大量に盛られたザリガニ。どんな味なのか?


 先日、日本にいる友人に、「中国人は夏になると、日本人がウナギを食べるみたいにザリガニ食べるよ」と洩らしたところ、「なにそれめちゃくちゃ面白そう! ぜひ取材して記事書いて!」という妙なリクエストを受けましたので、このたび上海市内の料理店にザリガニ料理を食べに行ってきました。筆者はそこそこ中国で長く暮らしていますが、カエルはともかくザリガニを食べるのは初体験です。なんとか頑張って食べてきましたので、今回はその報告をしたいと思います。

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夏はザリガニ!

 まず、中国の「ザリガニ食」市場について簡単に説明しましょう。シーズンとなるのはちょうど今くらいの夏の暑い時期です。中国の全国各地で、それこそ日本のウナギのように夏の風物詩として食べられています。特にこの2〜3年でザリガニ料理店は急増し、街中で少し探せばすぐ見つかるくらい多くの店があります。シーズン中だけ取り扱うお店もあれば、年間を通して提供するザリガニ料理専門チェーン店もあり、大体どこも繁盛しています。

 今回、とりあえずザリガニを食べに行くこととなりましたが、さすがに1人では食べに行く気にならなかったので、友人(上海出身の中国人)に頼んで一緒に来てもらうことにしました。

 その友人は、ザリガニ料理を食べに行くことはあるけれど、それほど好きというわけではなく、自分から食べに行くことはほとんどないそうです。ただし周りには、ザリガニが大好きで、この時期になると週に数回のペースで食べに通う人もいるとのことでした。もちろん中には「苦手」という中国人もおり、その友人の奥さんは「あたしはイヤ!」と言ってついてきませんでした。

ザリガニは高級料理だった?

 さて、その友人に店をピックアップしてもらい、地下鉄「長寿路」駅近くにあるザリガニ料理専門チェーン店「蝦満堂」を訪れました。昼に訪れたところ席は空いていましたが、夜には長蛇の列ができるほどの人気店だそうです。

今回訪れたザリガニ専門料理店の「蝦満堂」


 店に着いて早速メニューを眺めてみると、意外に値段が高いことに驚かされました。ザリガニなんてその辺の川ですぐ釣れるのだから、1皿50元(約820円)くらいかと想像していたのですが、一番安い「並サイズ・中皿」ですら108元(約1780円)からでした。「大サイズ・大皿」ともなると298元(約4900円)にもなり、やや高級な火鍋料理屋のような値段設定です。

 なお、一番高いメニューは、「パーティー用フルコースセット」の1888元(約3万1000円)でした。テイクアウトもできるそうですが、ザリガニパーティーなんてやる人いるのか!?

 ザリガニ料理の種類はいくつか用意されているものの、基本的にどれもピリ辛系のスープで煮るという料理しかなく、違いは使用する香辛料や辛さの程度しかありません。これは他の店でも同様で、ザリガニ特有の泥臭さを掻き消すため、こうした調理法に限られているようです。

 今回はオーソドックスと思われる味付けの「並サイズ・中皿」を頼み、サイドメニューとして頼んだ枝豆をつまみつつ料理が出てくるのを待ちました。

 待ってる間、そもそも自分は貝とかウニなどのシーフード系料理は苦手だというのに、どうしてこんな企画をやってしまったのかという後悔の念がこみ上げてきました。「でも、ザリガニは川でとれるからシーフードじゃないのでは?」などと一人ツッコミしていたところ、やって来ました。大きなお盆にぎっしりと積み上げられたザリガニの登場です(冒頭の写真)。

硬い殻、刺さる棘、痛む指先

 正直、見た目はかなりグロく、これを食べるのかと思うと、気分はかなり憂鬱でした。しかし、今さらあとには引けません。

 食べ方を友人に聞くと、基本は頭部をねじってもぎ取り、胴体から尻尾にかけて殻を外して食べるとのことでした。食べる際は箸などは使わず、店側がくれるビニールの手袋をつけてそのまま手づかみで食べるそうです。

 友人の指導に従って、熱いスープに浸されたザリガニを手掴みで取ってみました。頭部をもぎる前に、まず、突き出たハサミが妙に気になります。とりあえずいろいろなことを考えないようにして頭部をもぎ取り、続けて胴体の殻を取り外そうと力を込めたところ、なかなか硬くて外れません。しかも殻を取ろうと指に力を込めたら、今度は尻尾の棘が指に突き刺さり、激痛が走りました。とにかく殻が剥きづらいということはよく分かりました。

取り皿の上に鎮座するザリガニ。あからさまにザリガニである


頑張って剥き終えたザリガニ、見た目はまんまエビ


 そうやって悪戦苦闘しながらようやく殻を剥き終え、出てきた身を食べてみたところ、思わず「エビやん!」と叫んでしまいました。

 おそらく塩茹でして何も言わずに剥き身だけ出したら、間違いなくエビで通ると思います。うまいか、まずいか、で言えば確実にうまい方でしょう。

 とりあえず1尾食べてみて、想像していたほど泥臭さがなかったのと、味がまるでエビそのものであることに驚かされました。そして、1回剥いたら「もう何も怖くない」という心境に至り、その後は黙々とザリガニを食べ続けました。お盆に盛られたザリガニの山はいつしかほとんどが筆者の取り皿へと移動していました。頑張ればもう1皿行けたな、たぶん。

つわものどもが夢の跡


市場は拡大中、価格も絶賛高騰中

 前回のコラム(「日銀の金融政策が景気拡大につながらなかった理由」)では日銀の金融緩和について書いておきながら、なんで今回ザリガニネタ書いてるんだろうこの人、などと思われそうなので、元経済紙記者の意地から一応経済ネタにも触れておきます。

 上の表は直近の中国ザリガニ市場の主要データです。見ての通り生産量、消費量は年々増加しており、両数値は非常に接近しています。現地メディアの間でも、需要が供給に追いつかない状況であることが指摘されています。こうした背景もあって、ザリガニの価格はこのところ高騰しているそうです。

(* 配信先のサイトでこの記事をお読みの方はこちらで本記事の図表をご覧いただけます。http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/50658)

 では、具体的な価格はどれくらいなのか。海南特区報のザリガニ料理店へのインタビュー記事によると、現在、ザリガニ料理のキロ当たり提供価格は100元(約1640円)前後。それに対してキロ当たり仕入価格は、昨年の約20元(約330円)から約30元(約490円)に上昇しているそうです。当然、サイズや質のいいザリガニとなると、さらに仕入価格が上がることとなります。

 食べる前はまったくそんなことは考えませんでしたが、改めて上記の市場データを眺めてみると、案外、日本で取ったザリガニを中国に輸出できるのではないかという気がしてきました。日本の川で取れるザリガニは今回食べたザリガニより大きいように思えますし、キロ当たり400〜500円くらいなら採算ベースにも乗るのではないでしょうか。さすがに自分ではやりませんが・・・。

筆者:花園 祐