おや、大物を買ったな、と思われたかもしれないが、オモチャの話です。

 マンガの構想を練る、という作業をマンガ家はするわけだが、「ビッグコミックスピリッツ」の新連載『忍風! 肉とめし』の設定を考えながら、ふと思った。

「山奥の集落が舞台なので、軽トラが出るシーンがあるかもしれないな……」

 連載開始の数カ月前のことだ。資料のための画像など、ネットで検索すればじゅうぶんなのだが、その段階で私は、軽トラのミニカーがほしくなってしまった。どうしても、今すぐほしい。ないとマンガ描けない! 駄々っ子か!

 その時点ではまだ企画段階なわけで、用意した資料など無駄になる可能性があるにもかかわらず、物欲に火がついた。ミニカーには時おりそういうことがある。

 前は、急にほしくなって、近所の店のオモチャ売り場でトミカ「トヨタクラウン コンフォートタクシー」を買った。税込み400円ぐらい。

 タクシーとしてのツボを押さえた「左の後部ドア開閉」というギミックがすばらしく、クラウンセダンのおちついた姿にも満足した。そのタクシーを資料に絵を描いたかどうかは、まったくおぼえていないのだが。

 ともあれ、今回もオモチャ売り場に走った。ときどき無性にほしくなるトミカだが、現在販売中の製品に、私が求めるふつうの軽トラがないことは調査ずみである。どれもパン屋さんとか移動販売車とか、荷台になにかついてるスペシャル仕様になっている。

 迷わず、ミニカーではない乗りものオモチャコーナーに突進。あった。マルカ「ドライブタウン」シリーズの「ハイゼットトラック」。ミニカーより二回りくらい大きい自動車のオモチャ。プルバック走行タイプなので、少々デフォルメされているが、立派に軽トラだ。税込み572円。

 買って帰り、荷台に消しゴムなど載せて走らせて楽しんだ。じゅうぶん物欲はおさまったのだが、数日後、思いがけないサプライズがあった。

 ネットで注文した書籍数冊が入った段ボールに、軽トラのオモチャも入っていたのだ! アガツマ「スバルサンバー」。走行ギミックはないが、プラスチックの幌、厚紙の荷物つき。もちろん幌ははずせるし、後部ゲートも開閉する!

 一杯やりながらネットショップで見かけて「へえ、これいいな」と思った記憶はあるが、「カートに入れる」を押した記憶はなかった。税込み1100円ぐらい。

 商品には満足しているが、なんだか自分がヤバい。せめてもの救いは「同じものをダブって買わなかったこと」だが、どちらにしろ、家族には知られたくない感じのヤバさだ。

 そして、今の時点で3話ほど描き進んでいる『忍風! 肉とめし』に、今のところ軽トラは出てきていない……。

よしだせんしゃ
マンガ家 1963年生まれ 岩手県出身 『伝染るんです。』『ぷりぷり県』『まんが親』『おかゆネコ』など著作多数。「ビッグコミックオリジナル」で『出かけ親』、「ビッグコミックスピリッツ」で『忍風! 肉とめし』を連載中。妻はマンガ家・伊藤理佐さん

※本誌連載では、毎週Smart FLASH未公開のイラストも掲載
(週刊FLASH 2017年8月8日号)