【コラム】PSG移籍のネイマールは“新フィーゴ”!? スペイン各紙の反応とは

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 ネイマールは今夏だけでなく、新シーズンもずっと注目され続けるに違いない。
 
 バルセロニスタにとってネイマールは、7月中旬にパリ・サンジェルマンへの移籍報道が出るまでは、リオネル・メッシに並ぶ人気のスターだった。それが今やすっかり「裏切り者」「守銭奴」と呼ばれている。高額の契約更新をしたばかりなのに、まだ金が欲しいか。特に息子を利用して、多額の手数料を受け取る代理人の父親には「金の亡者」というレッテルがべったりと貼られている。

 父親はボールは蹴らないが、トップクラブのプレーヤー並の報酬を受け取っている。バルセロナはライバルのレアル・マドリードの手中にあったネイマールを獲得するために、多額の手数料を父親に支払い、昨年の契約延長の際にも父親に手数料を支払う契約を結んでいた。両方の金額を合わせると実に約4100万ユーロ(約53億円)に上る。ネイマールが在籍した4年間におけるバルセロナのトップチームの大半の選手がクラブから手にした報酬よりも大きい。「ネイマールの父親は、バルサの歴史上何番目に高い契約だろうか?」という皮肉を込めた冗談は、あながち間違っていないのかもしれない。父親はパリ・サンジェルマン契約時に4000万ユーロ(約52億円)の手数料が入るという報道もされている。

 サントスからバルセロナへの移籍の際には、ネイマール、父親、当時会長だったサンドロ・ロセイ、現会長バルトメウにスペインの裁判所から不正の疑いがかけられている。サンドロ・ロセイはネイマールの契約内容の不正をソシオに訴えられたことをきっかけに辞任し、今年に入って別件ではあるがマネーロンダリングで逮捕された。そして今回、ネイマールはパリ・サンジェルマンの移籍に際しても、バルセロナとスペインのプロリーグ機構(LFP)と裁判になる可能性があると報じられている。「UEFAのファイナンシャル・フェアプレー制度に違反している」「契約延長時の手数料の支払いを不履行にしたい」というのが、訴訟される理由だそうだ。ネイマールの入団と退団でバルセロナは2つの裁判を抱えることになるかもしれない。

 今後のバルセロナにとって、大きな問題が、ネイマールの後継者探しだ。迅速な解決が求められるが、その道のりは険しい。どのクラブもバルセロナは、ネイマールの移籍により、2億2200万ユーロ(約290億円)を手にしたことを知っている。フィリペ・コウチーニョにしろ、パウロ・ディバラにしろ、もしくはウスマン・デンベレを獲得しようにも、彼らの所属クラブであるリヴァプール、ユベントス、ドルトムントは市場価値よりも高額な移籍金をふっかけてくるだろう。バルセロナにお金があることが分かっているからだ。スポーツ面においても、マーケティングにおいてもネイマールの後釜を人選するだけでも大変なミッションなのに、交渉でも難題が待ち受ける。かつ時間はない。バルセロナのスポーツディレクターのロベルト・フェルナンデスは、8月31日まで眠れない日々を過ごす可能性は高い。

 ネイマールは、スペイン紙『アス』によれば4シーズンで186試合105得点を記録した。チームにはチャンピオンズリーグ(CL)、リーガ・エスパニョーラ連覇、コパ・デル・レイ3連覇など8つのタイトルをもたらしている。文句のつけようがない戦績だが、セレソンの先輩方と同様にカンプ・ノウを裏口から去ることになった。

 1993−94シーズンに得点王としてバルセロナのリーグ4連覇に貢献し、そのシーズン後に開催されたワールドカップを制覇したロマーリオは、新シーズンに向けたトレーニングに21日遅れて合流し、自分のわがままを通して、母国のフラメンゴに移籍した。96−97シーズンに入団し、公式戦49試合47得点を記録し、リーガ得点王となったロナウドは、シーズン終盤から契約延長の交渉を長く我慢強く続けていたが、話になかなかまとまらず、インテルが違約金を支払うことで、イタリアに飛んで行った。その後2002年ワールドカップ制覇し、得点王となった夏にレアル・マドリードの選手として、スペインに戻ってきた。リバウドは98、99年とリーガ連覇に貢献し、99年にはバロンドールに選出された。しかし、02年に折り合いが悪かったオランダ人監督がルイス・ファン・ハールが復帰することが決まると、リバウドは追い出されるようにミランへ移籍を決めた。クラブに黄金期をもたらしたロナウジーニョが、夜遊びがクローズアップされ、かつ低調なパフォーマンスもあり、08年にジョゼップ・グアルディオラ監督就任と同時に不要と名指しされ、放出された。ダニエル・アウヴェス(現パリ・サンジェルマン)は疑いの余地なくクラブ史上最高の右サイドバックだったが、現会長バルトメウら現役員と喧嘩別れで、昨夏ユヴェントスへフリーで移籍した。

 バルセロナに栄光をもたらしたブラジル人はこのように揃って、功績に見合わない後味の悪い退団をしている。

 スペイン紙『マルカ』は「ネイマール、新しいフィーゴ」と評した。フィーゴはキャプテンマークを巻き、エースとしてバルセロニスタの絶大な信頼を集めていたが、2000年夏に最大のライバルであるレアル・マドリードに移籍した。当時の高額な移籍金が注目を集めたが、バルセロニスタは、報酬のわずかな差でレアル・マドリードを選択したことで怒り狂った。フィーゴを「守銭奴」「裏切り者」と罵り、彼が移籍後初めてカンプ・ノウのピッチを踏んだ時にはジャンボジェット機の離陸時のエンジン音と同じボリュームのブーイングが飛んだという報道もあった。実際、CKでは豚の頭などが投げ込まれ、試合が一時中断するほどだった。あれからもう17年が経ったが、憎しみは消えていない。今年UEFAのツイッター公式アカウントで、歴代の盟主が似顔絵が並ぶイラストにバルセロナのユニフォームを着たフィーゴが描かれていた。それに対して、多くの批判がUEFAに集まった。フィーゴはいまだに、そして今後もクレに許されることはない。

 ネイマールは、果たしてどうか。もし来るべきシーズンにCLで、パリ・サンジェルマンの10番のユニフォームを着て、カンプ・ノウに帰還したら、フィーゴ対して起こった大きなブーイングが待っているのだろうか。もしブーイングが起こった場合、いろんな角度からサッカーを報道するスペインメディアは、サンチェス・ピスファンに9月20日にラス・パルマスの選手として、そして2月25日にアトレティコ・マドリードの選手として帰還するビトーロに対しての野次の音量と比較するはずだ。

文=座間健司