※文春野球コラムは“代打制度”を導入しました。今回、中日ドラゴンズの筆者は竹内茂喜に替わりまして代打・大山くまおです。

【竹内茂喜からの推薦文】
かつて暑い時期には無類の強さを誇っていた我がドラゴンズ。今では見事にヘタれています。このリーグだけでも昇り竜の如く、上位進出を狙う為、今回代打の一番手として文春オンラインでも活躍中の大山くまおさんに大花火をぶっ放してもらいます!

【プロフィール】
大山くまお/おおやま・くまお
ライター。1972年、愛知県名古屋市出身。気がついた頃から中日ドラゴンズファン。著書に『中日ドラゴンズあるある』シリーズ(1〜3巻)など。文春オンラインで毎週土曜日、名言・失言で読むニュース記事を連載中。

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ここ数年、夏に弱いドラゴンズ

 名古屋の夏は暑いが、ドラゴンズの夏はお寒い。

 こんにちは。ライターの大山くまおです。『中日ドラゴンズあるある』という本を3冊出してます。今回、竹内茂喜センパイから代打の指名をいただいて、のんびり藤井のことでも書こうと思っていたが、“神宮の惨劇”を目の当たりにして、そんな気分でもなくなってしまった。


10点差を逆転された“神宮の惨劇” ©共同通信社

 子どもたちが夏休みに入った途端、ドラゴンズが連敗を始めた。“ドラ1三兄弟”の鈴木は火だるま、柳はアクシデントによって二軍落ちで、小笠原は力投が報われない。大野は試合がまともにつくれず、頼みのバルデスおじさんまで炎上した。なぜか5番を任されることが多い藤井は見るものを虚無感にいざなう空振りを繰り返す。打ってほしいときに打たず、ここで打ってほしいと願うとやっぱり打たず、期待していないとパカンと打つ。それが藤井。

 正直、「またか」という気分だ。ここ最近のドラゴンズは夏にからっきし弱い。

 2014年8月は7勝20敗という球団ワーストの記録を樹立。2015年8月はなんとか14勝12敗と勝ち越したが、2016年は7月8月あわせて17勝31敗だった。今年も7月は7勝15敗。“夏バテ球団”という不名誉なあだ名がつきそうな体たらくだ。12球団一の練習量はどうしたんだよ! とも言いたくなる。“夏男”の存在もドラゴンズとは無縁。夏に負けが込み、そのままずるずると下位に沈むのがこの数年のお決まりのパターンだ。落合信子夫人と仲良しの研ナオコじゃないが、「夏をあきらめて」という気分になる。

 先日、プロ野球死亡遊戯さんと一緒にラジオ番組『プチ鹿島のスポーツ紙大将』に出演したとき、パーソナリティーのプチ鹿島さんと「プロ野球を応援することとは、いい大人が喜怒哀楽を味わうことだ」という話をした。ならば、今の気分は「怒」。これが「哀」に変わるとヤバい。ちょっと前のDeNAがそうだった。ファンから哀愁が漂っていた。

 熱心なドラゴンズファンはドラゴンズの現状に怒っている。なんなら、もっと怒ったほうがいい。でも、名古屋の人たちはおおむねクールだ。かつて“ジョイナス”高木守道監督が退任のあいさつをしたとき、満員のナゴヤドームからすさまじいブーイングが沸き起こったが、さらに成績が落ちた今はそんな気配もない。「お値打ち」なものを愛し、無駄を切り捨てる名古屋の人たちにとって、弱いドラゴンズに怒りを向けることはエネルギーの浪費なのだろう。岩中祥史『名古屋人と日本人』(草思社)には次のように書かれていた。

「同じ入場料を払い、交通費をかけて見に行った試合が『お値打ち』だと判断すれば、名古屋人は動く。(中略)名古屋人の場合、同じ時間、同じお金を使って得られるものをシビアに計算し(というより、これはもはや本能に近い)、野球場に行くよりほかに価値がありそうな『もの』や『こと』があると判断すれば、そちらを優先させるだけのことである」

