危険!「レギュラーが偉い」部活はヤバい

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部活が自分に向いているかどうか入ってみないとわからない。だが子供の心身に負担を強いる“ブラック部活”を事前に察知する方法はある。

■“ブラック部活”のチェックポイントはこの3つ

ぐっと春めいてきました。入学・進級の季節です。

前回の原稿では、中学・高校には土日祝日も休みのない部活動が多く、生徒が大変なだけでなく、教師も部活の顧問業務を半ば無理矢理させられている現状をレポートしました(「土日の部活は常識」陰の推進者はあの人)。とはいえ、我が子に向いた良い部活動に入れたいとほとんどの親御さんは願っているでしょう(*教員が実質的に強制的に部活動の顧問をさせられている現状をどう変革するべきかを文末に付記します)。

そこで、我が子が部活動を選ぶ際の「アドバイスポイント」について少し述べます(選ぶのはあくまで子供自身ですので、アドバイス程度です)

親として、子供にちょうどいい部活選びをアドバイスする際、「〇〇大会連続出場」のような部活動の実績だけに目をとらわれると、失敗します(単に我が子を競技スポーツ強者に育てたいだけなら、話は別かもしれません)。この点にまずご留意ください。

部活動選びのチェックポイントを挙げます。

(1)平日及び土日の練習時間
(2)先輩・後輩の人間関係
(3)部活動以外の活動状況

(1) 平日及び土日の練習時間について

毎週土日の練習や、休みなしの長時間練習が常態化している部活動であれば、顧問も子供も何かを犠牲にしています。スポーツですべてが決まる某名門スポーツ学校のように、顧問も子供もプロ育成を目指してすべてを費やすならば、これでも構わないかもしれません。しかし、そうでないならば、週末を含めた長時間練習は避けるべきです。

きつい言い方をすると、人間の疲労度をなかば無視して、成果を上げるためにひたすら人を動員して時間をかけて営業する戦術のブラック企業と同じ発想です。そうした部活動と知りながら、我が子を所属させるのはいかがかと思います。大事な我が子を将来そういうブラック企業体質の組織に慣れっ子の社会人にしたいのならば止めませんが、私はおすすめしません。

健全な部活動であれば、仮に土日に活動があったとしても、それは公式戦やコンクール開催日など特別な日です。通常の練習は平日にしっかりとなされています。土日に他校との練習試合や合同練習などを組むこともあります(これは、顧問にとっては大変なことで、やってくれていたら親の立場とすれば有難いことでしょう)が、どの程度の活動が「適正」かは、子供自身が最終的に判断するところです。

■顧問にだけあいさつする部員がいたら、ヤバい

(2)先輩・後輩の人間関係について

部活内で実力至上主義がまかり通っている場合、人間関係が「ぎすぎす」していることが多いので、子供が見学した際に先輩たちの様子をよく観察するようにアドバイスするといいでしょう。

中学生以上ならマナーとしての上下関係の礼儀は必要でしょうが、「上手い人間が偉い。下手な奴はいらない」という間違った価値観があれば、関係性は歪みます。とりわけ運動系の部活では、上手い選手や有名な監督などの権威には妙にへりくだる一方、後輩への当たりが異様に強い、というケースは少なくありません。また上手であれば、先輩後輩の上下すらも逆転することがあり、これはこれで問題です。

つまり、当たり前の人間関係が通らない状態の部活動は回避すべきです。

部員内で、レギュラーメンバーとそれ以外のメンバーとの人間的差別も強くあります。

外からは見えませんが、陰湿ないじめもあります。そうした空気の部活動の部員は、顧問以外の大人に対して、全体的に横柄です。

顧問、または顧問の前で「だけ」やたら声の大きいあいさつをします。レギュラーメンバー選抜の権力を持っているので、ここは彼らにとって死活問題です。

顧問のいないところで、さりげなく「近所のおばさん」みたいな感じで部員にあいさつをしてみると、感覚的にわかるかもしれません。

これらの悪条件を満たせば、人間関係についてはかなりよろしくないと判断していいでしょう。

逆に顧問と生徒、先輩後輩の関係が良好であれば、部活としてはほぼ間違いないです。

今の時代、保護者ネットワークで簡単にわかることと思います。ただし、部活動内で立場の低い(競技力が低い)子供とその親は、不満があっても周りに言えないことも多いので、その点は注意が必要です。

