック」に出てきたものだという。

ジョブズは人々が持っている感覚に明らかに矛盾する事柄でも、そうではないと信じさせることに秀でていた。「…彼のいる場所では、現実も(別のものに)変わる。彼は誰でも、ほぼ何についてでも説得することができた」

また、マッキントッシュの開発メンバーだったアンディ・ハーツフェルドによれば、「現実歪曲フィールドはカリスマ性のある話し方や不屈の精神、今掲げている目標のためには喜んでどのような事実も曲げてしまおうとする熱意が混ぜ合わさってできたもの」だ。

ではマスクは一体どのようにして、現実歪曲フィールドの支配的立場を獲得したのだろうか。それを説明するのに最適な数字が、先ごろ発表されたテスラの決算結果だろう。

テスラは損失を計上しながらも株価を上げてきた。今年第2四半期(4〜6月)のフリーキャッシュフロー(純現金収支)はおよそ15億ドル(約1650億円)の赤字だ。だが、米ウォールストリート・ジャーナルによれば、同社の株価は今年に入り、50%を超える上昇を記録。時価総額は米自動車大手フォード、ゼネラル・モーターズ(GM)を超えている。

一方、発売したばかりの新型「モデル3」の販売に関するマスクの発言は、投資家たちの心に大きな影響を与えたと見られる。マスクは8月2日、モデル3がより高額な既存モデルとの「共食い」現象を起こさない証拠として、次のような点を挙げた。

セダンの「モデルS」とSUVの「モデルX」の週当たりの注文台数は7月中、第2四半期中の平均を15%上回り、モデル3の最初の30台の納車を開始して以降もモデルSの注文はさらに増えた──。

非公開会社なら、CEOが何か誇張して話しても問題にはならない。だが、公開会社は法律に従って決算報告を行う義務を負う。それでもマスクは投資家らに対していまだに、まるで自分がそうした法律とは無関係のようにものを言う。

金融情報サイト、マーケットウォッチによれば、マスク自身も「不正確な発言をしたり、懸念に対して皮肉で返したり(否定したり)することがある」と認めている。

だが、「マスクの世界では、自社の創設以来最も重要な製品の発売に関して報道陣に不正確なことを述べても、実質的な結果を伴う可能性がある何らかの発言をしても、それらは大きな問題ではない」ようだ。それらはテスラが過去にしてきたほかの間違いと同じ、「単なる推測」や「取るに足りないこと」なのだ。

ただし、マスクの誤った発言に実質的な問題があるかどうかを判断するのは、本人ではない。マーケットウォッチが指摘するとおり、それは米証券取引委員会(SEC)であり、実際にSECはこの一年のうちに、すでにテスラに関する調査を行っている。

金融テクノロジーを用いて市場の分析を行うS3 パートナーズによれば、テスラ株はショートポジションを取る投資家が最も多い銘柄となっている。マスクのファンたちは、こうしたことをどう思っているのだろうか。スティーブ・ジョブズのとりこになっていた人たちと同様、テスラの投資家らもまた、「いま目指すことのためにはどのような事実も喜んで曲げる」状態に陥っているのではないかと疑われる。