インターハイ優勝を達成した福岡大大濠【写真:編集部】

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「なんとなく」の追撃で逆転V…片桐監督「それが相手が一番イヤなんじゃないかと」

 全国高校総体(インターハイ)は2日、男子バスケットボール決勝で福岡大大濠(福岡)が明成(宮城)を61-60で下し、3年ぶり4度目の優勝を果たした。序盤からリードを許しながら、後半に逆転勝ち。それは、“計算通り”の劣勢に導かれたものだったという。

 薄氷を踏む日本一だった。61-58で迎えた最終ピリオド残り2秒。相手にシュートを決められ、バスケットカウントを与えた。あしかし、同点を狙ったフリースローが外れ、そのまま試合終了。1点差で3年ぶりの日本一の瞬間が訪れた。選手たちは狂喜乱舞でコート上で感情を爆発させた。

 場内インタビューに立った主将の永野聖汰(3年)は「2年間、結果を残せてなかったので、優勝という目標にたどり着けたことがうれしい。苦しい試合の中でみんなが勝つという気持ちでやってきた」と胸を張った。

 序盤から劣勢だった。前半から明成・田中裕也(2年)に鮮やかな3点シュートを連発され、第1ピリオドを9-16、第2ピリオドも32-36とリードを許したまま前半を折り返した。しかし、第3ピリオドに入ると、じわじわと詰め寄り、残り1分で47-47の同点。さらに残り10秒を切ったところで49-47と逆転。この日初めてリードを奪い、最終ピリオドに突入すると、1点差で逃げ切った。

 苦しい試合だったが、しかし、片桐聡太監督にとっては“計算通り”だった。それには2つの理由がある。

相手の「経験」と前日の「死闘」に導かれた展開…「それが、対明成にはマッチしていた」

 相手の明成は2年ぶりの決勝進出。とはいえ、3年生の全国のファイナルの経験には乏しかったことだ。

「相手にとって何がイヤはなんだろうと考えると、“なんとなく”ついてこられる展開が一番なのかなと思った。決して、明成さんも最近は(全国の)上の方で戦ってこられたわけじゃない。やられているようでついていく展開の方がいいと思っていた」と指揮官は言う。

 もう一つは、前日の準決勝の帝京長岡(新潟)戦で4度の延長戦の死闘の末に勝利したことだ。

「ああいう試合での昨日の今日。私が前半から飛ばしていこうと言っても、エンジンがかからないことはわかっていた。それが、対明成においてはマッチしていたんじゃないかと思う」。追うより追われる方が不利に働く――。その狙いが、じりじりとにじり寄って、最後にズバリと当たった。

 もちろん、逆転に導けるのは力があったからこそ。U-19日本代表のPG中田嵩基(2年)が大会直前までU-19ワールドカップ(カイロ)の日本代表に選出され、2か月近くベストメンバーを組めなかった。しかし、帰国後は「3倍くらい練習した。自分は1回、倒れたくらいです」(中田)とハードに追い込み、大会に向けて仕上げてきた。

選手層で戦い抜いた6試合…指揮官が試合前に伝えていた「2つのこと」とは?

 会心の勝利を収めた片桐監督は、声を大にした。

「中田にとってはキツかったと思うけど、敢えてチームに合流させて、チームで大会に臨むということができた。戦術面でも戦うチームを作れたことが(勝利)の要因になった。加えて、今年はシードが獲れず、5試合ではなく6試合を戦うことになった。選手層がなければ、決勝も50対100くらいになっていたでしょう」

 中田が操るチームは、指揮官が「彼が(全国)NO1のセンターだと思う」と称賛した身長200センチのビッグマン井上宗一郎(3年)、リーダーシップのある永野聖汰(3年)ら、分厚い「選手層」で夏の6試合を戦い抜いた。

 試合前、片桐監督は選手に2つのことを伝えていたという。一つは「大濠のプライドにかけて、なんとしても勝ちに行こう」。もう一つは「3.11で被害に遭われた方に勇気と希望と感動を与えられるようにプレーしよう」。そして、福島の地で逆境にも屈しない姿勢を披露し、夏の日本一を達成した。

「選手に助けられ、勝ち取った優勝です」と指揮官。逞しい選手たちとともに、さらなる進化を目指し、冬へ突き進んでいく。