長崎総合科学大学附属・安藤瑞季【写真:平野貴也】

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先制点を決め、負傷した2トップの相棒をカバーする仕事を果たすも…

 大会NO1ストライカーの夏は、ベスト8で幕を閉じた。

 全国高校総体(インターハイ)は2日、男子サッカー準々決勝でU-20日本代表候補FW安藤瑞季(3年)を擁する長崎総合科学大学附属(長崎)は1-2で流通経済大学付属柏(千葉)に敗れて涙をのんだ。総合力で上回る相手に善戦し、エース安藤の一撃で先制したところまでの流れはパーフェクトだったが、PKで追いつかれると、GKのミスから逆転を許した。

 互いにロングパスで広いスペースを使い、スピードとパワーを生かして勝負するチームだけに、個の能力の高さは際立った。総合力で勝る流経大柏のペースで試合は進んだが、安藤は前線で数少ないチャンスをシュートシーンにつなげていった。

 身長172センチと小柄ながら、パワーは強力。対峙した流経大柏のU-17日本代表DF関川郁万(2年)は180センチと上背があり、パワーもあるが「(安藤は)体の使い方が上手かったし、強かった」と舌を巻いた。

 長身の相手と競り合っても、ボールと相手の間にグイッと体を差し込んでボールを支配下に収め、攻撃の起点となった。後半6分に2トップを組んでいたFW西原先毅(3年)が足を痛めると、西原が競っていた場面も安藤が競るようになり、しっかりと役割をこなした。そして後半14分、右サイドからのロングスローがファーサイドまで流れたところを左足で押し込んでゴールを奪い、エースとしての仕事を果たしている。

ゴールを挙げての敗戦にやり場のない心情「もっと上に行けたはずなので…」

 ただ、それでも負けたのが現実だ。

 やり切ったが負けたというわけでもなく、実力不足を痛感させられたわけでもない。

「先制できて、PKを与えて追いつかれたけど、まだまだいけると思っていました。2失点目でみんなが気落ちしたけど、諦めずにやるぞと声は出ていた。悔しいというか、試合が終わった瞬間、涙は全然出なくて。やり切れた感がなかったし、ここで負けるはずじゃなくて、もっと上に行けたはずなので……」

 安藤はやり場のない心情を吐露した。

 冬の高校選手権に向けて再出発を切るが、その過程では、目指している高卒プロ入りを視野に入れて進路を決めて行かなければならない。

 小嶺忠敏監督は「まだまだ。フィジカルは強いけど、上の年代になったら、パワーのあるヤツは、いくらでもいる。そのときに、壁にぶち当たると思う。そのへんは、考慮しないといけない。まだ、イージーミスが多い。せっかく(パスを)受けるんだけど、ボールを失くすようなプレーが、このクラスで出てはいかん。きちっとやって突破するか、味方に預けるか。預けたら、次に動いてどう受けるのか、かなり強く要求しないといけない。そうでなければ、このままで終わってしまう」と厳しく課題を突き付ける。

 安藤の進路は、プロや強豪大学の関係者が注目するところだ。

兄に追いつき、追い越そう…「見返してやろう」と努力で評価を覆してきた

 注目株となってしまえば、以前から力があったように思われるものだ。しかし、安藤の場合はむしろ、同じ高校で活躍した兄の方が評価されていたくらいだった。

 スピードと技術に優れた兄は、1年次からエース格として活躍。現在は、駒澤大学でプレーしている。リーグ、インターハイ予選、年代別代表とステージを問わずゴールを量産している弟について話を聞くと、兄の安藤翼(駒大3年)は「弟が凄いねと言われることが多くなって悔しい。刺激になっているし、負けられない。昔は、パワーはあるけど、上手いとか凄いと言われるようなタイプではなかった」と話していた。

 安藤は、兄に追いつき、追い越そうと、努力で評価を覆してきた。安藤は「兄の記事を読んだけど、僕も兄と比較されて苦しんだ時期があった」と話し、まだ評価を得ていなかった時期を振り返る。

「出身の大分で県のトレセンにときどき選ばれていたけど、あまり評価されなかった。悔しくて、この間、大分で九州大会の試合があったときには、関係者が見に来ているだろうと思って、見返してやろうという気持ちで頑張って、良いプレーができた。反骨心が原動力になっている」

悔しい想いをするたびに這い上がってきた…「選手権では優勝を目指したい」

 兄が弟を最も認める部分は、負けず嫌い。パワーだけと言われてきたが、体の使い方を磨いて対人プレーの上手さを身に付け、得点数を伸ばしてきた。悔しい思いをするたびに、安藤は這い上がってきたのだ。

 夏の挑戦を終え、次はリーグ戦と選手権という目標を見据える。「まずは、プリンスリーグ九州、それから選手権につなげていきたい。切り替えてやるしかない。選手権では(全国)優勝を目指したい」と日本一への再挑戦を誓った。

 不完全燃焼の夏を経て、反骨心の男はさらなる高みへ進み出る。