米ニューヨーク・マンハッタンの街角の建物にある「核シェルター」の標識(2017年7月30日撮影)。(c)AFP=時事/AFPBB News

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【AFP=時事】北朝鮮による先週末の大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射実験を受け、専門家らはミサイルの射程には米ニューヨーク(New York)も入る可能性があるとの見方を示している。若者にとっては現実離れした考えのようだが、冷戦(Cold War)を経験し、核シェルターが身近だった年配の世代にとっては当時を想起させる状況となっている。

  旧ソ連の末期や崩壊後に生まれた多くの人たちにとって、自らが差し迫った脅威にさらされているというシナリオを思い描くのは難しい。台湾で生まれ米国で育ったピーターさんは「韓国には米軍基地があるし、ミサイル防衛システムもある。過剰な心配はしていない」と言い、「(ミサイル発射は)一種のはったりだと思う」と語った。またニューヨークに住むローザさん(26)は「脅威が本物なのかどうか分からない」と述べた。

 一方で、年配の住民は概してミサイル発射実験をもっと厳粛に受け止めている。核兵器を保有する西側陣営と旧ソ連陣営が数十年にわたり対立した冷戦時代には、核攻撃に関する公共広告や訓練、核シェルターの存在が身近だったからだ。冷戦時代のピークには、ニューヨーク市内に1万7000か所以上の核シェルターが設置されていた。

 機械工のスティーブンさん(71)は、北朝鮮の核兵器やミサイル開発計画の前進に不安を感じているとし、「開発がどんどん進んでも誰も何も言わず、もう(北朝鮮は核兵器を)持ってしまっている」と述べた。スティーブンさんは、気まぐれな金正恩(キム・ジョンウン、Kim Jong-Un)朝鮮労働党委員長も心配だが、ドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領も同様に不安だと述べ、トランプ氏の攻撃的なリーダーシップや予測不能な言動では、危機を鎮めることはできないと悲観している。

 デービッドさん(62)は、北朝鮮による一連の挑発行動を受け、10歳の時に空爆から身を守るために行った「地区全体にサイレンが鳴り響く」避難訓練を思い出すようになったと言い、「非常に懸念している。われわれの心の奥には常に911(米同時多発テロ)がある。ここは標的なんだ」と語った。

■高まる脅威

 冷戦時代のニューヨーク州知事、故ネルソン・ロックフェラー(Nelson Rockefeller)氏は核シェルターの建設を提唱し、在任中に数千か所を設置。1963年までに軍が核シェルターとして確認した建物は1万7448棟余りに及んだ。現在も数十か所で残っているが、多くの住民はその存在の意味を知らない。

 デービッドさんが住む建物の地下にあった核シェルターは、現在は改装され洗濯室になっているという。今では通りに面して何か所か窓も設置され、以前の防衛機能の面影はほとんどない。

 近年、ニューヨークでは災害対応の訓練に重きが置かれている。4月に行われる大規模訓練「ゴッサム・シールド(Gotham Shield)」などではスポーツスタジアムに野戦病院も設置される。しかしこうした訓練は、スーツケース型核爆弾や放射性物質を含んだいわゆる「汚い爆弾」を想定したもので、破壊力が圧倒的なICBMは念頭に置いていない。

 コロンビア大学(Columbia University)地球研究所(The Earth Institute)にある全米災害準備センター(National Center for Disaster Preparedness)のジェフリー・シュレーゲルミルク(Jeffrey Schlegelmilch)副所長は「直接的な核攻撃に限らなくても、全米で完璧な準備をしている、あるいは取らなければいけない対応が揃っている都市や地域はないと思う」と指摘した上で、現時点で最優先すべきなのは核攻撃に対する意識啓発を強化することだと強調している。
【翻訳編集】AFPBB News