冷やかけ、というメニューが立ち食いそば屋を中心に夏の風物詩になっている。

「冷やかけそば」は「冷やしぶっかけそば」ともいわれる。かけそばの冷たいバージョン(冷たい麺に冷たいつゆ)である。

「冷やかけそば」がいつ誕生したかについては、諸説ある。秋田が発祥だという説。「冷やし中華」が人気になって、その概念(冷たい麺に冷たいつゆ)をそばでやったらどうだろうと試みたとする説。うどんの冷え冷えぶっかけがルーツとする説などである。

 ともあれ、せっかちな江戸っ子に「冷やかけそば」はうってつけ。

 最近では激しくうまい「冷やかけそば」を提供する店が増えている。というわけで、今回はこの夏行きたい9店を一挙に紹介したい。

夏が来たら思い出す「だし家」旗の台の「冷やししょうが天そば」


 

 東急大井町線の旗の台駅東口すぐにある「だし家」の「冷ししょうが天そば」350円は夏になると必ず食べることにしている。女将さんが作る自家製のしょうが天に、薄口醤油を使った出汁が利いた冷たいつゆがたまらない。麺はあの小野製麺の茹で麺だが、つゆによくマッチしている。

 荻窪で「一富士」を経営していた大将の「早くて安くてうまいそば」の精神がここでも発揮されている。

 注:その後、「だし家」は7月31日をもって閉店との報せが入った。

シコシコ麺好きなら「ひさご」浅草橋の「冷し天ぷらそば」


 

 マシンガントークの八ちゃんが奥さんと経営する「ひさご」の「冷やし天ぷらそば」350円は、毎日食べたくなる傑作だ。狭い店内で自家製麺したそばを使い、じっくりと揚げた天ぷらに十分すぎるくらい出汁のかおる返しの利いた冷たいつゆがたっぷりと注がれる。昭和39年の東京オリンピックのころから開業しているという店は、小さい間口の店だが存在感は高い。そばだけでなく、うどんも自家製で、茹であげの時に遭遇すればシコシコの麺に出会うことができる。常連客とのやりとりを聞きながら食べるのもオツである。

ライス追加で「お茶漬け」もよし「そばよし」京橋の「冷やし天ぷらそば」


粉かつおに注目

 冷やしのつゆは上品な出汁だと一層深みが出てうまくなる。

 その点、京橋や三越前にある「そばよし」の「冷やし天ぷらそば」420円は、その醍醐味を十分堪能することができる一品といえる。

 十分すぎるかつお節を使って出汁をとったつゆに、自家製の細いそばをしっかり水切りしてあわせ、カラッと揚がったかき揚げがのって登場する。

 お決まりのライスを頼むと、かつお節粉が付いてくるので、それをライスにたっぷりと振りかけて、おかかごはんを作ってそばと交互に食べて行くと、かつお出汁の旨みに包まれる。

 冷やかけのつゆを入れて茶漬け風に食べるのもよい。


これにつゆをかけたら、お茶漬け風

新橋「三松」名物しいたけそばには「冷や」がある

 他に旨い「冷やかけそば」としては、「彩彩」大井町の「冷やしたぬき味付玉子」600円。


「彩彩」大井町の「冷やしたぬき味付玉子」600円

「山田屋」千束の冷やしゲソ天そば410円。


「山田屋」千束の冷やしゲソ天そば410円

「なかむら」稲城長沼駅の「冷やし天ぷらそば」380円。


「なかむら」稲城長沼駅の「冷やし天ぷらそば」380円

「うさぎや」新橋の「冷やし春菊天そば」430円。


「うさぎや」新橋の「冷やし春菊天そば」430円

「かめや」新宿・神田などの「冷やし天玉そば」420円。


「かめや」新宿・神田などの「冷やし天玉そば」420円

「三松」新橋の「冷やかけしいたけそば」470円をあげておきたい。


「三松」新橋の「冷やかけしいたけそば」470円

日本の夏、冷やかけそばの夏

 ちなみに老舗系やのれん会系のそば屋などでは、今でもお品書きに「冷やかけそば」がないところが多い。ようやく、「冷やしたぬきそば」あたりが登場しているくらいだ。

 また、お店によって冷やかけそばの提供の仕方は微妙に違う。

 もりのつゆを「冷やかけそば」に使うところもある。これだと少ししょっぱい。「冷やし中華」みたいな平皿の盛り付けのところもある。

 個人的にはやや薄めのつゆをたっぷりかけてくれて、「かけそば」と同じどんぶりで提供してくれるタイプがうまいと思う。

 2017年の夏もお手軽で安くてうまい魅惑の「冷やかけそば」を堪能したい。日本の夏は「冷やかけそばの夏」でもある。

写真=坂崎仁紀

INFORMATION

ひさご
東京都台東区浅草橋1-17-2

営業時間
月〜金 6:45〜18:30
定休日 土・日・祝

INFORMATION

そばよし京橋店
東京都中央区京橋2-8-11

営業時間
月〜金 7:30〜15:00
定休日 土・日・祝


©iStock.com

(坂崎 仁紀)