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俳優の船越英一郎さんが所属する芸能事務所「ホリプロ」は7月下旬、船越さんの妻でタレントの松居一代さんに、船越さんの名誉を傷つけられたとして、業務妨害行為や名誉毀損行為の差し止めを求める仮処分を東京地裁に申し立てた。

松居さんは動画サイトやブログ上で、船越さんの「不倫疑惑」をくりかえし訴えていた。船越さんはすでに離婚調停を申し立てているが、ホリプロは松居さんの投稿を重くみたようだ。そもそも今回のような「仮処分」の申し立てはどんな意味があるのか。今後、仮処分が認められる可能性はあるのだろうか。伊藤諭弁護士に聞いた。

●早期に損害の拡大を止めなければならない場合の手段

「今回のような仮処分は『仮の地位を定める仮処分』といいます。

通常は、自分の権利が侵害されている場合、正式な裁判手続で、こうした書き込みや動画の削除、損害賠償を求めていくことになるのですが、判決が出るまでにどうしても相当時間がかかります。

その間、動画などがそのまま放置されたり、新たな動画がアップされる状態がつづくと、せっかく判決をもらっても名誉回復には手遅れであったり、損害が拡大してしまったりしてしまいます。

このように、権利の侵害があることを前提に、緊急に対応しないと損害が拡大してしまったり、後日の対応では回復できないような損害が発生してしまうような場合、原則として担保を立てることを条件に、『仮に』請求者側の言い分が認められたときと同様の状態にしてほしい、というのが『仮の地位を定める仮処分』です。

ただ、今回のように、書き込みや動画の削除を求めるような場合、投稿者の『表現の自由』の問題もありますので、通常、債務者(相手方)にも反論の機会を与え、双方の言い分を聞いてから裁判所が判断することになります」

●「仮処分の申立てが認められる可能性は十分にある」

「仮処分の申立ての長所は、もちろん、通常の裁判にくらべて早く一定の結論が出ることにありますが、実務上の大きなメリットとしては、そこで『最終的な』解決をすることが期待できることにあります。

正式な裁判ですと、まず裁判が始まるまで1か月強かかり、その後、およそ1か月ごとに期日を重ねて判決が出るまでに1年程度、長い場合は数年かかることもざらにあります。

一方で、仮処分の審理は、申立て後、数日からせいぜい数週間後に双方の当事者を呼び出します。期日を重ねる場合でも、事案によりますが、およそ2週間ごとに次の期日が入ります。

そうしたスピーディーな手続が期待できるうえ、『相手方が裁判所に来る』ことによって、裁判所を通じた最終的な話し合いをするチャンスが生まれるわけです。もともと『仮の』結論を求めていたものの、裁判所で和解が成立すれば、判決と同じ効力を持ちますので、『最終的な』解決になります。

仮に話し合いがまとまらなかったとしても、双方の主張がおよそわかるため、その後の正式な裁判においても審理がスムーズになることが期待できます。戦略的に利用すれば、非常に有用な手段です。

今回のケースについては、報道情報を前提にするしかありませんが、ホリプロ所属タレントである船越さんは芸能人ではあるものの、松居さんの動画はもっぱら船越さんのプライバシーにかかわることに終始しているため、公益目的といいがたく、こうした状態を放置しておくことはイメージを損ねる危険が極めて大きいといえます。

ホリプロに対する権利侵害があり、削除などを求める必要性も高いといえると思いますので、仮処分の申立てが認められる可能性は十分にあります」

(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
伊藤 諭(いとう・さとし)弁護士
1976年生。2002年、弁護士登録。神奈川県弁護士会所属(川崎支部)。中小企業に関する法律相談、交通事故、倒産事件、離婚・相続等の家事事件、高齢者の財産管理(成年後見など)、刑事事件などを手がける。趣味はマラソン。
事務所名:弁護士法人ASK 市役所通り法律事務所
事務所URL:http://www.s-dori-law.com/