砂漠のように乾いた世界に見える月には、実は大量の水が眠っているのかもしれない Image Credit: LPI/David A. Kring

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 カラカラに乾いた世界のように見える月に、実は大量の水が存在するかもしれない――。こんな研究結果が7月24日(現地時間)、米国のブラウン大学の研究者らによって発表された。

 月に水があるのか、あったとしてどれくらいの量があるのか、という謎をめぐっては、これまでさまざまな研究や観測が行われてきたが、まだ結論は出ていない。今回の研究も、あくまで水が大量に存在している可能性を示しているだけであり、本当に水が大量にあるかどうかを、今の段階で断言することはできない。

 しかし、もし本当に水があることがわかれば、月への旅行や移住といった夢のような計画の実現を大きく後押しする、大きな可能性を秘めている。

◆月の水をめぐる謎

 夜空に、ときには昼空にも浮かぶ月。ちょっとした望遠鏡で見れば、その表面にはクレーターと呼ばれる無数のでこぼこと、そして「海」と呼ばれる大きな平原が広がっている様子がわかる。

 月の海とは、かつて月では火山活動が起きており、地中から吹き出したマグマがクレーターを埋めてできた、”海のように見える”平原のことを指す。そのため、地球の海のように水を湛えているわけではないどころか、どこにも水は見えない。

 では、月には水はないのだろうか? 1960年代から70年代にかけて、米ソの無人の探査機が送られたり、さらにはアポロ計画で宇宙飛行士が月を訪れたりし、実際に月の岩石を地球に持ち帰って分析が行われたが、その結果わかったのは、月は見た目通り、水のないカラカラに乾燥した世界だということだった。

 ところが1990年代以降、新しい探査機による観測から、地中や内部に水があるのではないか、という結果が出始めた。一方で、月の中で最も水(氷)がありそうと考えられている月の南極地域などを観測しても、それらしいものは見つからなかった。

 さらに2009年、米国航空宇宙局(NASA)はロケットを月面に激突させて、舞い上がった月の砂埃の中を探査機が飛行してその砂埃を分析する、というダイナミックな観測を実施。その結果、水の存在をうかがわせる痕跡は見つかったものの、しかしはっきりと示す“証拠”は見つからなかった。

 こうした経緯から、専門家の間では水があると考える人、ないと考える人に分かれ、双方にそれなりに説得力のある根拠があるという、はっきりとしない(ただし科学的にはとてもおもしろく研究しがいのある)状況が続いている。

◆今回のブラウン大学の研究結果は何が新しいのか?

 そんな中、今回ブラウン大学は新たに、月に水が、それも豊富にあると考えられる研究結果を発表した。

 もともとブラウン大学は、月の水の研究については長年の実績がある。2008年には、かつて「アポロ15」と「アポロ17」ミッションで回収された月の石を、再度詳しく分析したところ、そこに含まれる火山ガラス粒子(火山が噴火する際にマグマの中にできるガラスの粒子)の中に、水が含まれていることを発見。さらに2011年には、その水の量が、地球上にある玄武岩という種類の石と同じくらいであることがわかっている。

 ここで重要なのは、アポロ計画で回収された種類の月の石が、はたして月の全体の中でどれくらいの割合を占めるのか、ということだった。たとえば、同じ種類の石が月の全体に広がっているのなら、月には豊富に水があると言えるかもしれない。しかし、もしたまたま水が多い地域から回収されたものだったとしたら、月の大部分はやはりカラカラの乾いた世界で、水はほとんどない、という可能性もある。

 そこで今回、ブラウン大学とハワイ大学の研究者らは、インドが2008年に打ち上げた月探査機「チャンドラヤーン1」が観測した月面のデータと、アポロ15、17で回収された石の分析データを組み合わせ、月の火山性堆積物に含まれる水の量を正確に検出できる方法を考案。それを用いて分析したところ、かつて火山活動によってできたと考えられる場所(アポロ15、17が着陸した場所を含む)の、それも広い範囲に、大量の水が含まれていることを示す結果が得られたという。