人は誰もが自分にしかできない “使命” を持って生まれているもの。とはいえ、自分には何ができるのかと悩んでいる女子も多いはず。そこで、勇気あるヒロインの実話をもとにした感動作『夜明けの祈り』をご紹介します。「フランス映画祭2017」でも一般の投票によって選ばれる観客賞を受賞するなど、高く評価されていますが、今回はある方に作品に込めた思いを語ってもらいました。それは……。

主人公を演じたフランスの注目女優ルー・ドゥ・ラージュ!

【映画、ときどき私】 vol. 104

ルーはフランスのアカデミー賞といわれるセザール賞において、有望若手女優賞に2年連続でノミネートをはたしており、今後が期待されている若手女優のひとり。本作では、ポーランドの修道院で起きたある悲劇で傷ついた修道女たちを救う若きフランス人女医のマチルドを熱演しています。そこで、この役から感じた気持ちや日本の女性たちに伝えたい思いを聞いてきました。

ここに描かれている衝撃の事件とは、第二次世界大戦後にソ連兵の蛮行によって、妊娠を余儀なくされてしまった修道女たちの苦難。ルーが演じたのは、さまざまな困難に見舞われながらも、彼女たちを命懸けで助けようとする難しい役どころ。

最初にこの題材について聞いたときはどう思いましたか?

ルー 素晴らしい脚本だったので、まずはその真実がグサッと刺さって、私の心に響いたわ。もちろん、女性に対する暴力というのは、ショックな事件であり、衝撃的なことでもあったんだけど、それは戦時中だけではなくていまでもあることなのよ。でも、そういう状況で、女性たちがどうやって光に向かって歩いていくのか、再生をしていくかということが大事だと思っているわ。

マチルドは医者としての科学的な信念を持っていて、修道女たちは信仰という信念を持っていたけれど、その2つが連帯して再生していこうとすることが私は大事だと思うの。いまは、暴力に暴力をぶつけていくことが多いと思うから、そうではないことを示している映画で、とてもよかったと感じたわ。

実在の人物を演じることにプレッシャーはありませんでしたか?

ルー マドレーヌ・ポーリアックというのが、マチルドのモデルになったお医者さんなんだけれど、この人に関する資料というのはほとんどないのよ。でも、彼女に向けて書かれた司祭からの手紙というのが残っていて、そこには「あなたは社会の陰のヒロインだから、いつかあなたのことが日の当たる場所に出て、みんなに知られればいい」と書かれていたの。

だから、今回それが叶って、しかも私がマチルドという役をして、世界の人たちにこういう人がいたということを知らせることができたのは、光栄だったし、誇りに思っているわ。

では、どのような準備をしてこの役に挑みましたか?

ルー 実は、今回は役に決まってから撮影まで、あまり時間がなかったの。だから、まずは私が演じる医者という職業を急いで身につけないといけないと思って、外科医や助産婦の方にいろいろと教えてもらったわ。たとえば、帝王切開や縫合の仕方とか、お腹をどうやって触診するのかというようなことを習ったのよ。

実際にポーランドでの撮影はどうでしたか?

ルー ポーランドではセットとなる修道院がすでにできあがっていて、ポーランド人の女優たちも修道女役としていてくれたので、そこにスッと入ることができたというのは、とてもラッキーだったと思うわ。ただ、ポーランドに着いたときに、なんとなく悲しさを感じたの。ポーランドという国は第二次世界大戦中もさまざまな国の侵入を受けたり、その後の政治もいろいろと大変だったりしただけに、どこかまだ悲しい歴史を引きずっているようにも思えたわ。

私はポーランド語を話せないし、共演する女優たちはほとんどフランス語を話さない人たちなので、そういう意味では映画のマチルドと同じ立場だったのよ。もちろんマチルドのほうがよっぽど大変で複雑だったと思うけど、それによって彼女の感覚を少し捉えることができたと思っているわ。

撮影で苦労したことはありましたか?

