「ヨーロッパ5大リーグ」のなかでもっとも早く新シーズンの開幕を迎えるフランスリーグ「リーグ・アン」が、いよいよ8月4日から熱戦の火蓋が切られる。


昨シーズンはモナコが17年ぶりのリーグ・アン優勝を果たした

 近年のリーグ・アンはパリ・サンジェルマンのタイトル独占状態が続いていたが、昨シーズンは若手の活躍でチャンピオンズリーグ4強に食い込んだASモナコがPSGの5連覇を阻止。17年ぶりとなる通算8度目のリーグ優勝を果たし、大きな注目を浴びた。同時に、フランス国内で突出した戦力を誇る「PSG1強体制」に風穴を開けたモナコの存在は、他クラブに大きな希望を与えることとなった。

 そして迎える今シーズンのリーグ・アンは、まさに群雄割拠の様相だ。もちろん本命はPSGに変わりはないが、昨シーズンの王者モナコを筆頭に、新オーナーが改革を進めるマルセイユとリール、それを追うリヨン、さらにニースも優勝争いに加わる実力が十分にある。イングランド・プレミアリーグのように、リーグ・アンも「ビッグ6」の時代が到来するかもしれない。

 そんななか、やはり気になるのは、タイトル奪回を至上命題とするPSGの動向だろう。

 圧倒的な予算を誇るPSGは、今夏も「量より質」を基本方針に両サイドバックをピンポイントで補強。手薄な右サイドには、マンチェスター・シティへの移籍が濃厚と見られていたブラジル代表のDFダニエウ・アウベス(前ユベントス)に約2倍の年棒を払うという条件で強奪。対する左サイドには、引退したDFマックスウェルの代役としてレアル・ソシエダからDFユーリ・ベルチチェを獲得し、戦力低下が予想されたポジションを見事に戦力アップさせている。

 そして最大の注目は、現在世界中の関心事となっているFWネイマール(バルセロナ)の移籍報道だ。現段階では「正式発表を待つのみ」という流れだが、これが実現するとPSGにとっては「鬼に金棒」。間違いなくリーグ・アンの勢力図はガラリと変わるはずである。

 とはいえ、いくらPSGに資金力があると言っても、ネイマールの獲得には移籍金として推定約290億円(税別)という天文学的なビッグマネーをバルセロナに支払う必要がある。そうなると、FWアンヘル・ディ・マリア、MFマルコ・ヴェラッティ、MFブレーズ・マテュイディといった不可欠な主軸たちの放出も避けられない状況だ。

 当然、指揮を執る2年目のウナイ・エメリ監督としては、ネイマール加入でチーム作りは大きく変わる。初年度の失敗もあるだけに、その手腕が問われるところだ。

 それとは対照的に、王者モナコのレオナルド・ジャルディム監督は、ヨーロッパの各ビッグクラブが繰り広げる主力選手の引き抜きに苦しんでいる。

 最初の離脱者は、マンチェスター・Cに推定5000万ユーロ(約62億円)で移籍した司令塔MFベルナルド・シウバだ。その後も同じマンチェスター・Cに推定5700万ユーロ(約73億円)で左サイドバックのDFバンジャマン・メンディを、チェルシーには推定4000万ユーロ(約52億円)でボランチのMFティエムエ・バカヨコを引き抜かれ、予想以上の戦力ダウンを強いられている。

 さらに各ビッグクラブは現在もモナコの有望な若手に触手を伸ばしており、18歳の新鋭ストライカーFWキリアン・ムバッペがレアル・マドリードに狙われ、左MFトマ・レマルやボランチのDFファビーニョにも移籍の噂は絶えない。クラブとしては何とかこれ以上の主力流出を防ぎたいところだが、同時に3人の放出で約187億円という莫大な移籍金収入も得ている。それをいかに有効活用するかも今後のカギと言えるだろう。

 現状でモナコは、ボランチに2500万ユーロ(約31億円)でベルギー代表の20歳の天才MFユーリ・ティーレマンス(前アンデルレヒト)と、左サイドバックに約1300万ユーロ(約16億7000万円)でセンターバックもできる23歳のDFテレンス・コンゴロ(前フェイエノールト)を補強。あくまでもクラブの方針に従い、若手主体のチーム作りを継続する構えを見せている。

