夜遊びの聖地とも言われる歌舞伎町だが、外国人観光客が立ち寄るのはドンキホーテとロボットレストランくらい!?

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 先日の都議選、「都民ファーストの会」が主婦層の支持を受けて圧勝したわけだが、世の男性諸氏にとっては“夜遊び締め付け”の危機でもある。清廉潔白な“おもてなし”を前面に押し出した観光政策の行き着く先は、閑散とした味気ない夜の街か? 『夜遊びの経済学 世界が注目するナイトタイムエコノミー』(光文社)を上梓し、世界の夜遊び事情に精通する国際カジノ研究所所長・木曽崇氏に話を聞いた。

――最近、めっきり夜の街から人が消え、ワクワクしなくなったという声を聞きます。

木曽:世界の国際都市と比較した場合、東京には2つの欠陥があります。ひとつめは、ナイトスポットが飲み屋やキャバクラなど飲食業に偏っており、多様性が著しく低いこと。お酒を飲まない人は楽しめないし、日本語が前提なので外国人観光客にとっても敷居が高い。

 結局、深夜営業のドンキホーテで買い物するくらいしか選択肢がない。この点で、成功している観光都市には、ショーや市場など様々なナイトスポットがあり、言葉が通じなくても楽しめるものが多い。

 ふたつめの欠陥は、深夜交通です。多くの国際都市は、深夜バス網が整備されており、様々なナイトスポットを行き来できる。例えば、「ゴールデン街で飲んでから築地に移動してご飯を食べて」といった遊び方ができるわけです。観光客は寝る間を惜しんで楽しもうとするので、そのための“足”は必須。

 実は2代前の猪瀬知事が、この深夜バスに取り組みましたが、失敗してしまいました。というのも、「六本木―渋谷」という限られたルートだったので、利便性がほとんどなかった。やるなら山手線に沿って走らせるべきで、それなら観光客のみならず、日本人も格段に夜遊びしやすくなるはずです。

――しかし、そうなると深夜労働が必要となり、今の社会の流れでは反発もあると思います。

木曽:低賃金・長時間労働が批判されるべきであって、儲かるなら深夜に働くという人はたくさんいます。例えば、ラスベガスは24時間都市が動いているので、すべてがシフト制で回っている。問題は、お客さんがいなくて儲からないのに長時間営業をして、低賃金で働かせることです。

 裏返せば、不動産のコストは一定なので、稼げる時間帯が増えるほど利益は上がり、相応の人件費も支払える。プレミアムフライデーでは、普段は閑古鳥の午後の時間帯に、新橋の雀荘が軒並み満卓になりました。これと同じことで、今は休眠状態のナイトタイムエコノミーを活性化させれば、都市全体の効率が上がり、景気が回復する可能性が高いのです。

――そのために、東京の「夜遊び改革」が必要だと。

木曽:要はビジネスの話です。海外では、サービスに対してチップという対価が支払われます。一方、日本では“おもてなし”という曖昧な言葉でなしくずしにしている。結果、労働者が対価を伴わないサービスを強要され、苦しむことになる。それで「日本の“おもてなし”は最高!」「観光客が増加した!」なんて馬鹿げた話です。

 肝心なのは、魅力ある都市作りをして、きちんと対価の伴う需要を創出していくこと。「観光客がどれくらい増えたか?」ではなく「観光収益がどれくらい増えたか?」で語るべき。ドンキホーテで買い物をしてホテルで寝るだけだった外国人が、カジノで遊び、マジックショーを観て、市場で飲み食いしてとなれば収益は段違いです。

 実は、豊洲は見学しやすい設備、屋台村のようなフードコート、温泉施設などを総合した一大観光地となるはずでした。市場は早朝経済の中心となる重要な観光資源ですから、それが頓挫したことは非常に痛い。ナイトタイムエコノミーというと小池知事を支える主婦層の反発もあるかと思いますが、都市効率を上げることで経済を活性化させなければ、東京はいずれじり貧です。感情論に流されず、ぜひ「夜遊び改革」に本腰を入れて欲しいと思いますね。

取材・文/長谷川大祐