「ポケットモンスター縮めてポケモン」

参考:バック・トゥ・ルーツの『ポケモン』、夏休み興行でスタートダッシュ!

 このセリフを聞いたことがない人は、筆者と同じ20代にはほとんどいないのではないだろうか。1996年に発売されたゲームボーイ用ソフト『ポケットモンスター赤・緑』からスタートしたポケモンシリーズ。1998年からは劇場版映画も製作されており、現在公開されている映画『劇場版ポケットモンスター キミにきめた!』は、記念すべき20作品目となった。アニメ版の第1話で描かれたピカチュウとの出会いと、1話以降は現れることのなかったホウオウを追う模様が描かれる、メモリアルな内容となっている。ポケモンとの友情を描く王道的なストーリー展開で、子どもたちが楽しめる作品であると同時に、ポケモン第一世代ともいえる20〜30代にとっては、目頭の熱くなる作品となっている。

 まず、我々の世代を感慨深くさせるのは、子どもの頃に観た名シーンが新たに描きなおされているところだ。映画序盤、オニスズメにサトシとピカチュウが襲われるシーンは、ほぼオリジナルアニメ版と同様の流れになっていて、あのオニスズメの大群を現在のグラフィック技術で表現されていることに、嬉しさが込み上げてくる。今でこそサトシを1番の友と慕い、懐いているピカチュウだが、初期のツンツンした姿も可愛いものだ。劇場で観ていたアニメ1話を知らない子供たちが、当初のサトシとピカチュウの関係性に驚いた顔でスクリーンを観ていたのも印象的だった。

 中盤からは、伝説の言い伝えを頼りに、サトシらがホウオウがいるとされるテンセイ山を目指していく。そこで「弱いポケモンはいらない」と強さだけを求める少年・クロスと出会い、ぶつかり合うことで、ポケモンとの友情を1番に考えるサトシがまたひとつ成長するのである。これまでの映画やアニメでも描かれてきた王道的な構成ではあるが、だからこそ、改めてサトシの純粋でまっすぐな気持ちに胸を打たれてしまう。小さい頃に熱を注ぎ、熱中させてくれたポケモンは、我々にどんなメッセージを送ってくれていたのか。大人になった今はそれが良くわかるし、忘れかけていた大切な気持ちを思い出させてさえくれる。夢中になれるものがあればこそ、人生は虹色に輝くのだ。

 本作は、従来の劇場版ポケモンの教科書とも言える王道を踏まえ、あくまでもターゲットを少年少女にしつつも、かつてポケモンに熱中した20〜30代にもフォーカスを当てた作品に仕上がっている。ここ数年、ポケモンは興行収入が減少し続けていた。その要因はいろいろとあるのだろうが、『デジモンアドベンチャー』シリーズや『妖怪ウォッチ』シリーズといった、強力なライバルの出現もその一因であろう。『デジモンアドベンチャー』の劇場版は、複雑な設定と心理描写を盛り込むことで、大人世代へのコンタクトを図っている。一方の『妖怪ウォッチ』の劇場版も、各キャラクターの背景に大人が感情移入できる設定を盛り込むなどして、親子二代で楽しめるシリーズとして人気を博してきた。伸び悩んでいたポケモンシリーズにとって、大人世代の取り込みは大きな課題だったといえよう。

 そして今作『劇場版ポケットモンスター キミにきめた!』は、かつてポケモンに夢中になった世代へとロックオンし、見事命中したと言っていいだろう。20年間愛され続けてきたシリーズの底力が、ここにきて存分に発揮されているのである。動員数も公開1週目では『銀魂』、『カーズ/クロスロード』、「パイレーツ・オブ・カリビアン 最後の海賊」などの人気作をおさえて1位を獲得。前作の『ボルケニオンと機巧のマギアナ』では初週第3位だっただけに、今作には多くのファンが期待していたことが伺える。

 20年間、描かれ続けてきたサトシとピカチュウの友情はいつのまにか、私たちに安心感と勇気を与えてくれる存在になっている。お互いに最高と思えるパートナーを見つけ、喜怒哀楽を分かち合い、信頼しあっている、そんな2人(1人と1匹)をずっと観てきたからこそ、私を含めた20代は“共に成長してきた”と感じ、より感情移入することができるのではないだろうか。固い友情に結ばれたサトシとピカチュウを見て、改めて周囲の人々との関係性に思いを馳せた方も少なくないだろう。今後10年、20年先も愛される定番コンテンツになることを予感させる、ポケモン史に残る傑作といっても過言ではないはずだ。

 本編の最後には来年の劇場版公開が決定したと告知されていた。周年作品として集大成的な本作だっただけに、仕切りなおしとなる21作品目はどのようなものになるのか、今から楽しみである。(馬場翔大)