不振が続き、店舗の撤退が相次いでいる百貨店業界。その原因のひとつはアパレル業界にもあるようです。今回の無料メルマガ『がんばれスポーツショップ。業績向上、100のツボ!』では著者で現役コンサルタントの梅本泰則さんが、百貨店の業績悪化を招いたアパレル業界の悪しき「商習慣」を紹介するとともに、そのアパレル業界とスポーツ用品業界の意外とも言える共通点について記しています。

新しい発想でチャレンジする 

日本百貨店協会のデータによれば、2016年の百貨店市場規模は、5兆9,780億円ということでした。36年ぶりに6兆円を割り込んだとのことです。2000年には9兆円近くの市場規模でしたから、そこから30%以上も落ち込んでいます。その原因は、全体売上の3割を占めるアパレルの不振にあるようです。

ちなみに、経済産業省の調べによると、2013年のアパレル国内市場規模は10.5兆円で12年間で約3分の2にまで縮んでいます。百貨店にとっての主力商品が落ち込めば、売上が下がっていくのも当然です。

では、百貨店のアパレルはどうして売れなくなったのでしょう。7月31日の日経ビジネスでは、その「商習慣」に原因があると指摘しています。そして、その大きなものは「消化仕入」です。「消化仕入」とは、企業が納めた商品のうち、売れた分だけ支払いをするという仕組みです。「委託」と似ていますが、少し違います。「委託」は企業が納めたときに売上が立ちますが「消化仕入」は、一定期間に売れた分を「納品伝票」に切り替えて初めて売上となります。この場合、売場での商品管理も納入企業の仕事です。ですから「消化仕入」は、百貨店にとっては大変都合の良い仕組みになります。

また、アパレル業界の商習慣として、売場の販売員は、アパレル企業から派遣されることが多いです。そして、売場の設営費や改装費は、百貨店ではなくアパレル企業が持ちます。となると、百貨店は単なる場所貸し業でしかありません。百貨店自体の商品調達力や販売力が低下するのは当たり前です。

さて、この百貨店とアパレルの話が、スポーツ用品業界にどんな関係があるのでしょう。

スポーツアパレルの商習慣

実は、おおいに関係があるのです。

ご存知のように、スポーツ用品の市場拡大は、用具もさることながら、ウエアの販売によるところが大きいです。そこで、スポーツアパレルブランドを見てみます。アディダス、デサント、チャンピオン、プーマ、フレッドペリー、エレッセ、フィラ、アリーナ、アシックス、ミズノ、ナイキ、アンダーアーマー。まだまだありますが、有名ブランドばかりですね。

これらは海外ブランドも多いですが、製造販売しているのは、一部の例外を除いてそのほとんどが日本のアパレルメーカーさんです。そのメーカーさんが、問屋さんや小売店さんを通じて市場を広げてきました。ですから、アパレル業界の商習慣がスポーツ用品市場に持ち込まれたのは自然のことです。

例えば、「春物」とか「冬物」とか呼ぶのも、商習慣の名残でしょう。また、新製品展示会は、アパレル業界の手法です。年に数回、それもシーズンの始まる6〜12か月前に行われます。そして、その展示会では、新製品が次から次へと発売されるのです。小売店さんとしては、注文が出来なければ取引中止ということにもなりますので無理をしてでも発注しなければなりません。

そして、シーズンが終わると、売場では「クリアランスセール」という名の値引きの処分が行われます。これも業界の商習慣といえるでしょう。百貨店とアパレル業界が苦しんでいる構造に似ています。

スポーツ小売店が低迷しているのは、そのあたりにも原因がありそうです。ですから、最近大手スポーツメーカーさんは戦略を変えてきました。その一つが、直営店の出店です。今までのように、小売店さんだけに頼っていても市場拡大がむつかしいということなのでしょう。

では、こうした流れに対して、小売店さんはどうしたらいいのでしょうか。

新しい売り方を探る

出来るだけ早く、今の商習慣と決別することです。そのためには、とりあえず次のことを提案します。

取引継続のための無理な商品発注をしない。シーズン末のクリアランスセールを行わない。メーカーさんにはシーズン後の返品をしない。

とはいえ、スポーツウエアは売りたいですよね。展示会での発注を抑えれば、大手メーカーさんの商品が扱えなくなるかもしれません。それならば、良い方法があります。それは、まだ市場規模の小さなメーカーさんの商品を扱うことです。それも、際立った特徴のある商品である必要があります。これは、ご自分の足と目で探してくることが重要です。

そして、今までとは違った提案の仕方ができる店舗にしてはいかがでしょう。例えば、業界は違いますが、大阪に「ザ・ファーム」という園芸ショップがあります。このお店の特徴は、他店とは違った取扱商品と店舗デザインです。中には、1品数十万円、数百万円もする、珍しい植物を販売しています。もちろん、近くのホームセンターなどでは売っていません。しかも、店内はまるでジャングルのようなデザインになっています。オシャレな飲食スペースがあるのも売りです。こうした商品やお店の雰囲気に引き付けられて、遠方からのお客様が押し寄せます。このお店の発想は、きっとスポーツショップでも応用できるのではないでしょうか。

他のお店とは違った独自な商品をそろえる。新しい発見や専門的な知識を提供する。居心地の良い、非日常的な空間をデザインする。

といったことがポイントのような気がします。そして、一つ一つに詰まっているのは経営者の思いです。ストーリーさえ感じさせます。こんなお店ならば、お客様はきっと他の人にも伝えたいと思うことでしょう。

もちろん、「ザ・ファーム」のやり方がすべてではありません。他の業界でも、新しい発想で成功しているお店が、まだまだあります。発想を変えれば、スポーツショップでも新しい提案のお店ができるはずです。これは、大手メーカーさんに頼っていてはできない気がします。今決意をしなければ、百貨店やアパレル業界のように、大変なことになるかもしれません。

■今日のツボ■

スポーツ用品業界にはアパレル業界の商習慣が持ち込まれている。その商習慣に流されていると、やがて凋落するかもしれない。スポーツ小売店は、新しい発想の店舗づくりに挑戦するときである。

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出典元:まぐまぐニュース!