今回のビジネス女子マナーは、PR会社勤務の田辺和佳子さん(仮名・27歳)からの相談です。

「この春に転職しました。社外の方とお会いして、打ち合わせが多い仕事です。最近は本当に暑くて、スーツやジャケットを着て歩くのが本当にキツイです。それでもジャケットを着ないと、ビジネスマナー違反になってしまいますか? なぜジャケットを着ないといけないのでしょうか?」

ビジネスファッションマナーの基本として、スーツやジャケット着用が「正しい」ことはもちろん知っています。その中で、臨機応変に対応したいところですが、その線引きが難しい、と思っている人も多いのではないでしょうか。さっそく鈴木真理子先生に聞いてみましょう。

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 ジャケットの着用は「相手への敬意」を表す

暑いときにジャケットを着たくない気持ち、わかります。

私もジャケット着用が基本の仕事をしていますが、その日に着ていく服に迷ってしまうときなどに、「ジャケットを着ないといけない理由って、なんだったかしら?」とふと思ってしまいます。

ジャケットは窮屈ですよね。ですから、こう暑いと着たくないなぁと思ってしまったり、相談者さんのように「なんでジャケットを着ないといけないのか」と考えてしまったりという気持ちもわかります。

ただ、あまりに軽装で出かけて、仕事相手に会ったとき、「ちゃんとしてくればよかった」と後悔したことも幾度もあります。仕事は第一印象が大切。身だしなみで手を抜くと損をすることもある、と心得てください。

スーツやジャケットには、正装感がありますね。着用することで、その場を「大切に思っていること」こと、「相手に敬意を払っていること」が伝わるアイテムです。

ひとつ、知人の話で、例を出しましょう。

彼女は、フリーランスの編集者。いつもはファッション雑誌から抜け出したような、自由な服装をしています。

そんな彼女が、数年前、フランス出張で、世界に名だたる老舗の文房具の工場の取材と、CEOのインタビューをすることになりました。その際に、アテンドを担当した日本支社のPRの方(仮にAさんとします)に、「どんな服装で行ったらよいでしょうか」と聞いたそうです。

彼女とAさんは、もともとの知り合い。だから、彼女が普段、どんな服装で仕事をしているか、当然知っています。フランスに行くことじたい、彼女にとっては初めて。気候などにも不案内です。また、弾丸出張ということもあり、できるだけムダのない準備をしたかったのだとか。

そのときのAさんのお返事が、「弊社の社長に敬意を持ってくださるなら、ぜひジャケットを1着ご用意ください」だったそう。

彼女はその言葉に「改めて、ジャケット1着がもたらす機能と着ることの意味を考えさせられた」と、しみじみ言っていました。

ビジネスシーンのファッションで大切なのは、「相手との調和」

お客様や目上の方がきちんとした格好をしているのに、こちらがカジュアル一辺倒では、調和しませんね。

知人の例でも、もし、たとえばCEOがTシャツに短パンというファッションが定番なのであれば、ガチガチのスーツも場違いでしょう。ですから、事前に情報収集をするというのは、とてもよいアイデアです。

とはいえ一般的なビジネスシーンの場合、スーツやジャケットを着用して「場違いだった」「気まずい思いをした」「相手に不快な思いをさせることになってしまった」ということは、まずありません。

日々のこと、として考えるのであれば、「相手への敬意の表明」として、ジャケットを着ることは最大のビジネスマナーといえるでしょう。

猛暑であっても、あなたにとって「大事なシーン」と考えられる場所に出向くときには、ジャケットは用意すべきです。

軽くて裏布のついていない、薄手のジャケットがおすすめです。手にもって出かけ、いざというときだけ羽織ればいいのです。
また、洗える素材のジャケットであれば、汗をかいても安心ですね。

内勤の日は、サマーニットのカーディガンなどを羽織りましょう。冷房対策にもなり、見た目も失礼にはあたりません。
ノースリーブの二の腕が露わになっていたり、肩のラインが出ていたりするのを目にすると、年配者はギョッとするものです。

「これを着ていることで、お会いする方に、服装でギョッとさせることがないか」で判断すれば、そのファッションが、ビジネスにふさわしい「きちんと感」があるかどうかがわかると思います。

「ジャケットを着ると、就活中の女子大生っぽくなってしまうから苦手」というアラサーOLも少なくない。



■賢人のまとめ
カジュアルすぎる服装で、いたたまれない気持ちになれば、仕事も進みません。大事なシーンで使える「夏ジャケット」を1着、常備しておきましょう。

■プロフィール

女子マナーの賢人 鈴木真理子

三井海上(現・三井住友海上)退職後、“伝える”“話す”“書く”能力を磨き、ビジネスコミュニケーションのインストラクターとして独立。セミナー、企業研修などで3万人以上に指導を行う。著書は『ズルいほど幸せな女になる40のワザ』(宝島社)のほか、近著『仕事のミスが激減する「手帳」「メモ」「ノート」術』(明日香出版社)、『絶対にミスをしない人の仕事のワザ』は7万部を超えるヒットとなる。 

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