さあ、夏山シーズンの到来です。北海道の大雪山系の登山を楽しみにしている方も多いのでは。ところが最近、大雪山の登山道が荒れていると伝えられています。原因は、北海道らしからぬ激しい雨の降り方。さらに去年、北海道の農業、漁業、道路や鉄道に大きな被害をもたらした台風が追い討ちをかけ、登山道の荒廃がますます進みました。広大な大雪山系。どのように補修したら効率的なのか、山岳関係者たちの間で模索が続いています。

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チングルマ咲く旭岳


登山初心者から上級者まで。北海道の大自然を体験できる大雪山系。

大雪山系は北海道の中央部に位置する火山群。北海道最高峰の旭岳をはじめ、黒岳、緑岳、赤岳など、2000m級の山々が連なります。一帯は国立公園に指定され、山系の面積は広大で、神奈川県とほぼ同じ。初級者から上級者まで登山を楽しむことができるので、毎年多くの登山者が訪れています。また、北海道の大自然を満喫できるほか、チングルマやエゾノツガザクラなど、愛らしい高山植物が迎えてくれるとあって、植物愛好家にも人気です。

トムラウシ山を登る


一晩で地形を変えてしまうほどの、一極集中の豪雨。

ところが、ここ数年、大雪山系の登山道が急速に荒れています。登山道に水がたまったり、脇の土砂が崩れたりなどの被害が目立っています。これらは、ここ数年の激しい雨の降り方が原因のひとつだといわれています。
ゲリラ豪雨という言葉が誕生したように、最近は尋常でない量の雨が、ひとつの地域に一気に降ることがあります。それは、雨が少ない北海道にも当てはまります。あるベテラン山岳ガイドは、「一晩で地形を変えてしまうほどの、ものすごい降り方をする」と話しています。
たとえば、登山道に常に雨水がたまっているため、登山者が道を通れず、やむなく、高山植物が生えている部分を歩いてしまうので、植物が踏まれて荒らされています。また、黒岳近くの登山道では雨水が流れ込み土砂が流出していたため、おととし、木の板を設置して土砂をせき止めようとしました。ところが、大量の雨が降ったため板の両側から泥水があふれ、登山道の脇の斜面が大きく削られてしまいました。登山道そのものがが大きくえぐられているところも多数あります。このような被害が広大な大雪山系のあちこちで起こっており、補修のための予算も人手もまったく追いついていません。

黒岳の登山道


登山道を守るために、登山ガイドたちが立ち上がった!!

大雪山系の登山道はもろい土砂で覆われているため、もともと侵食が問題視されていました。雨で傷む登山道をどうするか。国や自治体、山岳関係者が懸念していたところに、去年の台風10号が追い討ちをかけました。この台風は北海道に甚大な被害をもたらしましたが、大雪山系も大打撃を受けました。今後、このようなクラスの台風が再来すると、さらに荒廃が拡大すると思われます。
そこで、危機感を持った登山ガイドたちが集まってNPO法人を立ち上げ、ボランティアを募って、環境省などが行う補修工事に協力しようとしています。また、実際にどのように補修工事を行うかを学ぶ講習会を開くなど、この夏から、山と登山道を守るための活動が本格的に始まりました。
〈参考文献:小林ほか, 「大雪山北海平における登山道侵食の変化と将来予測」, 日本地理学会春季学術大会, 2017〉
〈参考サイト:NHK NEWS WEB, 2017.07.27, 「大雪山系登山道の荒廃 対策は」〉
〈参考サイト:大雪山国定公園〉
ここ最近の気温の上昇などで、北海道の自然にも影響が出ているようです。北海道に大きな台風が上陸したり、気温が30℃を超える日が増えたりなど、昭和のころにはあまりなかったことが続いています。雨の量が多くなると、さまざまなところに影響をもたらしますが、まさか大雪山のような高い山々にも影響が出ているとは…。これから紅葉などでますます登山者が増える大雪山系。手つかずの自然の姿を守りつつ、登山者が楽しめるよう、登山道の補修が急がれています。

旭岳の姿見の池