点の取り合いとなった「広州ダービー」。中国超級(スーパーリーグ)特有の激しいぶつかり合いが見られた。(Guangzhou. 2017)

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 先週末、久々に中国を訪れる機会があったので、中国超級(スーパーリーグ)を取材してきた。カードは広州富力対広州恒大、いわゆる「広州ダービー」である。広州恒大は日本ではお馴染みの強豪。2011年から6シーズン連続優勝を果たしており、ACLでも2度優勝している。そんなチャンピオンを迎え撃つ広州富力はタイトルこそないものの、12年に超級に昇格して以降は「広州第2のクラブ」としての地位を固めつつある。ちなみに恒大の監督はルイス・フェリペ・スコラーリ、富力を率いるのはドラガン・ストイコビッチだ。
 
 この日はダービーということで、会場となった越秀山体育場の周辺は、赤(恒大)と青(富力)のレプリカで溢れかえり、スタンドはほぼ満席。試合は白熱した点の取り合いの末に、4-2でホームの富力が勝利した。超級といえば、ここ数年「爆買い」の話題ばかりが先行しているが、ACLで対戦する以外は日本には馴染みのないリーグでもある。私自身、現地で観戦するのは実に5年ぶり。当時と変わらない部分もあれば、多少の変化を感じさせる部分もあったので、それぞれ記すことにしたい。
 
 まず変わらない部分として、相変わらず対人の当たりがキツいことを挙げたい。勢い余ってスライディングしたり、空中戦で激しくぶつかり合ったり、Jリーグと比べてかなり荒っぽい印象。主審もいちいち笛を吹かないので、担架が呼ばれる回数もやたらと多い。加えて、外国籍選手に依存する傾向も以前と変わっていなかった。富力はレナチーニョ、ジュニオール・ウルソ、エラン・ザハヴィ。恒大はパウリーニョ、リカルド・グラル、キム・ヨングォン。両チームとも、攻守のポイントに配置された外国籍選手がやたらと目立っていた。
 
 一方、5年前には見られなかった一番の変化は「若手選手の起用」である。今季から中国超級では、U-23の選手を最低2人はベンチ入りさせて、そのうちひとりはスタメンで起用することが義務付けられている。これは言うまでもなく、自国の若い世代に経験を積ませるためだ。ここ数年の超級は、外国籍選手の偏重により若手に出場機会が与えられず、代表チームの成績にも悪影響を及ぼす結果を招いていた。こうした傾向を是正するため、外国籍選手の出場枠も今季より4+1(アジア人枠)から3に削減されることとなった。
 
 このように試行錯誤を続けている中国超級だが、一方でサポーターの意識は以前より高まっているように感じた。試合後、恒大のサポーターと飲む機会があったのだが、興味深かったのは彼らが「広州ダービーなんてものはない!」と主張したことだ。実は富力の前身は瀋陽足球倶楽部といい、遠く離れた遼寧省のクラブだった。その後、長沙、深センを経て広州にたどり着いたのは11年のこと。「あいつらが広州のクラブを名乗るのは百年早い!」というのが恒大側の言い分である。リーグが「ダービー」と煽るのではなく、ダービーの定義はサポーターが決める。その心意気に、中国超級の未来を感じた。
 
宇都宮徹壱/うつのみや・てついち 1966年、東京都生まれ。97年より国内外で「文化としてのフットボール」をカメラで切り取る活動を展開中。近著に『フットボール百景』(東邦出版)。自称、マスコット評論家。公式ウェブマガジン『宇都宮徹壱ウェブマガジン』。http://www.targma.jp/tetsumaga/