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梶原由景の「間違いだらけのアプリde飲食店選び」



食にも精通するクリエイティブディレクター梶原由景が足で見つけた”間違いない名店”を毎月紹介する。

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今月の間違いない名店

二◯加屋長介(にわかやちょうすけ)

福岡県/うどん居酒屋

住所:福岡県福岡市中央区薬院3-7-1

電話:092-526-6500

営業時間:[月〜金]16:00〜翌1:00(L.O.24:00)

[土・日・祝]13:00〜翌1:00(L.O.24:00)/火曜日定休

福岡の食が熱い――。

例えばバラエティ番組「秘密のケンミンSHOW」なんかを見ていると思うのだけど、もう“地方色”というのは、“地方食”に他ならないんだと。全国津々浦々に画一化されたモールが出現し、雑誌やテレビはもとより最近ではネットで東京と変わらない情報が手に入るようになった。当然生活様式も均一化して来てしまう。よって、気候風土に根ざした食文化のみが残ることとなったのだろう。その地で獲れるその地の味。これこそが地方の特色なのである。

とはいえ、実は僕はネットで手に入れた情報はそれだけのものでしかないと思っている。ネットやモールにある東京は、実はどこにもない。東京にもない。全国が東京化しているというよりは、あるようでない東京みたいな消費文化を共有している、まるで夢うつつのような状況にも感じる。食のようなリアルで根源的な体験がそれに優っていることで実証しているようにも思える。

さて、福岡だ。

まるで博多華丸大吉の成功に比例するかのように注目されている福岡の食文化。例えば焼き鳥も、主役は鳥ではなく豚バラ。皮だけを何日もかけて焼く皮焼きという一品もある。もつ鍋が全国を席巻したこともあった。讃岐うどんブームに流されず、独特の柔らかい麺で勝負し続けた。屋台に関してはもうここで改めて説明するまでもないだろう。目の前には豊かな漁場がある。最近ではわざわざ此の地に出向き、鮨を楽しむマニアも多いという。

そんな福岡の味を世の中が放っておくわけがない。多くの模倣も生み出したが、福岡から堂々東京にも進出するお店も多い。しかし、なんというか、福岡で楽しむ味とは違うのだ。どうも余所行きの顔をしている。東京に対して構え過ぎているのか。そんな気取りはダサいぜ。ここはひとつ福岡っ子の意地を見せて欲しいところだが、どれも一様に高級化しているのは戴けない。

そんな中、福岡でも予約困難の人気店『二◯加屋長介』が中目黒に出店して来た。当然東京で最も予約が取れない店となった。そして、そのメニューを見てみると、福岡とそう変わらない。その心意気が嬉しい。



さて、そもそも『二◯加屋長介』とはどんな店なのか。

高級居酒屋『田中田』で修行したご主人が始めた居酒屋。うどん居酒屋の元祖的存在とも言われる。その出自からわかるように味は本格派で値段はあくまで居酒屋価格。となればそりゃフラッと入れる店ではなくなる。

福岡の居酒屋ではマストの「ゴマ鯖(生の鯖を胡麻醤油タレで和えたもの)」や、近年品質の高い食材の生産地として注目されている糸島の名物「糸島揚げ」は最高。ただ炙っただけの厚揚げがなんでこんなに美味しいのか。筆者自身、感動のあまり翌日百貨店の地下で買い求め、自宅でも二日連続で味わったほどだ。

福岡ではこれも定番の「鯖みりん(鯖のみりん干し)」など散々此の地の味を楽しんだ後には〆のうどんだ。福岡といえば「ごぼう天うどん」。なんとも複雑で滋味溢れる出汁が堪らない。もちろん麺は柔らかく優しい腰がある。このレベルのうどんが〆メニューだけで済むわけがない。系列に「釜喜利うどん」といううどん専門店もある。



実は仕入れの関係からか、「ゴマ鯖」が中目黒はない。鮮度が保てないためか、「糸島揚げ」もない。できれば知る人ぞ知る福岡の味を広く紹介して欲しいのだが。しかし看板のうどんやハムカツなどは健在だ。安易に高級化させることのない味には、決して期待を裏切られることはない。今後も地方そのままの味で、我々に身近な存在となるお店がどんどん出て来て欲しいと願う。

文/梶原由景

梶原由景:幅広い業界にクライアントを持つクリエイティブ・コンサルティングファームLOWERCASE代表。デジタルメディア『Ring of Colour』などでオリジナルな情報を発信中。

※『デジモノステーション』2017年9月号より抜粋