オランダで順調に調整を進めている堂安。このままフローニンヘンで定位置を掴み、アピールし続ければ、日本代表でも活躍が期待できる。 (C) SOCCER DIGEST

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 フローニンヘンにとってプレシーズン最後の試合となった現地時間8月2日のレアル・ソシエダ戦で、堂安律は先発メンバーとしてピッチに立った。
 
 相手は昨シーズンのリーガ・エスパニョーラ6位のチームとあって、フローニンヘンは自分たちのサッカーができず、攻撃では長身ストライカーのラルス・フェルトワイクへのロングボールに頼るしかなかった。
 
 4-4-2の左サイドハーフを任された堂安だが、自陣に戻って守備に追われる時間が長く、45分間でお役御免となった。チームの結果も前後半に1点ずつ失って0-2と完敗。地元メディアは、「フローニンヘンが勝てる見込みのなかった試合」と試合後に書き綴った。
 
 それでも堂安は、10日前に行なわれたグラナダ戦と比べ、「個人的には今日の試合の方が良かったし、出来の良い前半だったかなと思います」と、R・ソシエダとの一戦で掴んだ手応えを口にした。
 
 浪速の俊英が手応えを語った理由はいくつかある。まず一つ目は、チームが守勢に回っても、数少ないチャンスのなかでビッグプレーを創出できていたことだろう。
 
 15分、右サイドに広く開いた堂安は、一度、イェスパー・ドルストにボールを預けてペナルティーエリア内に走り込む。すると、そこにしっかりとスルーパスが供給され、受けた日本代表MFはさらにDFを“裏街道”のトリックでかわし、相手GKと1対1になってシュートを放った。
 
 この絶好機は惜しくも防がれてしまったが、試合後に堂安が「あれが僕の特徴です」と振り返った通り、足技で自らを表現し切った理想的なプレーだった。
 
 二つ目は守備での貢献だ。R・ソシエダに攻められる時間が少なくなかったこの試合で、堂安は相手アタッカーの縦に抜こうとするドリブルや、インサイドにカットインを試みようとするドリブルをしっかり止め、さらにスルーパスもきっちりと読んで、インターセプトしていた。
 
 聞けば、フローニンヘンのタフな練習の中で、球際の強さが磨かれていっているという。
 
「最近、相手のボールを取り切れるようになってきましたね。今日は球際のところなんかも強く行けていたのかなと思います」
 
 そして、三つ目は何より大事なのだが、チームメイトが堂安にパスを出してくれるようになった点だ。当人も、次のように収穫を語っている。
 
「試合を重ねるごとに、パスが来る回数は増えてきてますね。やっぱり、パスが来ないと自分が活きない。今日の試合を見てもらっても分かるように、前の試合より全然、ボールが来るようになってるし、ボールに触る回数も増えてる。そこが一番の収穫ですかね」
 
 元々、堂安は、「アジア人の自分がポンっとオランダのチームに入っても、簡単には味方がパスを出してはくれないだろう」と覚悟していた。そうした心づもりをしつつ、何とかピッチ内外を問わず、チームに馴染もうと努力し、パスを出してもらえる回数を増やしていったのだ。
 それでもR・ソシエダ戦では、自分がフリーだったのにもかかわらず、チームメイトのミムン・マヒが強引にドリブル突破を試みて、チャンスを逸した場面もあった。
 
「マヒとは一緒に交代したので、自分からロッカーで言いました。ジェスチャーで『なんでだよ?』って顔をすれば向こうも感じると思います。それがネガティブなアクションじゃなくて、ポジティブに捉えてもらえるようにしてます」
 
 今は片言の英語とジェスチャーで、仲間に自分の気持ちと要求を伝えているが、週4回の「地獄の(英語の)レッスン」(本人談)の成果が少しずつ表われてくるだろう。
 
 現地時間7月22日のグラナダ戦(△2-2)、同月29日のエメン戦(〇4-3)、そしてR・ソシエダ戦と、堂安はプレシーズン最後の3試合全てにスタメン出場した。開幕に向けて、順調に調整できていると言えるだろう。
 
「交代選手も予め決まっていそうだったので、特に(途中で)代えられたことは気にしてません。まあ、手応えありの、開幕までの試合だったのかなと思ってます」
 
 こうして迎える8月13日、ヘーレンフェーンとのエールディビジ開幕戦には、両親も日本から応援に駆けつけるという。
 
「点を獲れたらベストです。多分、両親も安心したいと思うので、そこで活躍する姿を見せて、ファンから愛されているようなところを見せられたら、喜ぶんじゃないかと思います」
 
 そのしっかりした言葉遣いと無邪気な笑顔に、19歳の素顔が窺えた。
 
取材・文:中田 徹