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2014年に起きたベネッセコーポレーションの顧客情報流出事件。総件数は2895万件にも達し、お詫びの金券(500円)の支払いなどで、同社に巨額の損失が発生したが、さらに打撃を受ける可能性を秘めた裁判が新展開を迎えた。

個人情報が漏れたとして顧客の男性がベネッセ側に10万円の損害賠償を求めた訴訟で、最高裁で9月29日に上告審弁論が開かれることになったのだ。2審の大阪高裁では男性が敗訴したが、その判決が見直される可能性が高くなった。

現在、3500人以上の集団訴訟が進んでおり、その裁判の判断への影響も考えられるほか、新たな動きが生まれる可能性もある。今回の訴訟の原告代理人の金田万作弁護士は、「情報漏えいしてもお詫びは1人500円程度というのが一般的になっている。これが5000円や1万円となってくると、個人情報を機密情報並みにより一層保護したりそもそも不要な個人情報は所持しないという動きが出てくるのではないか」と大量の情報を持つことのリスクについて指摘している。

●ベネッセ事件、漏えい件数は2895万件

ここでベネッセ個人情報漏洩事件の経緯を振り返ろう。発覚のきっかけは2014年6月下旬ごろから、ベネッセの顧客に他社からのダイレクトメールが届くようになったことだった。ベネッセが社内調査を行ったところ、3次契約された派遣社員のシステムエンジニアが、顧客情報を不正にコピーして名簿業者に流していたことが判明。氏名、性別、生年月日、住所、電話番号が流出し、漏えい件数は2895万件にも上った。

ベネッセは金銭的な補償について200億円の原資を準備し、2014年9月中旬から被害にあった顧客に対して、500円の金券を送付。会員数の減少などにもつながり、ベネッセホールディングスは純損益が2年連続の赤字に陥った(2017年3月期は黒字転換)。

●最高裁弁論の背景「社会的影響を考えた結果ではないか」

今回の訴訟で、1審・神戸地裁姫路支部は情報漏えいについて、同社の過失を裏付ける十分な立証がないとして男性が敗訴。また2審・大阪高裁は「個人情報を漏えいされて不快感や不安を抱いただけでは、直ちに損害賠償を求めることは出来ない。迷惑行為をうけているとか、財産的な被害を被ったなど、不快感や不安を超える損害を被ったことへの主張がない」などとして、男性敗訴の1審を支持した。

一方で個人情報を巡っては、早稲田大学で江沢民・中国国家主席の講演会に出席する学生らの名簿(学籍番号、氏名、住所及び電話番号)が警視庁に提出された事件で、「本件個人情報は、プライバシーに係る情報として法的保護の対象となるというべき」と法的保護の対象になると示した最高裁の判決がある。(平成15年9月12日最高裁判決)

今回、最高裁で弁論が開かれることになった理由について、金田弁護士は「最高裁判決と矛盾する高裁判決となっており、この大阪高裁の判決が今後他の関連訴訟でベネッセ側から証拠として出され訴訟に影響を及ぼしたり、住所氏名などの個人情報を漏えいしても問題ないというような風潮が広がる可能性がある。そういった社会的影響を考慮したのではないか」と話す。

●実際に「情報拡散」したことの慰謝料が、どう判断されるか

また、情報漏えいに関する事件では、「Yahoo!BB」ユーザーの個人情報が漏えいし、精神的苦痛を受けたと主張する原告の5人に対し、運営会社が1人あたり6000円の損害賠償を支払うよう命じた判決がある。(平成18年5月19日大阪地裁判決)。

今回のベネッセの情報漏えいでは、名簿業者に売却された個人情報で顧客の元にダイレクトメールが届いていた。金田弁護士は「これまでの情報漏えい事件では実際に情報がここまで広がったという事例はなかったが、今回、最高裁が、個人情報が拡散した点をどのように判断するか。より一層、事業者の情報漏えいに関する警戒が強まるのではないか」と企業側の対応に期待している。

(弁護士ドットコムニュース)