 だから、シーズン途中で負けが込むようになると、名古屋の人たちはドラゴンズをいとも簡単に見捨ててしまうと岩中は指摘する。「お値打ち」じゃないなら、ドラゴンズだってレゴランドだってあっという間に見放す。ジブリパークはどうなるだろう。

このままでは「怒」も「哀」も通り越して「無」になってしまう

 7連敗を喫した日、筆者は名古屋市内の居酒屋のテレビで阪神との試合を見ていた。延長になって田島が福留にカーンと打たれた瞬間、店内から「ああ」と小さなため息が漏れた。またか。また負けるのか。負けた瞬間はテレビを見ていた店内の全員が無反応だった。連れがいる人はすぐに次の話題を探していた。

 その日、名古屋の繁華街をぐるぐると歩き回ったが、ドラゴンズのユニフォームはおろか、キャップもTシャツも見ることはなかった。ドラゴンズの痕跡は何一つ見つからない。この街にはフランチャイズの球団なんかないんじゃないかと錯覚するほどだ。対戦相手の阪神のユニは何人も見た。なぜか広島のユニを着ている人も一人見た。きっと広島ユニが誇らしいのだろう。

 落合博満元監督が語った「勝つことが最大のファンサービス」は至言だった。稀代の名監督は、名古屋人の気質さえ見抜いていた。信長・秀吉・家康の三英傑を生んだ土地の人たちは、勝ち戦は好きだが負け戦を愛でることが苦手だ。最近は球団もファンサービスを頑張っているが、グラウンドで盆踊りをするイベントだって、勝った試合の後と負けた試合の後では参加者の数が段違いなのは一目瞭然である。

 このままなら、ドラゴンズファンは「怒」も「哀」も通り越して「無」になってしまう。ならば、ドラゴンズには勝ってもらうしかない。“神宮の惨劇”をバネにして、夏バテにも負けず、8月から勝ち進んでもらうしかない。

 チームにできることはまだあるはずだ。日本ハム・谷元の獲得は、球界の寝業師・根本陸夫の愛弟子である森繁和監督の面目躍如だった。これでブルペン陣が厚みを増すし、又吉を先発に戻すことだってできる。

 一番気になるのが与四死球の多さだ。現時点で与四死球378はセ・リーグ6球団でぶっちぎりのワースト。“神宮の惨劇”初戦の25日の試合では実に与四球11だった。そりゃ負けるよ。チームの与四死球数は、ここ数年低レベルで推移している。年間で合計369だった2011年が遥か彼方で霞んで見えない。友利結、近藤真市両投手コーチは大変だろうが、早急に改善してもらいたい。どうしてもうまくいかないならコーチの配置転換だってアリだ。あの巨人でさえ配置転換を断行したのだからドラゴンズにできないことじゃない。

 あとは高橋周平だよ、周平。連敗中、「周平さえいれば……」という声がほとんど聞こえなかったのはホントにヤバい。「4代目ミスタードラゴンズは京田」なんて声も出ているが、背番号3が泣く。「今さら活躍しても遅い」なんて言わないって約束するから、頑張ってくれよ。

 連敗から脱した日、名古屋の実家の近くの夏祭りに出かけたら、ドラゴンズの帽子をかぶっている男の子を一人だけ見かけた。人出のわりにはとても少ないが、なんだかとても嬉しくなった。彼もこの日の勝利が嬉しくて、意気揚々とドラゴンズの帽子をかぶって出かけたんじゃないだろうか(親に「かぶっていけ!」と言われただけかもしれないが)。ドラゴンズファンの子どもたちを失望させちゃいけない。この小さな芽を育てて、また名古屋の街がドラゴンズのキャップであふれかえるようになることを願っている。そのためには、何があっても、ドラゴンズは勝つしかないんだよ。

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※「文春野球コラム ペナントレース2017」実施中。この企画は、12人の執筆者がひいきの球団を担当し、野球コラムで戦うペナントレースです。コラムがおもしろいと思ったらオリジナルサイトhttp://bunshun.jp/articles/3624でHITボタンを押してください。

(大山 くまお)