ドナルド・ヤング【写真:Getty Images】

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シティOP2回戦、日本のエースをフルセットまで追い詰めるも敗戦

 男子テニスシングルス世界ランキング9位の錦織圭(日清食品)は、シティ・オープン2回戦で同58位のドナルド・ヤング(米国)に6-3、4-6、7-6で勝利した。日本のエースをフルセットまで追い詰める激闘を演じた対戦相手のヤングだが、試合後に人種差別を受け、波紋が広がっている。

 ジュニア時代から雌雄を決してきた同世代のヤングは、プロ転向後に水をあけられた錦織を追い詰めた。米紙「ワシントン・ポスト」は「今大会で最もドラマチックなものとなった」と評したが、ヤングのツイッターには試合後、心ないメッセージが届いたようだ。

「お前がメジャータイトルを獲得することは絶対にない。なぜならお前はクズだからだ。大げさなドラマを求める典型的な黒人だ。ケイとティムはそんな大芝居はしなかった」

 英紙「メトロ」によれば、メッセージにはコート上で倒れこんだヤングの写真が添付され、人種差別用語を用いて、ヤングを中傷していたという。ケイは錦織を意味し、ティムはヤングが初戦で破った世界ランキング205位のティム・スマイチェック(米国)を表しているものと見られる。

テニスファンはヤングを支持「あなたは偉大なプレーを続けていた」

 しかし、ヤングもこの侮辱に屈しなかった。

 このメッセージの主に対して、「転倒を心配してくれてありがとう。このツイートを書いている暇があったら、いくらぐらい稼げたかな?」と毅然と返信している。

 テニスファンも中傷を受けたヤングを支持した。

「これはひどい。あなたは偉大なプレーを続けていた。このまま頑張って、嫉妬深い嫌悪者を無視してください」

「あなたの時間と大切なエネルギーを無駄しないでください。コンピューターのスクリーンの陰から品格ゼロで無知な人間に対して」

「無視しましょう。彼女にはフォロワーが2人しかいない。ドナルドにはあなたのテニスを見ることを愛し、活躍を願う何千ものファンがいるのです」

「あなたに向けられた人種差別者のくだらない戯言は残念です。あなたの試合を生で見られれば良かった。素晴らしいプレーでした」

 ヤングに対する人種差別は米国外にも波紋を広げている。

 英紙「メトロ」は「アメリカのテニススター、ドナルド・ヤングはワシントンでのシティ・オープンで敗北後、ショッキングな人種差別に苦しむ」と特集している。

 記事では「ヤングは錦織をギリギリまで追い詰めた」と戦いぶりを評価しつつ、ツイッターでの中傷について「試合後のヤングにはソーシャルメディア上の不愉快な人種差別の標的となった」と伝えている。

7月にはバウティスタ・アグートも非難に…不条理な現実と直面する選手たち

 世界ランキング18位のロベルト・バウティスタ・アグートは、7月29日に行われたスイス・オープン準決勝で同31位のファビオ・フォニーニ(イタリア)と対戦し、7-5、2-6、3-6とフルセットの末に敗戦。試合後、強く罵るコメントが彼のSNSに届いた。

 自身のツイッターに厳しいコメントが並んだスクリーンショットを投稿し、バウティスタ・アグートは、「残念なことだけど、スポーツの世界は賭け事のせいで汚れつつある。全てを出し尽くした挙句、選手はこれに耐えなければいけないのか」と心ない人々の中傷に反論した。

 海外ではオンライン・ブックメーカーにより、スポーツの結果に金銭を賭ける「賭博行為」が日常的に行われている。バウティスタ・アグートの勝利に持ち金を賭けていた人々が怒りの“はけ口”として、選手のツイッターにメッセージを送って憂さを晴らしていると主張していた。

 今回、中傷の刃はヤングに向けられた。コート外でも選手は激戦に敗れた後、「不条理」と戦わなければいけない厳しい現実と直面している。