『とうめいはーん!!!ふくをマネくぜ勇者たち』のファイナル公演

 佐賀県出身で、ユニークな視点で描く楽曲で聴き手を惹き込む、シンガーソングライターのカノエラナが今年2月に、2ndミニアルバム「カノエ上等。」を発売。それを引っ提げたリリースツアー『とうめいはーん!!!ふくをマネくぜ勇者たち』のファイナル公演が去る6月10日、東京・渋谷WWWXで開催された。木谷将夕(Ba)、芳賀義彦(Gt)、eji(Key)、片山タカズミ(Dr)4人のサポートメンバーを配するバンド編成で激しいロックを見せつける一方で、弾き語りでじっくりと聴かせる場面も。また、女性の胸部への悲喜交々を表した新曲「楽しいバストの数え歌」ではプロデュースを手掛けた日高央(THE STARBEMS)も登場。多彩な才能を十分に生かした独特の世界観でファンを魅了した。7月19日にミニアルバム「カノエ暴走。」もリリース。“上等”から“暴走”へ。勢い増す彼女の魅力が詰まったライブを以下にレポートする。

個性的な楽曲たちを自在に表現

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 紗幕越しにギターを抱えてすくっと立つカノエラナの姿。陽気なピアノで始まったのは「私立カノエ厨学校校歌」。校歌をモチーフにした曲でまずはほのぼのした空気にしてから、急転直下、自己紹介を含めた「カノエラナです。」では重低音を轟かせる。彼女の出身地である佐賀弁がバリバリ入ったロックチューンで、初っ端なからフロアは大盛り上がり。続く「マネキネコ」は、オーディエンスの手の動きがマネキネコに似ているというところから名付けたというナンバー。ユニークな視点で描かれた同曲は、他のライブでもこれを想い出してしまいそうなインパクトがあった。

 「マネキネコ」同様、カノエの楽曲は非常に個性的かつキャッチーな作品が多く、1回聴いたら忘れられない。また、歌の主人公が情けなかったり、ドジだったり、人間くさくて、聴いているうちに愛おしくなるのも特徴だ。とくに後輩に偉そうにしているイケてない兄ちゃんに対して歌う「おーい兄ちゃん」は、虚勢を張る男の滑稽さに、カノエが威勢のいいボーカルで活を入れていてオーディエンスの心をスカッとさせる。一方、好きな人の部屋に住み着いた女子の幽霊の気持ちを綴った「恋する地縛霊」では、ジャズ調に合わせてキュートに歌い上げ、女子の切ない恋心に溶け込む。それぞれまったく異なるキャラクターを自在に表現するところは彼女の魅力の一つだ。

 冒頭アカペラで凛とした歌声を披露した「星と太陽」では、まず曲を披露する前に「次の曲は、私が4年前に上京したときに書いた曲なんですけれど、もともとこのセットリストには入っていなかったんです。すごい大事にしている曲で、この曲をバンドでやると、なんか原点に返ったなって言う気持ちがする曲をやりたいと思います」との思いを語った。独特の世界観を示したかと思えば、こうした正統派で壮大な楽曲でもしっかりと聴かせる姿に、オーディエンスは底知れぬ彼女の奥深い実力をみたようだった。

弾き語りライブは武者修行だった

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 圧巻だったのは、ライブ中盤から後半にかけての弾き語りセクション。まずピアニカの音が懐かしさを増幅する「大事にしてもらえよ」は、彼氏ができた友人に対する思いを語った曲だ。少しぶっきらぼうを装いつつも友だちの幸せを心から願う歌から、女性同士のリアルな友情を感じ取れる。

 そうしたなか、カノエは、3月から5月にかけて17本実施した弾き語りライブ『カノエラナ ご挨拶ワンマンツアー2017「勇者を探して三千里〜ぼっちで広げる旅の地図〜」【弾き語り編】』について振り返る。

 「いろいろあったんですけれど、やっぱり途中で死ぬなこれ、って思ったんですよ。心折れそうになったんですけれど、でもこれからバンドにもつながるし、ちょっと自分、耐えなきゃ今、と思って」と語る。ひとりぼっちで苦しかったが、武者修行ととらえて乗り越えたという。「今ほっとしているんですけれど、強くなれましたかね? カノエは」と問いかける彼女に、会場から温かな拍手が送られた。

 そしてギターの芳賀義彦と「恋とか愛とかそーいうの」を披露。男性目線で書かれた曲は、主人公と彼女のやりとりが、実に微笑ましく幸せ様子が溢れていた。その分、やり場のない思いのまま静かに終わるラストが切なさを助長させていた。

 さらにタイトルから一見想像できない、失恋に沈む切ない曲「ピザまん」をしっとり歌う。カノエは「『大事にしてもらえよ』でいい感じになって両想いになりました。そして『恋とか愛とかそーいうの』でいい感じだったのにも関わらず、ちょっと最後は別れてしまって、やけ食いで『ピザまん』を食べるというストーリーになっておりました」と3曲の流れを説明。

 すっかり曲の世界に惹き込まれたなかで、カノエの解説で思わず現実に戻されて、オーディエンスは爆笑。歌っているときのカリスマ性と、素に戻ったときに見せる天然キャラとのギャップも、彼女が持っている魅力の一つと言える。

新曲披露にフロアは一体化

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 アーティストのユニークさは、当然オーディエンスにも影響を及ぼす。カノエラナのアンコールを求めるかけ声は、男性ファンが「カノエ!」と叫ぶと「ラーナ!」と女性ファンが続けるというスタイルだった。

 そして、アンコール1曲目は、新曲「たのしいバストの数え歌」。曲に入る前にカノエは「ちょっとマイクの立ち位置がおかしくないですか?」と投げかけると、オーディエンスがどよめく。この曲をプロデュースした日高央がステージに登場した。

 おっぱいをテーマにしている、かなり強烈なインパクトを残すこのナンバーについて日高は「巨乳賛美じゃないんですよ。むしろ逆ですよね」と女子の悲喜交々を曲に込めたと解説した。そして日高も加わり新曲をプレイ。ラストはこれから迎える季節を楽しみにさせる「真夏に片想い?」で締めくくった。

 恒例の記念撮影を終わらせて、どうしよう? という顔を見せるカノエに「ライブ終わらせる、いいやり方教えてあげる。カーテンコールすれば絶対終わるから」とアドバイスを送る日高。「やりたい、やりたい!」と盛り上がり、会場も巻き込んでみんなで手をつなぐ。その様子を見て「すごーい! ライブっぽーい!」と無邪気に感動しながら「ツアーファイナルありがとうございました!」とマイクを通さずに生声で感謝の気持ちを伝える。“上等”から“暴走”へ。彼女の勢いは止まらない。

(取材=桂泉晴名)

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セットリスト

OP.私立カノエ厨学校校歌
1.カノエラナです。
2.マネキネコ
3.トーキョー
4.おーい兄ちゃん
5.恋する地縛霊
6.My World
7.星と太陽
8.I
9.ひとりかく恋慕
10.こまか
11.大事にしてもらえよ
12.恋とか愛とかそーいうの
13.ピザまん
14.シャトルラン
15.ヒトミシリ
16.モットアタシヲ
17.夏の祭りのわっしょい歌

ENCORE

EN1.たのしいバストの数え歌
EN2.真夏に片想い?