(3)部活動以外の活動状況について

学習面や生活面がなおざりになっている場合も危ないです。

生徒に「部活さえきちんとやっていればいい」と豪語する顧問も実際に存在します。

良い顧問ならば、部活動も学習面も生活面も同様に重視し、家庭での過ごし方や社会への奉仕活動についても指導しています。

大会に参加した後に会場のごみ拾いやトイレ掃除をして帰る「本物の強豪校」もあります。こういった学校は、部員の普段のマナー面が際立っていいのが特徴です。競技を楽しむ「競争心」と共に「共創心」も育んでいます。

マイナーなスポーツや文化活動であっても、本当にいい部活動をしているところも多くあるので、単純な人気などにとらわれずに選ぶことが重要です。

以上、3ポイントを列挙しましたが、正直に申し上げると、最後はいい部活動か否かは「顧問次第」というところです。人間的に豊かな、良い顧問の先生のもとで部活動ができたら、子供にとっては最高の教育の場になり得ます。

そして、すでに部活動で子供を見てもらっている親の方には、目の前の顧問の頑張りを肯定的に見て、応援していただきだいというのが本音です。

■こんな部活動なら子供も教員もハッピー

教員は24時間、教員をすることはできません。

部活動の「土日祝日休みなし」の常態化をどう変えていけばいいのか。生徒は疲労困憊し、教員も“勤務時間外”にもかかわらず、顧問として実質強制的労働させられている現状は、異常な状態です。ルール違反だとも言えます。

非常時とか一部例外地域への特例ならまだしも、全国各地の大部分の学校の教員が何十年もごく僅かな手当による常時超過勤務状態でいいはずがない、と私は考えています。

もちろん、部活動自体は決して悪ではありません。

土日に部活に行く子供にも親にも、もちろん顧問にも何の罪もないのです。部活は本来、子供の成長にとって大変有益な存在です。また、部活動こそに生き甲斐を感じて、情熱を注ぐ教員も多くいます。そこを否定する気は毛頭ありません。

本来ならば、やりたい人がやりたいだけやれるシステムであれば何の問題もないのです。

野放図状態の現状の部活動システムをどうすればいいのか?

実例を挙げます。

私が知っているある地域には、陸上をやりたい子供と教員がいて、地域の人が参加できる「陸上クラブ」があります。土日の活動が中心で、教員は顧問としても選手としても参加できます。

通常、顧問となれば自己都合で自由には休めませんが、地域のクラブ会員であればそれも可能です。逆に、徹底的に通って、燃えに燃えて毎週子供を指導することもできます。

そのクラブには自分以外にも陸上指導のスペシャリストが常駐していているので、顧問は自分を含め複数いることになる。当然、指導に関してもばっちり。各種大会に出場して、ハイレベルな中で切磋琢磨できる。実際、そういう環境の実例は、ここのところスポーツに限らず全国に増えてきています。

社会教育への移行という見方もできますが、部活動自体は別として存在してもいいのです。この例だと、子供は中学校内では陸上部に所属し、平日の練習をしています。ただその力を発揮する場が、外にもあっていいという例です。

また別の例として、土日祝日の部活動自体を制限している市町村や学校も、全国的にかなりの数が出てきています。これには各首長や校長が周囲の反対を押し切って断行する必要があります。実施以降もしばらくの間、反発されることは必至ですが、これも一案でしょう。

そうした思い切った改革を断行した自治体の行く末を今後も見守っていきたいところです。

結論として私が声を大にしたいのは、部活動は教員にとって、仕事の一部となっている以上、「時間の契約」というルールは守った方がいいということ。部活動のあり方は、日本社会のあり方にも関係する重要な問題をはらんでいると考えます。

(国立大学附属学校 小学校教諭 松尾 英明)