天才テリー伊藤対談「谷 隼人」(2)周りの人たちって大変でしたよね?

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テリー でもね、確かに健さんのすごさはわかっているんですけど、実際に会ったり、あとでいろいろ話を聞くと、周りの人は大変だったんだなと思って。

谷 まあ、確かにいろいろありましたけどね。

テリー 実は、僕がよく行く代官山の洋服屋が、たまたま健さんも懇意にしていたお店だったらしくて、ある日行ったら店内に健さんがいらしたんですよ。で、僕を見つけたら立ち上がって、つかつかと歩み寄ってきて、例の感じで「高倉です」って深々と頭を下げて挨拶されちゃって。

谷 それがまさに健さんじゃないですか!

テリー いや、健さんにそんなことされちゃったら、こっちも気を遣うし、とりあえず直立不動でいるしかないじゃないですか。大スターは、ちっぽけな僕のことなんか無視してくれていいんですよ。

谷 そんなこと、健さんは絶対にしませんよ。

テリー あと、もはや伝説の「雪山での撮影でストーブにあたらない」話もそうですよ。「スタッフが寒い中で一生懸命働いているのに、俺だけストーブにあたってられるか」という、一見いい話なんですけど、スターの健さんがあたらなかったら誰もあたれないじゃないですか。

谷 「網走番外地」のロケの時は、もちろん、あたれませんでしたよ。

テリー でしょう。それ、他人のことをちっとも思ってないじゃないですか。

谷 健さんは、そうは言っても衣装の下に暖かいインナーをちゃんと着てるんですよ。俺らはペラッペラの薄い衣装だけだから、もうキツかった(苦笑)。

テリー それってある意味、無言の圧力になっちゃってますよ。その理屈でいくと、健さんが夜遅くまで働いてたら、周りの出演者やスタッフも帰れないじゃないですか。

谷 いや、帰れないどころじゃないですよ。ホテルに帰っても、何しろコーヒーばっかり飲んでて寝ないんですから。健さん、1日に30杯以上飲むんです。

テリー アハハハハ、いちいちやっかいじゃないですか!

谷 でもね、テリーさん。それは俺たちが健さんを尊敬しているっていう前提があっての苦労ですから。俺が初めて健さんに出会ったのは「網走番外地荒野の対決」、俺が東映に入って2本目の撮影の時です。

テリー 谷さんもまだ駆け出しだ。

谷 19歳の時です。その撮影が全部終わって「ありがとうございました!」って挨拶して、パッと顔を上げたら健さんがいて「お疲れ。お前、金あるか」って言うんですよ。で、「あります!」と答えたら、「バカ野郎、格好つけんな」と言って2万円いただいたんですよ。言っときますけど、昭和41年の2万円ですからね。

テリー その頃の2万円ってえらい大金ですね。そりゃポンと渡されたら、ビックリしちゃうな。

谷 「うわ〜っ!」と思いましたよ。正直言うと、冷蔵庫の支払いとかいろいろあるうえに、貯金もありませんでしたから(笑)。しかも、その渡し方がカッコよくてねェ。あと、大スターの嵐寛寿郎先生が健さんの控え室に来て「嵐寛寿郎です、よろしくお願いします」ってご挨拶されてるのを見ちゃいましたから。その時から、俺は健さんに夢中になってしまったんですよ。