日本テレビ系『過保護のカホコ』番組公式サイトより

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 遊川和彦脚本の『過保護のカホコ』(日本テレビ系)も第4話まできました。視聴率は11.1%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)と、やや落としたものの2ケタキープです。この出来で、なんで落ちるかね〜、と思うくらい面白いのだけど。

(前回までのレビューはこちらから http://www.cyzo.com/mt/mt-search.fcgi?IncludeBlogs=1&tag=%E9%81%8E%E4%BF%9D%E8%AD%B7%E3%81%AE%E3%82%AB%E3%83%9B%E3%82%B3%20AND%20%E3%81%A9%E3%82%89%E3%81%BE%E3%81%A3%E5%AD%90&limit=50)

 さて、今回は時任三郎演じるパパのお話なので、パパ目線で振り返ってみます。

 前回、初めて人に恋をして、その相手をママ(黒木瞳)にボロクソにけなされてブチ切れちゃった愛娘のカホコ(高畑充希)。見たこともない顔で「これ以上、カホコの邪魔しないで!」と絶叫すると、家を飛び出して行ってしまいました。

 数時間後、マンションの下に降りてみると、エントランスのところにママがいました。どうやらカホコを探しに出たようですが、「ゴミ捨てに出た」とか言って、部屋に戻ってしまいます。見ると、汗だくのカホコがそこに佇んでいました。

 とりあえず家に連れ帰って寝かしつけましたが、翌朝から我が家では前代未聞の冷戦が始まります。なんと、朝なのにママがカホコを起こしません。ママはいつも通りカホコの服を選んであげますが、あろうことかカホコは、好きになった麦野くん(竹内涼真)のために買った緑のワンピースを着て起きてきます。ママは朝ごはんこそ作ってあげてるし、カホコもそれを食べてはいるけど、お互いパパを通してしか会話をしません。いつも通りママは駅までカホコとパパを車で送ってくれるものの、車内の雰囲気は最悪。

「ママがいっくら反対しても、絶対カホコ付き合うからね、麦野くんと!」

 駅に着くと、カホコはそう言い残して車を降ります。もう耐えられない。

 その夜の帰路、マンションに続く石段に、カホコの姿を見つけました。カホコはまるで、魂が抜けたように視線が定まらず、フラッフラです。

 家に着くと、ママの機嫌も直っていません。それでもカホコの大好物であるオムライスを作って待っていますが、カホコは「ママに言っといて、ご飯いらないって」と言い残して部屋にこもってしまいます。その前に、もう一言ありました。

「ついでに言っといて、カホコ、フラれたから安心してって」

 どうやらカホコは、麦野くんにフラれたようです。カホコの部屋からは、すすり泣く声が漏れてきます。一方ママはゴキゲンな鼻歌を一節やると、顔面にパックをして寝てしまいました。

 カホコの部屋に入ると、カホコは床にうずくまって、まだ泣いていました。しかし話を聞くと、フラれたショックで落ち込んでいるのではなく、フラれてショックでもう二度とご飯なんか食べたくないと思っていたのに、お腹がぺこぺこになってしまったことが悲しいのだそうです。ママにバレないようにコンビニでオムライスなどを買ってきて食べさせます。そのゴミを捨てようとしているところをママに見つかりますが、特に咎められることはありませんでした。しかし、ママはこんなことを言うのです。

「過保護なんだから、パパは」

 こういうとき、パパはパウエル長官の言葉を思い出すのでした。

「大事なのはいつも冷静でいることと親切でいることだ」

 冷戦が続く日曜日。部屋にこもりきりのカホコを、ママの実家に連れて行くことにしました。何しろママの方のじいじとばあばは、無条件にカホコを「かわいいかわいい」と肯定してくれる貴重な存在。カホコもそれを自覚していて、ネットで調べた失恋からの立ち直り方に「自分を肯定してくれる人と会って、自信を取り戻す」とも書いてあったので、着いて行くことにします。

 しかし、ばあばがなんだか元気がありません。じいじが呼んだママの妹夫婦2組も、ちょっと雰囲気が悪いです。せっかくカホコを元気づけようと思って連れてきたのに……と思っていたら、カホコが「ビールを飲んでみたい」と言い出しました。一杯だけのつもりが、パパも含めてみなさんいろいろ溜まっていたようで、全員泥酔してしまいました。勢い、カホコは酔っ払ったままじいじの家を飛び出していきます。追いかけようにも、カホコは脚が速い!

