女性の管理職が増えない原因は何だろうか。


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女性管理職の育成に取り組む企業が増加

 女性管理職の育成に取り組む企業が増えている。

 少子化による人材不足への備えや、ダイバーシティ&インクル―ジョンが組織の活性化に寄与するとの認識が広がってきたことに加え、女性活躍推進法(2016年4月1日全面施行)により、常時雇用する労働者が301人以上の企業に数値目標を含む行動計画の策定が義務付けられたことも企業の背中を押している。

 女性活躍推進法に基づく企業の行動計画の多くは、厚生労働省の「女性の活躍推進企業データベース」で見ることができる。そこで各社の行動計画を見ると、多くの企業で女性管理職の育成に関わる項目が数値目標として挙げられている。

 数値目標達成のためのアクションとして、各社が女性の育成計画の策定、入社早期からの育成、選抜研修の実施、メンター制度、管理職向け研修、女性間の交流や情報交換機会の提供、働き方の見直し(長時間労働是正、テレワーク導入など)などの取り組みを行うとしている。

女性が昇進に躊躇する理由

 それでは今後、企業の取り組みにより女性管理職が順調に増えていくと考えてよいのだろうか。この点について筆者は、現状のままでは期待されるほどに女性管理職が増えていかない懸念があると考えている。なぜなら、女性が管理職を希望しにくい状況を作りだしている、大きな要因が未だ改善されずにいるためである。

 労働政策研究・研修機構「男女正社員のキャリアと両立支援に関する調査」(2013)では、係長・主任までの一般従業員かつ総合職の女性のうち、課長相当職以上への昇進希望がない人(母集団の83%)に、その理由を複数回答で尋ねている。

 これによると、昇進を希望しない理由として約半数(46%)が「仕事と家庭の両立が困難になる」ことを挙げており、「責任が重くなる」(28%)、「周りに同性の管理職がいない」(26%)、「メリットがない、または少ない」(26%)、「自分には能力がない」(14%)といった他の回答を引き離している。

 このように時間外労働、夜間・休日労働が前提の管理職の働き方は、女性から見た管理職の仕事の魅力を低下させ、女性に昇進をためらわせている。

図表1:総合職女性が課長相当職以上への昇進を希望しない理由
(注)常用労働者300人以上の企業で働く一般労働者かつ総合職の女性。13の回答項目のうち複数回答での回答割合の高い順に5つの項目と回答割合を提示。
(資料)労働政策研究・研修機構「」(2013年)


管理職は「仕事と家庭」を両立できるのか?

 それでは管理職の働き方は、どの程度「仕事と家庭の両立が困難」なのだろうか。仕事と家庭の両立しやすさを左右する要因を考えると、(1)労働時間の長さ、(2)柔軟な働き方の活用可否、の2つであると考えられる。

 労働時間が長ければ仕事と家庭との両立は難しくなるが、働く時間帯を家族の都合に合わせて調整できたり、在宅勤務などで通勤時間を節約できたりすれば、労働時間の長さの一部はカバーできる。管理職の働き方が本当に「両立が困難」なのかどうかは、この2点を検証することで見えてくると考えられる。

 なお、筆者が所属するリクルートワークス研究所では、全国の人の働き方を追跡調査する「全国就業実態パネル調査」を2016年度より実施している。そこで以下では、同調査の2017年度のデータから正規雇用者の働き方に着目し、(1)管理職で仕事と家庭の両立が困難なほど長時間働く人はどの程度いるのか、(2)管理職は柔軟な働き方をどの程度活用できているのかを検証しよう。

<管理職の労働時間>

 まず、正規雇用者のうち週50時間以上働く人の割合を役職別に見たものが図表2だ。

 ここで「週50時間以上」を基準としたのには理由がある。例えば、週所定労働時間が法定労働時間40時間(9時〜18時、休憩1時間)の事業所で平日毎日2時間ほど時間外労働をすれば週50時間労働となるが、そのためには毎晩8時まで業務に従事することになる。

 平均的な通勤時間を考えると、帰宅は9時頃となり、子どもの夕食には到底間に合わない。週50時間以上働く場合、子どものケアと仕事を両立する難易度は相当上がる。

 図表2に戻って、週50時間以上働く人の割合を見てみよう。まず、全体では、役職なしに対して役職ありの人でこの割合が高い。具体的には、役職なしで23%であるのに対し、主任・係長クラスで32%、課長クラスで34%、部長クラスで28%である。

 次に従業員規模別に見ると、同様に役職ありで週50時間以上働く人の割合が高く、特に1000〜4999人および5000人以上の企業の課長クラスでは約4割であった。役職なしと比べて、管理職の働き方は「仕事と家庭の両立が困難」になりやすい状況となっている可能性がある。

図表2:役職別・週50時間以上働く人の割合(正規雇用者、%)
(注)対象は正規雇用者。役職者は各役職と同待遇の専門職を除く。斜体の数字はサンプル数が100未満である。
(出所)リクルートワークス研究所「」


<管理職の働き方の柔軟性>

 次に、柔軟な働き方の活用状況を確認しよう。

 2016年12月の仕事について、「勤務時間を選ぶことができた」に「あてはまる」または「どちらかといえばあてはまる」と回答した人は、役職なしで11%、係長・主任クラスで12%、課長クラスで13%、部長クラスで18%であった。

 また、2016年12月の仕事について「勤務場所を選ぶことができた」に「あてはまる」と回答した人は役職なしで8%、係長・主任クラスで7%、課長クラスで9%、部長クラスで11%であった。役職の有無にかかわらず、正規雇用者のうち勤務時間や働く場所を選択できる柔軟な働き方をする人は少数派と言える。

図表3:役職別・柔軟な働き方を選ぶことができた人の割合(正規雇用者、%)
(注)1.対象は正規雇用者。役職者は各役職と同待遇の専門職を除く。2.「勤務時間を選ぶことができた」「働く場所を選ぶことができた」とは、質問に「あてはまる」または「どちらかといえばあてはまる」と回答した人の割合。
(出所)リクルートワークス研究所「」


管理職の働き方改革を急げ

 以上を総合すると、管理職は、仕事と家庭の両立が困難なほどの時間を働く人の割合が、役職なしの人に対して高く、同時に管理職のうち柔軟な働き方をする人は少数である。

 中でも大企業の課長職では仕事と家庭の両立が困難なほどの時間を働く人の割合が高い傾向にあり、とりわけ「仕事と家庭の両立が困難」な状況になっている懸念がある。

 このようなデータを見る限り、「管理職に昇進すると仕事と家庭の両立が困難になる」という懸念には一理がある。企業の女性管理職の育成策が本当に効果を発揮するためには、管理職の働き方を魅力的なものとし、女性が躊躇なく昇進に必要な経験や知識を蓄積できる環境を作る必要があるだろう。

筆者:大嶋 寧子