 もっともモナコにとっては、主力の引き抜きで苦しむのは夏の恒例行事でもあり、そのなかで試合を重ねながら若手を成長させてチーム強化を図るのがレオナルド・ジャルディム監督の得意技。過去の実績からしても、必ずや優勝争いに加わってくるだろう。

 そして、この両チームの優勝争いに割って入りそうな勢いなのが、DF酒井宏樹が所属する名門マルセイユだ。

 マルセイユは昨年10月、MLBロサンゼルス・ドジャースのオーナーだったアメリカ人実業家のフランク・マッコートがクラブを買収。公約とした大型の資金投資を実行し、さっそく冬のマーケットでフランス代表のFWディミトリ・パイエ(前ウェストハム・ユナイテッド)や、左サイドバックにDFパトリス・エブラ(前ユベントス)といったビッグネームを獲得して注目を集めた。

 チーム改革は現在も進行中で、今夏もセンターバックに元フランス代表のDFアディル・ラミ(前セビージャ)、ボランチにブラジル代表のMFルイス・グスタボ(前ヴォルフスブルク)、そしてトップにはFWヴァレール・ジェルマン(前モナコ)といった即戦力を次々に補強。ベテランと若手が見事に融合した豪華なラインナップとなった。

 しかも指揮官は、かつてリールを優勝に導き、ローマで実績を積んだルディ・ガルシア監督。身上の攻撃サッカーが開花すれば、打倒PSGの最有力候補に躍り出る可能性も高い。

 一方、今年1月に新オーナーが就任した北部の名門リールも要注目だ。新会長のジェラール・ロペスはロータスF1チームの代表なども務めるルクセンブルク出身の実業家。就任と同時に掲げた方針は、有望な若手を育ててチームを強化し、成長した選手を売却することで好循環を作るという、いわゆる「モナコ式スタイル」だ。そしてその指揮官として白羽の矢が立ったのは、会長自身がファンだったというアルゼンチンの名将マルセロ・ビエルサだった。

 ビエルサ監督と言えば、2014-2015シーズンにマルセイユの監督を務め、無名の選手が多いチームに得意のアグレッシブな戦術を浸透させ、リーグ・アンに旋風を巻き起こした世界的名将である。今シーズンのリールも大物選手は皆無だが、有望な若手を積極的に補強しており、シーズン中にどのようにバケるのか期待大だ。2010-2011シーズンの優勝から久しく遠ざかっている名門の復活は、すべてビエルサ監督の手腕にかかっていると言っても過言ではないだろう。

 その他、強豪リヨンと昨シーズン3位のニースも上位を争うことになるはずだ。

 リヨンはFWアレクサンドル・ラカゼット(アーセナル)をはじめ、MFコランタン・トリッソ(バイエルン・ミュンヘン)や、長くチームを支えたキャプテンのMFマキシム・ゴナロン(ASローマ)といった不可欠な戦力を引き抜かれてしまったのは痛手だ。だが、その一方で下部組織出身の有望な若手が次々と育ち、今夏も将来楽しみな選手を各ポジションに補強した。今シーズンも安定した戦力を誇っており、上位進出は濃厚と見られている。

 また、リュシアン・ファーヴル監督の手腕が光って昨シーズン3位に食い込んだニースは、今夏に引き抜きの噂があった指揮官本人を残留させることができたことが最大の好材料だろう。さらに悪童FWマリオ・バロテッリが今シーズンもニースでプレーすることが決定し、大幅な戦力ダウンを回避することもできた。もちろん、プレーオフを勝ち抜いてチャンピオンズリーグ本戦に出場するとなれば、さらなる補強を行なって選手層を厚くする必要がある。だが、これまでの戦力が残留すれば、ニースの緻密な戦術もキープできるはずだ。

 いずれにしても、「打倒PSG」を掲げ、それを実行できるだけの戦力を誇るチームが増えたのは間違いない。今シーズンのリーグ・アンは例年以上に見どころも多く、白熱したリーグ戦が展開されることだろう。

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