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◆「わかってくれない」とメンバーに思わせてしまうマネジャー

 マネジメントにおけるコーチングのアクションは、マネジャーが業績などの事実を把握すること、マネジャーが解決策の仮説を立てること、マネジャーとメンバーとで方向性のすり合わせをすること、マネジャーとメンバーとで方向性の合意を形成することに分解できる。事実の把握には、固定観念の排除が必要だ(参照:第41回)。

 仮説を立てるためには、柔軟思考が必要であることが、演習を繰り返す中でわかってきた。「営業成果が出ていないのは、活動が不足しているからに違いない」、「活動が不足しているのは、やる気がないからだ」……などと、通り一遍の仮説を立てるだけでは、不十分である。

 そのような表面的な仮説を立てて、メンバーとコーチングをしたところで、マネジャーは自分のことをわかってくれていないと落胆させるだけの効果しかない。さまざまな方法を実施する中で、仮設の確度を高める方法は、モチベーションファクターを梃にする方法であることがわかってきた。

◆メンバーの「意欲」の源泉を見極めろ!

 モチベーションファクターとは、人が各々持っている、モチベーション(意欲)が上がりやすいファクター(要素)だ。私はモチベーションファクターを、現在では6分類と2志向に分けて捉えている。

 (1)目標達成、(2)自律裁量、(3)地位権限という要素にモチベーションが上がりやすい人を牽引志向が強いと称している。(4)他者協調、(5)安定保証、(6)公私調和という要素にやる気が左右されやすい人を調和志向が強いと称している。

 狩猟型と農耕型、肉食系と草食系とメディアに称していただくこともあれば、中国版シリコンバレー組織である中関村(ちゅうかんそん)でもプログラムを実施しているが、中国では、狼型と羊型と呼ぶと良いと、中関村の幹部に教えていただいた。

 この(1)から(6)のモチベーションファクターのうち、メンバーはどのモチベーションファクターが強いか、今回の活動実績や営業成果を生み出した背景には、どのモチベーションファクターが作用しているかという観点で考えると、仮説の確度が上がるのだ。

◆自分とメンバーは異なる考え方や行動をする

 例えば、営業成果はある程度は出ているけれども、活動実績が上がらないという事実をふまえて、その理由についての仮説を立てる。演習を実施すると、ほとんどが、マネジャーとしての自分の経験に照らして、仮説を立てている。

 自分と同じ考え方や行動パターンをしていて、自分と経験をしてきたメンバーであれば、自分に照らして仮説を立てることの意味はあるだろう。しかし、そのようなメンバーがいるだろうか。

 そもそも、メンバーはマネジャーと同じ考え方や行動をしていて、マネジャーと同じ経験をしてきたと思うことの方がおかしい。しかし、現実に、わが国のビジネスパーソンは、そのように思い込んでいるかのように、わが身に照らして、仮説を立てる。それでは、仮説が当たらないことが普通だ。

 要は、メンバーは、マネジャーである自分とは異なる考え方や行動パターンをしていて、自分とは異なる経験をしてきたのだという、当たり前のことを前提として、自分に照らして仮説を立てるのではなく、メンバー自身の特性に照らして、仮説を立てるのだ。

 メンバー自身の特性に照らして仮説を立てる際に、最も仮説の確度を高めるのが、メンバーのモチベーションファクターがどこにあるのか、そのモチベーションファクターを持つ人は、どういう行動をしがちなのかということに思いをはせることだ。

◆メンバーのやる気の源泉を見極めろ