『アルプスの少女ハイジ』。この作品のこと、彼女のことを知らない日本人は、ほとんどいないだろう。天真爛漫な少女の姿は誰の心の中にも残っているはずだ。あの彼女が実写映画として舞い戻ってきた。

ブレないハイジの生き方

スイス人作家ヨハンナ・シュベリによって書かれた『ハイジ』。原作は60もの言語に翻訳され、発行部数はじつに5,000万部以上だそう。世界中で愛され続けている理由をていねいに紐解いていけば、やっぱりここにたどり着く。

この物語には、心に響くメッセージが散りばめられている。

自分より人を優先する思いやり、できないことに挑戦する不屈の精神、どんな人にも公平に接する寛容な心…。それらを「哲学」と証すれば大袈裟だと思う人もいるかもしれない。けれどハイジのブレない生き方は、大切なことを忘れてしまいがちな、大人になった僕たちの姿勢を、今いちど正してくれるはずだ。

19世紀当時の様子を
忠実に再現

監督アラン・グスポーターはスイス生まれ。ハイジに思い入れのあることから起用が決まった。

映画『ハイジ アルプスの物語』のこだわりは、スクリーンに映し出されるものすべてを、ハイジの生きた時代である19世紀で再現すること。そのためロケ地は、かなりの時間を使って入念にチェック。当時の印象を残すために、20世紀以降に作られたものは取り除く。そんな徹底ぶりだったらしい。

また、女性がなかなか仕事に就くことが難しかったり、あるいは、家の中に幽閉されがちだったりといった、当時のヨーロッパの社会的価値観もさりげなく演出されている。

500人の候補の中から選ばれた
“アルプスの少女”

制作におけるもっとも重要なキャスティングは、当然主役のハイジ。アルプスの少女役を務めるオーディションは、じつに500人以上の子役が集まったそうだ。主役の座をつかんだのはアヌーク・シュテフェン。制作チームが彼女に出会ったのは、オーディション開始まもなくのことだったそう。まだ他にいるかもしれない。が、結局、彼女を超える少女は現れなかった。

撮影時のアヌークの年齢は9歳。しかも、映画初出演だったにもかかわらずハイジという役柄を驚くほどに把握している。「ハイジは、陽気でどんな人でもありのままに受け止めるの。必要なものはすべて山にあることも知っているの」どうやら、アヌークがハイジ役を射止めたのは、運命だったようだ。

物語の根底にあるのは自分探し

この物語の根底にあるテーマは、自分自身のアイデンティティを探すことだ。それは、自分のいるべき場所を探すこと、自分の愛するものを知ること、あるいは、自分が心から望むことを見極めること。ハイジがアルプスの山へ戻ったシーンを見て、ふとそんな考えが頭をよぎった。

でも、よくよく考えてみれば、子どもたちはちゃんとそのことを知っている。たとえ、アイデンティティという言葉は理解できなくても。彼らは、心と体でそれを体現してるのだ。

そんなふうに解釈ができるようになったことは、単純に面白いことだと思う。なぜなら子どもの頃には、決してそんな視点では物語を追っていなかったから。そういった意味では、この映画は大人でも充分に楽しめる作品だということができる。もちろん、アルプスの山々も、実写ならではの美しさと迫力。エンドロールが流れる頃には、あなたもスイスを訪れたくなっていることだろう。

『ハイジ アルプスの物語』
2017年8月26日(土)よりYEBISU GARDEN CINEMAほか全国公開。公式サイトはコチラ

©2015 Zodiac Pictures Ltd / Claussen+Putz Filmproduktion GmbH / Studiocanal Film GmbH

Licensed material used with permission by ハイジ アルプスの物語