VR「消火体験シミュレータ」の表示映像イメージ(写真:NECの発表資料より)

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 VR(Virtual Reality)消火体験シミュレータを東京防災設備保守協会が採用。リアルな消火訓練の決め手はUIであろうか。

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 VRの最先端技術では、視覚、聴覚、触覚、臭覚を仮想現実として体験できる。これに味覚が加われば、実空間と仮想空間との区別も難しいのであろう。VRの没入感を体験している人の姿は、周りの聴衆には滑稽に映るほど、仮想空間に反応する。

 他方、VRの適用分野に目を向けると、技術的に大きな可能性を秘めているが、パッとしない。中高年以上の読者には、21世紀初頭の携帯音楽プレーヤやPDA端末の技術的な可能性とヒット商品が生まれなかった当時の状況が、現在のVRの状況とダブルのではないだろうか。アップルのみが、iPod、iPhoneと市場を牽引し、今日に至る。

 当時のiPodが他の携帯音楽プレーヤに比べて斬新だったことは、iTunesによる一曲毎の購入(競争ルールの変更)、音声圧縮による20倍の高速化、ワンタッチの操作であろうか。既存技術を活用したUIの徹底追及であった。VR適用が有望視されるゲーム、医療、教育、自動車、販売などの分野で、UIを再度吟味する必要があるのであろう。

●防災訓練の現状と課題

 東日本大震災などの大災害の経験と、今後発生が予想される首都直下地震や南海トラフ地震などへの対応から、地域・学校・企業などで災害対策に向けた防災訓練の必要性が高まっている。防災訓練の一つに消火体験があるが、その主流は、訓練用水消火器を用いて火災現場を模擬したもので、屋外や防災体験施設内で行われる。また、訓練用水消火器は粉末や液剤を噴射する実際の消火器とは異なるため、消火器の操作要領を習得できる一方で、消火器による火の消え方などを再現した消火体験は困難である。

●VR(NEC、消火体験シミュレータ:特許出願中)のテクノロジー

 今回、NECが開発した「消火体験シミュレータ」は、既存のスマートフォンとHMD(Head Mounted Display)を活用し、東京防災設備保守協会監修によるリアルな消防訓練を体験する。訓練用消火器のホース部分にコントローラを装着すると、VR映像上でホースの向きを変えながら消火剤を放射して消火を行うなどのリアルな体験ができる。また、体験者がHMDで見ている映像を外部モニターにも同時に表示し、指導者によるアドバイスや、スタッフによる消火体験の進行確認を効率的に行うという。

 特徴的なことは、体験者はHMD装着時でもVR映像からスマートフォンのカメラを通して、現実の風景を確認できることである。

 安全な訓練の事前準備と仮想区間でのリアルな消火訓練は、UIの重要な要素であろう。訓練では、準備や指導者との会話などの場面とVR体験が交互に入れ替る。このUIの徹底追及とアプリの充実が、訓練用VRの先駆けとなると考える。