金正恩夫妻とモランボン楽団

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北朝鮮の進路や、金正恩体制の未来を占う上で、最も重要な要素と言えるのが人事情報である。

象徴的な例が、金正恩党委員長の叔父・張成沢(チャン・ソンテク)国防副委員長が2013年12月に処刑された事件だ。

トイレの世話も

張氏はそれまで、正恩氏の後見人であると見られていた。中国など海外にも人脈を張り巡らし、国内行政や外貨稼ぎにおいても主導的なポジションにあった張氏のサポートなくして、若年の正恩氏が国家運営を担うことは難しいと考えられていたのだ。

また頻繁に海外に赴き、資本主義経済の実情もよく目にしていた張氏は、北朝鮮経済を開放に導くだろうと期待する向きもあった。本当にそうなっていれば、現在のような「核危機」は訪れなかったかもしれない。

ところが正恩氏は、叔父の生命とともにそのような期待を葬った。それ以降、北朝鮮がどのような道を歩んでいるかについては、ここで説明するまでもないだろう。

では、現在の北朝鮮指導部の人事には、どのような特徴が見られるのか。最近の国営メディアの報道を見ると、核・ミサイル部門の幹部らの重用ぶりが目に付く。

一方、北朝鮮中枢の人事情報に精通する北朝鮮戦略情報センター(NKSIS)の李潤傑(イ・ユンゴル)代表は、「護衛総局傘下にある974軍部隊OBらの登用が目立つ」という。同部隊は正恩氏を至近距離で護衛する任務を担っているとされ、文字通り24時間、正恩氏にのみ仕えているのである。

ちなみに護衛総局は、有名の「喜び組」の選抜を担当していることでも知られる。

974軍部隊の出身者で代表的なのが、金秀吉(キム・スギル)朝鮮労働党平壌市責任書記兼党政治局候補委員だ。前述した張氏の一派とみなされ、更迭された前任者のムン・ギョンドク氏に替わり、この地位についた。NKSISの李代表によればほかにも、党や行政の中枢部門で974軍部隊OBの登用が増えているという。

気になるのは、こうした人事が何を意味しているかだ。李代表は、「金正恩氏はもはや、護衛総局ぐらいしか信じられなくなっているのではないか」と分析している。

たしかに、正恩氏は「核の暴走」を続けながら、一方で米韓による暗殺を恐れ、自分の身の安全を極度に気にかけているとされる。そんな状況下では、自身のトイレの世話までしてくれる忠実で頼もしい軍人たちに大きな信頼を寄せるのは当然かもしれない。

(参考記事:金正恩氏が一般人と同じトイレを使えない訳

だが、正恩氏がいつまでもそのような状況から抜け出せないならば、体制が人材の多様性を失い、機能不全に陥っていく可能性もないとは言えない。