ルワンダ大虐殺から20年目の4月3日、首都キガリで犠牲者を追悼し「記憶」する炎を運ぶ若者たち。炎のリレーはその後、全国30郡を回って同7日にキガリへ戻った(2014年4月3日撮影)。(c)AFP=時事/AFPBB News

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【AFP=時事】「1994年のツチ(Tutsi)人の大虐殺(ジェノサイド)について説明できる人は?」。質問を黒板に書きながら教師は生徒たちに問い掛けた。

 ルワンダの10代の生徒たちが教師に視線を向ける中、発言を促された1人の生徒がこうつぶやいた。「人が大勢、殺されました」

 教師は詳しい説明を生徒からゆっくり引き出しながら、黒板に公式の定義を走り書きした。ルワンダの大虐殺では「無実のツチ人と、当時広まっていた(フツ)過激派の政治に賛同しなかった穏健派のフツ(Hutu)人が周到に組織的にせん滅された」──。

 キガリ(Kigali)にある緑に覆われたこの高校で大虐殺後に生まれた世代が学んでいるのは、なぜ民族対立が大虐殺につながったのかということと、それをどう忘れ去るかだ。そのことが統合と和解を育もうとしている政府の取り組みの重要な柱となっている。

「フツ人、ツチ人、トゥワ(Twa)人……自分のクラスで誰が何人かなんて知らない」と18歳の生徒の1人は穏やかな口調で語った。「私は単にルワンダ人だから」。彼女のクラスメートの多くも同じような心情を語った。彼らは幼い頃から「ルワンダ人らしさ」をたたき込まれている。

 だが一部の研究者らは、こうした生徒たちは歴史の授業で教えられたことをオウムのように繰り返しているだけだと指摘している。

 2014年に著書「From Classrooms to Conflict in Rwanda(ルワンダの教室から紛争へ)」を発表した研究者のエリザベス・キング(Elisabeth King)氏は、「この国にあるのは公式の歴史ただ一つで、そこからの逸脱は許されない」と言う。

「生徒たちは、民族については意識していないと言うよう教えられるが、現実には民族性がいまだ権力獲得を構造化しており、彼らの日々の暮らしを体系化もしている」

■大虐殺後に「消された」民族対立

 ルワンダ大虐殺では少数派のツチ人を中心に、100日間におよそ80万人が殺害された。4日に行われる大統領選で3選を目指すポール・カガメ(Paul Kagame)大統領は、大虐殺について「人は生まれつき悪なのではない。しかし悪い人間につくり上げられることはあるし、良い人間になるよう教わることもできる」との見解を示している。

 大虐殺後、国が過去の歴史の書き換えに着手するまで、歴史の授業は中断されていた。

 ルワンダのジェノサイド研究・文書管理センター(Research and Documentation Center on Genocide)のジャンダマシーン・ガサナボ(Jean-Damascene Gasanabo)所長は「大虐殺が起きる前の教育は、ルワンダ国民の中の違いを強調していた」という。同氏によると、教科書ではツチ人をエチオピアからの「外来侵入者」と表現し、フツ人とツチ人の身体的な見分け方を説明していた。教師らはツチ人の生徒をわざわざ立たせて、人数を数えていたという。

 だが、大虐殺以降、民族に関する言及はタブーとなっている。

 現在の学校の教科書では、キング氏いわく事実と異なる「植民地時代以前の黄金時代」が描かれ、フツ人とツチ人の対立はなかったことになっている。そして、これらの民族をつくりだしたのはキリスト教の宣教師らやベルギーからの入植者だと非難している。

■公式見解と異なる発言は、刑務所へ

 昨年導入された新たなカリキュラムは、批判的思考の実践も重視している。だがキング氏は「ジェノサイド・イデオロギー法」によって恐怖が植え付けられ、公式見解にほとんど誰も反論できない国ではそれは不可能だと指摘している。

「間違ったことを口にすれば投獄されるかもしれないと人々が感じているような状況で、非常に独裁的な政府と教育を切り離すことはできない」とキング氏は言う。

 大虐殺から27年が経過し、カガメ大統領の下で経済回復と安定を実現したルワンダは称賛されている。しかし権利団体は、ルワンダでは表現の自由がなく、反体制派が口封じされていると繰り返し批判している。

 大虐殺終結をもたらした旧反政府勢力で現与党の「ルワンダ愛国戦線(RPF)」の手によるフツ人殺害は、大虐殺の前から後のものまで、言及するだけで刑務所に送られる。

 今年、大虐殺が起きた時期を迎える少し前、ツチ人が所有する複数の雌牛がなたで殺される事件が起きた。

 一方、大統領選に出馬している野党候補で複数の民族的背景を持つフランク・ハビネザ(Frank Habineza)氏は、ツイッター(Twitter)で彼を「マウンテンゴリラ」と呼んだユーザーを告発した。フツ人の身体的な特徴を指した言葉だとみられており、ハビネザ氏は不快感をあらわにしている。
【翻訳編集】AFPBB News