英ロンドンのバッキンガム宮殿で行われた大英帝国勲章授与式典に出席した(左から)ヴァレリー・アモス、エドワード・エニンフル、ナオミ・キャンベル(2016年10月27日撮影)。(c)AFP=時事/AFPBB News

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【AFP=時事】1日に英版「ヴォーグ」(VOGUE)の編集長に就任したエドワード・エニンフル(Edward Enninful)は、写真共有アプリの「スナップチャット(Snapchat)」版も配信していくと発表した。「ファッションバイブル」としての権威を失いつつあると元エディターから通告された、この雑誌に強さを取り戻すためだ。

 45歳の元スタイリストであるエニンフルは、101年の歴史を持つ「ヴォーグ」にとって初めての男性であり、初めての黒人、初めてのゲイ編集長となる。政治的な行動主義や刺激的な撮影、大物業界人との交友関係でも知られる存在だ。

 エニンフルは仲のいい友人であるモデルのナオミ・キャンベル(Naomi Campbell)や受賞歴の多い映画監督でありアーティストのスティーブ・マックイーン(Steve McQueen)、米ヴォーグのグレース・コディントン(Grace Coddington)らを含む新しいチームをすぐさま編成し、新しいスナップチャット版「ヴォーグ」もローンチした。「英版『ヴォーグ』は、創造性と革新を築いてきた素晴らしい雑誌だ」とエニンフルは語る。「読者のために今後もわくわくするような美しい雑誌をプロデュースしていくことが楽しみでならない」

 彼は編集長初日に、スナップチャットのDiscoverプラットフォームをデビューさせた。新しい読者層を獲得するため週に3回、アプリ上でコンテンツを配信していく。

 25年間、英版「ヴォーグ」を率いた前任のアレクサンドラ・シュルマン(Alexandra Shulman)とはまったく違った印象を与えるこの新編集長のもと、ほかにも変化が予想される。シュルマンは地に足のついた印象でスポットライトを避けることが多かったが、エニンフルはSNSに彼のセレブリティ・ライフスタイルを定期的に投稿する。

「ヴォーグ」の出版社である「コンデナスト・インターナショナル(Conde Nast International)」の会長兼最高経営責任者(CEO)であるジョナサン・ニューハウス(Jonathan Newhouse)は、エニンフルを「文化的な時代精神を形作る、ファッション界やハリウッド、音楽業界に大きな影響を与える存在」と描写した。

■多くの人にとっては無関係なファッション

 4月にエニンフルの就任が発表された後、何人かの編集スタッフは「ヴォーグ」を離れた。ほぼ白人で中流階級の女性たちが雑誌の顔となっている環境が変わるため、「お嬢様たちの出国」と報じた新聞紙もある。しかし解雇されたうちの1人であるファッションディレクターのルシンダ・チェインバーズ(Lucinda Chambers)は雑誌を何年も読んでいなかったことを認め、変化する必要があったことを受け入れた。ファッション撮影でフィーチャーされる服は「ばかばかしいほど高価で、ほとんどの人たちにとって無関係だ」と語り、「ヴォーグ」はその権威を失ったと警告した。

 業界サイトVestoj.comのインタビューでは、「ファッション界で我々はつねに人々に必要ないものを買わせようとしている」と語る。「我々はこれ以上バッグやシャツ、靴を必要としない。だから甘い言葉で釣ったり、脅したり、奨励したりして人々に物を買わせ続けている」

■「ヴォーグ」ブランドを生き返らせるために

 ガーナ(Ghana)で生まれ、ロンドン(London)西部で育った5人兄弟のエニンフルは、16歳のときにモデルとしてスカウトされ、スタイリストのキャリアをスタートさせた。18歳で英国のユースカルチャー雑誌「i-D」に参加し、業界で最年少のファッションディレクターに。その後、米版「ヴォーグ」で働き、伊版「ヴォーグ」のコントリビューティングエディターとなる。2011年にはニューヨークで「W」マガジンのクリエイティブ&ファッションディレクターに就任した。

 エニンフルは長年、ファッションにおける広い多様性を追い求めており、2008年には伊版「ヴォーグ」で画期的な「オールブラック」な号を発表した。また女優のルピタ・ニョンゴ(Lupita Nyong'o)や、ラッパーからプロデューサーへと転身したディディ(Diddy)を含む黒人スターをフィーチャーした来年の「ピレリ(Pirelli)」カレンダーもスタイリング。さらに「私は移民(I am an immigrant)」と題された、ドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領による入国制限令に反対するショートフィルムの編成も支援し、81人のファッションアイコンたちを登場させている。

 ファッション界における貢献により大英帝国勲章(OBE)が授与された際は、ナオミ・キャンベルやケイト・モス(Kate Moss)が彼のために大きなパーティーを催した。「セレブリティやソーシャルメディアにおける姿勢を見ると、エニンフルは伝統的なファッション体制と次世代への架け橋のようだ」とファッションサイトの「ビジネス・オブ・ファッション(Business of Fashion)」は昨年の記事で述べている。

 そして、こうも付け加える。「しかしながらエニンフルの一番の能力は、パワフルで記憶に残るイメージを生み出すことだ。それは若い世代の読者とフォロワーたちのためにも、『ヴォーグ』ブランドを生き返らせることに大いに役立つだろう」
【翻訳編集】AFPBB News