25歳の新進気鋭女優、マデリーン・ブルーワー。数年前に人気ドラマ『オレンジ・イズ・ニュー・ブラック』のトリシア役でデビューを果たした女優、と聞けば、ピンとくる人も多いはず。

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今回コスモポリタン アメリカ版が、マデリーンの自宅で彼女を取材。その後の紆余曲折のキャリアについて話を聞きました。

マデリーンが今大事にしているのは「Zen(禅)」の心。現在、ルームメイトでボーイフレンドのスペンサー・ネヴィル(俳優)と暮らすロサンゼルスのアパートにも、Zenのコンセプトを取り入れ、素朴で気持ちを落ち着かせるような内装や家具にこだわっているそう。今は心も穏やかで恋愛も女優業も順調そうな彼女。だけど、いつもそうだったわけではないようで…。

女優デビュー

アメリカのニュージャージー州で生まれ育ったマデリーン。「演技を好きになったのは父の影響」で、地元のミュージカルにも出演し、将来の夢は『ウィキッド』の主役グリンダを演じることだったのだとか。

そんなマデリーンのデビューは2013年。ニューヨークの演劇学校を卒業して4カ月で<Netflix>のドラマ『オレンジ・イズ・ニュー・ブラック』のオーディションに合格し、女性刑務所の赤裸々な実態を描くこの作品で、ヤク中で薄幸の非行少女トリシア・ミラーを見事に演じた彼女。ただ、当時<Neflix>は今ほど普及していなかったし、マデリーンはそもそもテレビ女優を志望していなかったのだそう。

「『オレンジ・イズ・ニュー・ブラック』のオーディションを受けたのは、事務所に言われたから。実を言うと、準備していかなかったし、そもそもどうやって準備をすればいいのかさえ分からなかった。台詞も覚えられなくて、パニクっちゃった」

にもかかわらず、その後7エピソードに出演。人生初のプロ女優としての経験は彼女にとって貴重で、腕にトリシアの頭文字「T」のタトゥーを入れたほど。

キャリアの低迷

しかし、『オレンジ・イズ・ニュー・ブラック』の撮影が終了してからは、再びニューヨークでウェイトレスのバイト生活に戻ることに。ノンストップでオーディションに挑戦するも不合格の日々。「身も心も擦り切れたわ」と、当時を振り返るマデリーン。

テレビでライブ放送される『サウンド・オブ・ミュージック・ライブ!』では長女のリーズル・フォン・トラップ役に、という話が出たものの、1カ月半も待たせられた挙句、結局別の若手女優に役を取られてしまったそう。「本当にあと一歩のところだったから、心底落ち込んだわ」。

そうしてようやく<Netflix>配信のホラードラマ『ヘムロック・グローヴ』の脇役に抜擢され、10エピソードに出演。でも、その後の仕事はテレビドラマ『STALKER : ストーカー犯罪特捜班』での1エピソードだけの出演や、単発のCMにとどまり、それ以降、宙ぶらりん状態で職もなく、道を見失い始めたのだとか。

女優を断念

問題の一因は当時所属していた事務所の方針で、彼らがもってくるオーディションの方向性がずれていたこと。一方で、彼女個人の問題も。当時の恋人との不健康な関係や、すさんだ生活によって、不安や鬱の症状に苛まれていたのだそう。マデリーンいわく、「不安でしかたがなかったし、怖かった。自分の人生や仕事より、彼氏との関係のほうが気になって、不安を打ち消すようにパーティとアルコールに溺れていたの」。

そしてある時、マデリーンの中で糸がプツンと切れる瞬間が。「もうやめないと。これ以上は無理」。彼女はオーディションを受けるのをやめ、ヨガのインストラクターになるためにクラスに通い始めることを決意。それでも当時は「果てしない闇だった」と語る彼女。

一念発起

ヨガの瞑想を通じて自分を振り返るきっかけができたからか、インストラクター認定トレーニングを半ばで切り上げたマデリーンは、その後オーディションを再開することに。「気合いを入れなきゃ、と思ったの。低迷した状況からなかなか抜け出せなくて、自分自身に対して申し訳ない気持ちになったのよ」。

当時のボーイフレンドとも別れ、思い切ってロサンゼルスに引っ越すと、3週間も経たないうちに、いくつかの役が舞い込んだそう。こうしてインディーズ映画『Hedgehog(原題)』と、ダークサスペンス刑事ドラマ『GRIMM/グリム』に出演するチャンスを獲得。

さらに2016年には、アメリカ人作家ブレット・イーストン・エリスのスリラー小説を原作とするドラマ『The Deleted(原題)』に出演。そこで共演をしたのが、今のボーイフレンドのネヴィルだったのだとか。「それまでは、スケボーをころがしているような"男の子"とばかり付き合ってたの。私を尊重してくれず、自分に対する自信を失わせるような相手とばかりね」。でもネヴィルは過去の男性たちと違っただけでなく、彼女に幸運をもたらしてくれる存在に。というのも、ネヴィルとの最初のデートの日に、マデリーンの『侍女の物語』の合格が決まったから!

『侍女の物語』は、カナダ人作家マーガレット・アットウッドの人気小説を<Hulu>がドラマ化したもの。近未来の国家で、子どもを産める女性が「侍女」として奴隷のような生活を強いられる話なのだそう。インタビューの時点で、『侍女の物語』の第2シーズンの放送が決定しており、マデリーンはまた出演したいと願っているものの、先のことは分からないとのこと。

ただ、出演の可否はどうであれ、マデリーンは今自分の将来を信じているそう。

「今となっては、過去の自分を振り返ると『可哀そうに…』って感じるだけ。今の私の中には、もうあの頃の自分の面影はないわ」

もちろんこれからすべてが順調にいくとは限らないけれど、たとえオーディションに落ち続けても、今の彼女には自分という"最強の味方"が。

「もう男に『愛してるよ』って言われなくても、映画界が『愛してるよ』て言ってくれなくても大丈夫。私が、自分自身を愛しているから」

※この翻訳は、抄訳です。

Translation: Takako Fukasawa(Office Miyazaki Inc.)

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