 その晩、カホコは酔いつぶれたまま、麦野くんに背負われて帰宅しました。何があったかわかりませんが、カホコにはどうしても麦野くんが必要なようです。

 カホコとママの冷戦だけでも耐えられないのに、パパの実家でも面倒事が。出戻りの妹・教子(濱田マリ)が300万円の借金を作っていて、もう家庭内はボロボロです。パパの中で、危機感が募ります。

「このままだと我が家も、こんなことになるぞ……」

 パパ、家族のために一念発起です。恥を忍んで大学に麦野くんを訪ねます。そして、「友だちでいいから、カホコにまた会ってやってくれ」「正直言うと、妻と娘が口をきかずにこのままずっと最悪の雰囲気を続けるのが耐えられなくて」と頭を下げます。

 麦野くんは、快く受け入れてくれました。やっぱり、自分は家族の大黒柱なのだ。これからは、家族でなんでもよく話し合って生きていこう。そして、家族を幸せにしてやろう。パパはそう思ったはずです。

 しかし、家に帰るとママとカホコはもう仲直りしていました。2人でホームビデオを見ながら、カホコは何事もなかったかのように「ピカソの画集を一緒に買いに行ってほしい」と笑顔を見せますし、ママはママで「そのグラス使わないでって何回言えばわかるの?」とか「明日は夕飯いるの?」とか、こっちを見もしないで言い放ってきます。

 ああ、パパ、キレちゃった。

 思えば、そうだ。専業主婦のくせに前の日に言わなきゃ夕飯が出てこないってどういうことだ。何か買ってほしいときだけ甘えてくるこの娘はいったいなんなんだ。俺は単なるスポンサーか。なんでそんな顔してられんだ。お前たちが愛しているのは俺が稼いでくる金で、俺じゃないんだ。俺はもう嫌だ、疲れた!


■それはパパが望んでいたはずの幸せな日常


 パパは、ママとカホコに仲直りしてほしいと願っていたはずでした。なのに、お望み通りに2人が仲直りしたら、キレちゃった。

 ママもカホコも、別にパパの感情を逆なですることを言ったわけではありません。普通に、この家の女性が行ってきた振る舞いをしただけです。

 つまり、いよいよ本音が出ちゃったわけです。

 このシーンは、パパがずっと本音を言わずに生きてきたことを表現しています。本音を言わないことで保ってきた平穏な家庭、幸せな日々、変わらない日常、そういうものがカホコの初恋とママへの初謀反によって一時的に麻痺しました。パパには、その麻痺を自分の手で改善したという強烈な自負が生まれます。俺が家族を守ったのだ、と。その自負が踏みにじられたことが、許せなかったのです。

 だけどママの側からすれば、パパがキレてる意味はわからないでしょう。そんなのは、専業主婦として、これまでずっと自分が当たり前にやってきたことだからです。平穏な家庭、幸せな日々、変わらない日常が、ママのたゆまぬ努力によって守られていたことに、パパは気づいていません。だからパパは2人のケンカが「耐えられない」し、ママは「別に平気」なのです。

 遊川さんの脚本は、カホコとママの断絶を「本当の破綻」にならないように丁寧に描きました。ご飯も作るし、駅までも送る。カホコの留守には、あの緑のワンピースにだってアイロンをかけてあげる。今回描かれた母娘ケンカの顛末は、もっとも2人の関係が悪化している時点でさえ、一般的に見れば極めて良好で、幸せな家庭環境です。むしろ、一時的にママの過保護が止んで、「ごく一般的な仲良し中流家庭(たまにケンカもするし)」くらいのところに、注意深く着地させているように見えます。

 パパは、そんな普通の状態を「耐えられない」と感じて奔走し、頑張って頑張って守り切ったと思ったら、目の前には許しがたい光景が広がっていた。それまでずっと幸せだと思っていた光景が、幸せじゃなかった。これ、超怖いです。本当の意味でホラーですよ。


■一方そのころ、カホコの初恋は


 パパの見ていないところでカホコは失恋し、それでも麦野くんに「お前が必要だ」と言われて人生に意味を見出したりするという、大変正しい成長が情感たっぷり素敵な感じで描かれましたが、このくだりはホントにいいので、TVerとかで実際に見たらいいと思いますよ。来週も楽しみです。
(文=どらまっ子AKIちゃん)