先月、東京・新橋のキャバクラ店で働く女性が関係者の男に殴られ死亡した。

 亡くなったのは、与島稜菜さん(19)。実質的な経営者とみられる伊藤英治郎被告に店内で髪を掴まれ引きずられたり、顔面を10回以上殴られたりするなどの暴行を受け、急性硬膜下血腫などの傷を負った。意識不明の状態で病院に搬送された与島さんは、6日後に死亡が確認された。事件当時、伊藤被告は、客として来店しており、その後与島さんと口論になったという。

 与島さんは16歳の時に産んだ2歳の子のシングルマザーで、"割のいい仕事"ということでキャバクラで働き始め、1千万円を貯めるという目標を持っていたという。一方の伊藤被告を知る人は「元々騒ぎを起こす人で、殴られて顔が腫れている従業員を何人か見た」と話す。

 『週刊文春』によると、伊藤被告はキックボクシングジムに通っており、今年5月頃からは与島さんを店の寮に住まわせていたという。与島さんのシフトを厳しく管理し、友人との接触を禁止。毎日店で働かせていたという。記事は、自分の立場を利用して、恋人になるよう迫っていたとも伝えている。

 与島さんの母は『週刊文春デジタル』の取材に「医師に『(娘さんだと)わからないかもしれません』と言われた。顔が普段の3倍ぐらいに腫れ上がり、目が開いていない状況で、本当に別人のようだだった。細い指がこんなに太くなるのかってくらい、手もパンパンだった」と振り返る。

 「痛かったと思う、怖かったと思う。どんな気持ちで殴られ続けたのかなと思うと、本当に悲しいし、悔しいし涙が止まらない」。悲痛な与島さんの母の隣では、与島さんの子が「これママ?いい子いい子していい?」と、骨壷の入った箱をさすっていた。


■「キャバクラユニオン」組合員から「許せない」という声

 事件が報じられる中、水商売で働く人のための労働組合「キャバクラユニオン」は 緊急声明 を発表した。

 「この事件で実際に振るわれた暴力は、キャバクラ店での接客に従事している私たちに日常的にほのめかされ、見せつけられてきたものです。女性だから殴られ、水商売に従事しているから殺される。同種の事件が繰り返されているのは、この社会が水商売で働く女性は殴ってもいいとみなしているからです。暴力を終わりにするには、この差別的な社会の視線を徹底して問題にする必要があります」。

 1日放送のAbemaTV『AbemaPrime』に出演した「キャバクラユニオン」共同代表で、現役のキャバクラ嬢でもある田中みちこ氏は「とても悲しかったし、ひどいなと思った。うちの組合は実際にキャバクラで働いてる子も多いので、許せないと声が上がった。これはやっぱり何か出したほうがいいなってことで、声明を出した」と話す。

 田中さんたちの下には、給料の未払いや、セクハラ・パワハラなど。様々な相談が寄せられるという。

 「売り上げが減ってしまうので、人気のある子はなかなか休ませてもらえないということがある。体調が悪いと説明しても、"いいから来い"と言われたケースや、休むと高額な罰金があるので、とりあえず出勤して早退をお願いするというケースもある。お店の寮に入っている子が給料未払いの相談に来たケースでは、"寮の家賃が払えないなら出ていけ"と言われていた」。

 一部報道では、伊藤被告が与島さんのお金の面倒を見ていたという話や、与島さんが伊藤被告に借金をしていたという話もあるが、与島さんの家族は否定している。

 田中氏によると、ドレスを買わせたり、女の子が急に辞めないよう、"次に出勤した時に渡すから"と言われたり、給料日にも出勤しないとお金がもらえないというケースもあるというが、店の関係者に借金をしているというケースはあまり聞かないという。

■擬似恋人状態でキャバクラ嬢を管理するケースも

  キャバクラの実態にも詳しいノンフィクションライターの石原行雄氏は「いわゆるキャバ嬢というのは、業界のヒエラルキーとしてはかなり上の方。基本的には暴力で管理するというのはありえないことだと思う。今回の事件や、田中さんが話したような例はかなり悪質なケースだと思う」とした上で、「お水の業界全体が不景気になってきているので、ホスト業界ではぼったくりや暴力が蔓延してきている。キャバクラ業界で、そのやり口を取り入れている部分が出てきている」と説明する。

 また「業界用語で"竿管理"や"色管理"という言葉がある。経営陣・オーナーや店長、黒服の中でもリーダー格の男性が、売れている子が条件の良い他店に引き抜かれないよう、擬似恋人状態にするという方法だ。女の子を騙して肉体関係を持つことで、過剰に仕事を頑張るようになったり、その先には男性が暴力を振るってしまうこともある」と語った。

 

■「何かおかしいなとか、不当だなと思ったら、すぐに言ってほしい」

 働く女性が不利な立場に置かれているにも関わらず、声を上げると損をしてしまうという、会社組織にもみられがちな構造もあるようだ。石原氏は「シングルマザーや、急いで仕事を探して入ってくる女性が本当に多いので、雇用する側がそこにつけこんで、寮費の説明をしないまま"うちだったら今日から寮にすぐ入れるよ"と、なあなあで仕事を始めさせて後からいろいろな条件を出していく。働き始める前に、そういうところをきちんと確認するのが必要」と話す。

 田中氏も、給料の未払いや、突然解雇されるといった相談も多いといい、給料明細を残しておくこと、メモを日々取っておくことなどを勧めてている。「働いてる女の子たちが結託して、例えば『このお店いいよ』とか『あのお店やばいよ』と話し合える環境ができるといいなと思う。働いていて、何かおかしいなとか、不当だなと思ったら、すぐに言ってほしい。困った時に相談ができる場所を維持していきたい」(田中氏)。

 「 キャバクラユニオン 」では、随時相談を受け付けているという。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)

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