ルー フォンテーヌ監督からは、「とにかくクールでありなさい」とずっと言われ続けてきたわ。つまり、目の前の状況や戦争という状況、そして修道院の悲惨な状況に飲み込まれるようなことがあってはならないということ。

そして、役作りとしては、医者としてのスタンスを守るために距離を取るようにとも言われたわね。だから、表情も硬いし、頑固な感じもあったと思うわ。あとは、修道女たちの傷は薬を塗って治るものではないということにマチルドが気付いてから変わり始めるところを演じるのは、とても難しかったわね。

「ポーランド語を話せないルーにとって、ポーランドの片田舎でその国の女優たちに囲まれて撮影を行うことは容易ではなかった」と監督が語るほど、ルーにとっては厳しい撮影となった本作。

どのようにして困難を乗り越えていったのか、教えてください。

ルー 私にとって、仕事というのは「人生のなかのカッコつきの期間」だと思っているのよ。だから、そのカッコつきの期間で、さまざまな人に出会い、さまざまな経験をするということなの。そして、それが終わって、次に行ったときに自分としては少し成長したなと実感するのよ。

今回はテーマが難しくてとても深いものでもあったから、それを通り抜けることによって、何か自分の中にも成長した部分があったかなと感じているの。フランス語を少しずつ話せるようになっていたポーランドの女優さんもいたけれど、まったく言葉も通じない人たちと一緒にこういう映画を撮ることができたということは本当に素晴らしい経験だったと思うわ。

私たち日本人にとっては、歴史や時代背景などすべてが異なるものの、彼女たちの物語には同じ女性として心を揺さぶられるはず。

同世代であるananweb読者に向けて、この作品から感じて欲しいことをメッセージとしてお願いします。

ルー 私はこの映画というのは、宗教を描いたものではなくて、信念というものを描いたものだと思っているの。それだけでなく、修道女のように信仰に生きる人とまったく無宗教のマチルドがお互いに理解をし合うことができるんだということが私は大事だと思うわ。

いまの時代は、こっちはこっちとわかれていて、向こう側は全然理解できないという風潮があるわよね。でも、自分とは違う意見の人とでもわかり合うことはできるし、連帯をすることもできるんだということなのよ。その根っこには、人に対しての愛とか、信念があれば可能なんだということをみなさんにもわかってもらいたいと思っているわ。

インタビューを終えてみて……。

かわいらしい笑顔が印象的なルーですが、話し始めると内に秘めた情熱と芯の強さを感じさせ、なぜこの役に選ばれたのか思わず納得してしまったほど。現在27歳ということなので、美貌と聡明さをあわせ持つルーがこれからどんな作品で私たちを楽しませてくれるのか、今後も目が離せなくなりそうです。

勇気と信念が人を変える!

人生においては、どんな状況でも自分の信念を貫かなければいかないときというのがあるもの。現代からは想像を絶するような過酷な状況にも関わらず、自らの力で変えた彼女たちの力強い姿には、誰もが心を突き動かされるはずです。困難を乗り越えた人にしか見ることのできない “希望の光” をぜひ感じてください。

ストーリー

1945年12月、第二次世界大戦終結後のポーランド。若きフランス人女医のマチルドは赤十字で医療活動を行っていた。そこへ悲痛な面持ちのシスターが現れ、必死に助けを求めてくるのだった。そして、修道院を訪れたマチルドが目にしたのは、ソ連兵の蛮行によって身ごもってしまった修道女たち。信仰と現実の狭間で苦しむ彼女たちと命を救うため、使命感に駆り立てられたマチルドは、危険を冒して修道院に通うことを決意する。そんな彼女たちが待ち受ける運命とは……。

静かに胸に迫る予告編はこちら!

作品情報

『夜明けの祈り』8月5日(土)、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国順次公開配給:ロングライド 2015 MANDARIN CINEMA AEROPLAN FILM MARS FILMS FRANCE 2 CINÉMA SCOPE PICTURES

写真・加藤淳(ルー・ドゥ・ラージュ)