農作業は長生きのもと?

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農家の人、とくに男性はサラリーマンなどに比べると約8歳も長生きをして元気、いわゆる「ピンピンコロリ」で医療費も3割少ない――。こんな調査を早稲田大学の研究チームがまとめた。

同大のキャンパスがある埼玉県本庄市内の農家や一般勤労者にアンケート調査を行なってわかった。

医療費もサラリーマンに比べ3割減

早稲田大学の2017年6月28日付発表資料によると、これまでも60歳以上の農業高齢者はほかの産業に従事している人より死亡率が低いという研究があるため、さらに詳しく調べることにした。2017年2〜3月に同大学と地域包括協定を結んでいる本庄市内の農村部と都市部で同じアンケート調査を行なった。調べたのは、(1)1989(平成元)年以降に死亡した家族の死亡時の年齢や生前の仕事の種類(2)仕事を辞めたときの年齢、従事期間など。また、埼玉県後期高齢者医療連合に依頼し、本庄市内の農業者とそれ以外の人の医療費(2010〜2014年分)を分析してもらった。農村部は543世帯、都市部は300世帯を集計した。

仕事の区分は、(1)自営農業(10アール以上の耕作地を持つ)(2)雇われての非農業勤務(会社員など)(3)雇われての農業勤務(4)農業以外の自営業の4種類だったが、自営農業者とそれ以外のグループの相違が予想以上に大きかったため、最終的には「自営農業」と「それ以外」で比較した。

秘密は引退時期が遅く、70代まで元気に働くこと

その結果、次のことがわかった。

(1)自営農業者の男女で際立つのは寿命の長さだった。男性:平均死亡年齢は81.5歳(それ以外は73.3歳。プラス8.2歳)。女性:平均死亡年齢は84.1歳(それ以外は82.5歳。プラス1.6歳)。
(2)仕事の従事期間も自営農業者が男女とも非常に長い。男性:平均50.8年(それ以外は37.5年。プラス13.3年)。女性:平均49.1年(それ以外は28.0年。プラス21.1年)。
(3)自営農業者の引退年齢は男女とも高い。男性:平均74.2歳(それ以外は64.3歳。プラス9.9歳)。女性:平均72.8歳(それ以外は60.8歳。プラス12.0歳)。
(4)自営農業者が引退後死亡するまでの期間(余命)は男女とも短い。男性:平均7.4年(それ以外は9.6年。マイナス2.2年)。女性:平均11.0年(それ以外は19.3年。マイナス8.3年)。
(5)引退するまで元気に仕事に従事する期間を「健康寿命」とするなら、農業者は健康寿命が長い。また、死亡年齢と健康寿命の差である「余命」が短く、いわゆる「ピンピンコロリ」なので、医療費のデータも約3割低かった。

今回の結果について、研究チームの堀口健治名誉教授は発表資料の中でこうコメントしている。

「農業者は男女とも70代前半まで健康に農業に従事している人が多く、引退から亡くなるまでの期間が短いのが特徴。死亡原因に老衰が多いこともわかりました。高齢者の望ましい生き方をしています。急速に増加する後期高齢者の医療費を削減するためにも、農業者の生活スタイルのどの部分が健康維持につながっているのか、もっと研究する必要があると思います」